新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅が増え、高くなりがちな電気代。5月分からはさらに値上がりする。2016年4月の電力自由化から5年、いまや電気は地域を問わずに選べる時代だ。新年度を迎え、お得なサービスを探してみよう。



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 かつては住む地域ごとに大手電力会社がサービスを担っていたが、自由化後は新電力会社が次々と参入。ガス会社や石油元売り会社から、通信や鉄道などを手がける会社まで計700社超の事業者が電気を販売し、“サービス合戦”の様相を呈している。

 最近は、ユニークなプランも目立つ。太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を使えるものや、電力需給が逼迫(ひっぱく)する時期に節電に協力したり、電気自動車(EV)を持っていたりするとお得になるサービスもある。プロ野球チームを応援できるものまで出ている。

 選択肢が広がったことで、契約を見直す人も増えた。経済産業省によると、自由化後に新電力に契約を切り替えた家庭の割合は、20年12月時点で17.6%に上る(契約件数ベース)。とくに新型コロナの影響で収入が減って家計の負担が重くなるなか、切り詰める余地は大きそうだ。

 そんな暮らしに“追い打ち”をかけるように、電気代は5月分から値上がりする。再生可能エネルギーの普及を目的に、利用者が負担する費用が増えるからだ。電気使用量が月260キロワット時のモデル世帯で年1万476円となり、初めて1万円を突破する。何もしなくても、負担がいままでより年1200円近くアップしてしまうのだ。

 とはいえ、これだけ事業者やサービスが多いと迷う。

 電気とガス代の見直しの専用サイトを運営するエネチェンジ(東京都千代田区)の中田都季子さんは「一度試してみるのも一つの手」だと言う。

「切り替えの手続きは実は簡単で、電線や設備の工事も不要。契約先が万が一、倒産や事業撤退しても、電気がすぐに止まるようなこともありません。新電力は基本的に大手よりも安い料金プランを設定しており、切り替えるだけで節約できます」

 同社のサイトでは、切り替えた場合の料金を試算できる。住む地域の郵便番号や家族の人数、電気やガスの使い方、直近の電気代などを入力すると、利用できるサービスが「電気代の安い順」「節約額の大きい順」といったランキングで示されるのだ。

 例えば、世帯人数「3人」、「都市ガス」を利用、「日中に家族の半分以下が家にいる」、3月分の電気代「9400円」といった条件で調べてみたところ、45件のサービスが表示された。

 電気代の安い順でトップだったのは「シン・エナジー」の「【昼】生活フィットプラン」。契約初年度は、いまよりも1万77円の節約につながる(エネチェンジのサイトを通じて申し込んだ場合の特典を含む。以下同じ)という。

 次いで「アストでんき」の「続けてお得プラン」が8519円、「HTBエナジー」の「東京大江戸プラン 従量電灯B ママトクコース」で同6625円、それぞれいまよりも安くなる結果だった。

 あくまで入力時の条件に基づくもので、実際の料金は天候や電力会社のキャンペーンの実施状況などによって異なるものの、一つの目安になる。新電力の公式サイトやほかの比較サイトでも調べられるので、複数で比べてみるのもいいだろう。

 それでも、新電力を選ぶのにちゅうちょする人もいるかもしれない。昨年末から年始にかけての電力市場の取引価格の急騰後は、まさに発電設備を持たない一部の新電力の経営が傾くなど不安感はぬぐえない。

「市場からの仕入れ値が販売価格を上回る“逆ザヤ”の状況になり、販売や契約の休止を余儀なくされたところもあった」(エネルギー業界関係者)。3月には新電力大手エフパワー(東京都港区)が東京地裁に会社更生法の適用を申請したのも、記憶に新しい。

 事業者の経営が揺らげば、利用者も影響を受けかねない。前出の中田さんは「料金体系をよくチェックしておく必要がある」と改めて強調する。

「市場価格が電気代に反映される『市場連動型』か、『固定型』か。同じ市場連動型でも、反映の仕方は各社で異なります。なじみのある会社がよければ、ガスや携帯電話、インターネットなどよく使う身近なサービスとのセットでの契約もおすすめです。セットで契約すると安くなります」

 例えば、東京ガスの公式サイトで、先ほどと同じ条件で電気とガスのセット契約の費用を試算すると、年約1万円安くなるプランを勧められた。電気とガスのセットだと電気代の基本料金が割引となる。携帯やネットサービスなどとのセットでは、使った電気に応じて、提携するサービスで利用できるポイントがもらえるプランも多い。

 もちろん、大手電力会社も負けてはいない。

 関西電力は3月1日から、電気やガスの契約者向けに電子商取引(EC)サービス「かんでん暮らしモール」を始めた。住宅のリフォームや保険、家事の支援といった35項目のサービスを提供。営業本部リビング営業部長の丸山直子さんは次のように説明する。

「暮らしに役立つサービスをそろえました。困りごとがあったときにサービス会社を探す手間も省けますし、利用すると電気料金の支払いなどに充てられるポイントがたまる特典もあります。サービスはこれからも順次、拡充していく予定です」

 東京電力も力を入れている。自由化後の電力やガスの新プラン契約者向けに、電気設備をはじめ、水まわりやカギなどのトラブルに24時間態勢で駆けつけ、ほぼ無料で対応する。4月1日からは一部サービスの対象エリアを関西にも広げた。

 販売会社である東京電力エナジーパートナー販売本部お客さま営業部の木村千秋マネジャーは「自由化直後の値下げ競争もほぼ一巡し、価格よりも、どんな付加価値をつけられるかが問われています。サービスを通じて、何かあった時に頼ってもらえる会社になりたい」とし、消費者に寄り添うサービスを強化していく構えだ。

 中部電力は4月、三菱商事と共同で高齢者の見守りや金融商品の提案など生活関連サービスを担う新会社を設立した。

 こうしたサービス合戦の背景には、「大手電力会社はもともと、ライバルのガス会社に比べ一般家庭との接点が少なかった」(前出のエネルギー業界関係者)ことがある。業種やエリアを越えて利用者を獲得しないと、大手といえども生き残れない時代に入った。

 電力やガスの契約をめぐっては、トラブルも少なくない。国民生活センターに寄せられる相談は増加傾向にある。

 前出の中田さんは、契約切り替えを求める聞き慣れない会社からの勧誘電話や訪問営業に注意が必要だと呼びかける。

「いきなり『検針票を見せてください』と言われたら警戒しましょう。契約者の名前や住所のほか、『供給地点特定番号』が記載されています。番号が漏れると、契約を勝手に切り替えられてしまう恐れもある。重要な個人情報ですので安易に教えてはいけません」

 しっかりと見極めて自分に合ったサービスを選びたい。(本誌・池田正史)

※週刊朝日  2021年4月23日号