20、30代の若い世代から罹患のリスクがある子宮頸がん。性行為によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となる。がんの初期には自覚症状が表れない。そのため、早期発見には検診が重要になる。



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 子宮頸がんは、女性特有の臓器である子宮の頸部(入り口の部分)にできるがんだ。子宮には、子宮体部に発生する子宮体がんもあるが、がんの種類も発生原因もちがう。この二つに関連性はなく、まったく別の病気と考えていいだろう。

 子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで起こる。HPVは、100種類以上が確認されており、いぼや性器にできる尖圭コンジローマなどの原因にもなる「ローリスクタイプ」がある一方、子宮頸がんを引き起こす16型、18型などは「ハイリスクタイプ」と呼ばれる。

 基本的に、性行為に関連してHPVに感染する。そのため、子宮頸部だけでなく、咽頭・喉頭、肛門にもがんが発生することがある。男性の場合も、陰茎がんをはじめ、咽頭・喉頭、肛門にリスクがある。コンドームの使用である程度防げるが、完全ではない。

 また、子宮頸がんの原因となるHPVは、ワクチンの接種で感染を防ぐことができるのも特徴だ。セクシャルデビュー前の接種が最も効果的だが、デビュー後でも一定の予防効果は期待できる。

 慶応義塾大学病院婦人科診療科部長の青木大輔医師はこう話す。

「2020年には九つのタイプのHPVを対象にした9価ワクチンが承認され、約90%の予防効果が見込めるといわれています。さらに4価ワクチンが男性にも承認されました。接種を考えてみたいという人は、婦人科で相談してください」

 年間の患者数は約1万1千人で、20〜30代の若い世代から罹患リスクがある。最も患者数が多いのが、30〜40代。子育てや仕事に忙しく、また妊娠・出産を考える世代でもあり、発症は深刻だ。

 子宮頸がんは大きく扁平上皮がんと腺がんに分けられる。扁平上皮がんが約7割、腺がんは2割程度ではないかと考えられている。がん細胞の性質は異なるが、どちらも同じ治療をおこなう。ここでは患者数の多い扁平上皮がんを中心に述べる。

 健康な女性でも検査をすると、10%前後にハイリスクタイプのHPVが見つかることがあるという報告があるくらい、HPVは身近なウイルスといえる。たとえHPVが存在していても、ほとんどの場合、免疫の働きで排除することができる。しかしなんらかの原因で排除が十分におこなわれず、HPV感染が継続的になると、子宮頸がんになる前段階の状態(前がん病変)とされる「子宮頸部上皮内腫瘍」(CIN。異形成と呼ばれることも)を起こすリスクが高くなる。

 CINは進行度によってCIN1(軽度)〜3(高度)に分けられる。CIN1、2では積極的な治療をおこなわず、3〜6カ月ごとの経過観察となる。免疫が働いて自然に治癒したり、進行せずにすむ場合も多いからだ。杏林大学病院産科婦人科診療科長の小林陽一医師は次のように話す。

「ハイリスクタイプのHPVに感染後、約10%は継続的に感染し、CINに進むと考えられています。CIN3を経て子宮頸がんになるケースは、さらにそこから数%程度でしょう」

 子宮頸がんの進行度によるステージは、大きくI〜IV期に分類される。▼I期=がんが子宮内にとどまっている▼II期=がんが腟や子宮頸部の周辺組織に広がっているが、それほど広範囲でない▼III期=がんが子宮頸部の周辺組織に、II期よりも広範囲に広がっている▼IV期=膀胱や直腸、肺などに転移がある。

 さらにI期のなかでもIA期(肉眼では病変が確認できない)、IB期(肉眼で確認できる)などに、細かく分けられる。

 子宮頸がんは、CINの段階やIA期では自覚症状がない。IB期になっても症状がないこともある。そのため、多くは婦人科検診や、妊娠の検査で受診して見つかるケースもあるという。IB期で腫瘍が大きい場合やII期以上になると、不正出血や性交時の出血、おりものが増えるなどの症状が表れてくる。

 検診などでは子宮頸部をこすって細胞を採取し、細胞診をおこなう。そこでCINが疑われたら、コルポスコープ(腟拡大鏡)という特殊な拡大鏡を用いて細部を調べる。また、疑われる部位の組織を切り取って組織診で調べる。

 これらの検査でCIN3やIA1期(がんが子宮頸部に限られ、深さ=浸潤が3ミリ以内)と診断されたら、「子宮頸部円錐切除術(以下、円錐切除術)」という方法で病変部分を切除し、病理組織診断を実施する。円錐切除術はCIN3やIA1期の手術法の一つなのだが、病変を精査する検査としての意義ももつ。円錐切除術でIA1期よりも進行していたら、さらに進んだ治療を考慮することになる。

 子宮頸がんはIA1期までに治療すれば、約9割は根治が可能とされる。5年生存率はI期では90%以上、II期では約75%だが、進行したIII期で約50%、IV期になると約25%ときわめて低くなる。

 ワクチン接種以外に効果的な予防法はないが、子宮頸がん検診で早期発見・早期治療を図ることはできる。厚生労働省の指針では20歳以上の女性に2年に1度の子宮がん検診を推奨しており、多くの自治体では補助金を出している。おっくうがらずに検診を受けたい。(ライター・別所文)

※週刊朝日  2021年4月30日号