数年前から大流行している糖質制限ダイエット。チャレンジした経験があるという人も多いのでは。しかし早稲田大学大学院で運動生理学を学び、「ダイエットコーチ計太」としてYouTubeでも活躍するパーソナルトレーナー・計太さんがすすめるのは、「糖質制限」ではなく「糖制限」ダイエットです。その内容や理由とは?



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 糖質制限ダイエットの特徴は、体重がすぐに落ちるということでしょう。なぜ糖質制限で体重が落ちやすいかというと、糖の摂取を減らすことで、体から水分が抜けるからです。糖は体内に貯蔵される際、水分と一緒に蓄えられます。そのときの糖と水分の比率はおよそ1:3と言われているので、糖が体から減ればその3倍ほどの水分が体から抜けるということになります。つまり、糖質制限を始めてすぐに減った体重というのは、ほぼ水分が抜けたことによるもので、脂肪はほとんど減っていないということです(ちなみに、脂肪を1キロ減らすには、カロリー収支で約7200キロカロリーのマイナスが必要になると言われています)。

 その一方でリバウンドしやすい、継続できない人が多いというデメリットもあります。例えば、今までお米をしっかり1日3杯食べていたとして、その量を半分にしたり、極端なケースではまったく食べなかったりという生活になるわけですが、その生活をずっと継続できるでしょうか? 多くの人はどこかでその制限がストレスになり、食欲が爆発します。また、糖質制限を長期的に実践していると、糖の代謝機能、つまり糖を処理する能力が低下してしまいます。糖を処理する能力が低下した状態で、仮に食欲が乱れて糖を必要以上に摂取してしまうと、もちろん体重がリバウンドするだけではなく、別の健康被害にもつながるでしょう。

 これらの理由から、基本的に僕は糖質制限ダイエットの長期実践はおすすめしておりません。そして、最近では多くのダイエット指導者が糖質は適度な量を摂取すべきと発信しているように思います。これは僕の推測ですが、少し前から糖質制限ダイエットが流行して多くの人が実践し、失敗した人も多く出てきたことで、否定派の指導者が目立ってきたのかもしれません。

 ですが、糖の過剰摂取はメタボリックシンドロームにつながります。糖質制限ダイエットは推奨しない僕ですが、全ダイエッターに推奨している“糖制限ダイエット”があります。今回はその具体的な意図について解説します。

(1)糖の過剰摂取で起こる身体の変化

 脂質の摂取量が多いことが原因で発症すると考えられてきた脂肪肝や脂質異常症が、近年では糖の過剰摂取が主たる原因になっているという見方があります(もちろん、脂質の摂取量が関係ないわけではありません。特に飽和脂肪酸の摂取過多は脂肪肝や脂質異常症につながると言われています)。

 体内で吸収された糖は肝臓に運ばれて処理されます。肝臓の糖の貯蔵可能量を超えると、糖は脂肪に変換されて肝臓に蓄積され、ひいては脂肪肝や脂質異常症につながるようです。ただ最近は、直接糖が脂肪肝を招くというより、その前段階で腸内環境の悪化が起こり、それが脂肪肝につながっていると考えられています。いずれにしても、糖の取りすぎは脂肪肝や脂質異常、メタボリックシンドロームにつながるため、健康のためにはやはり、糖の取りすぎには注意すべきということです。

(2)「糖」と「糖質」は何が違うのか?

 さて、ここで言う「糖」が何を指すのかについて説明したいと思います。「糖質制限」というと、まずはお米などを控えようと思う人が多いのではないでしょうか。お米は糖質でもあり、炭水化物とも呼ばれますよね。混同されがちな糖質と炭水化物ですが、「炭水化物」という大きなグループの中に「糖質」が含まれていると理解してください。ちなみに炭水化物には糖質のほかに食物繊維が含まれます。そして、糖質はさらに、多糖類や二糖類、単糖類などに分かれます。この中で、二糖類と単糖類は「糖類」と呼ばれます。炭水化物→糖質→糖類と進むほど構造がシンプルで、体内での吸収スピードが速いです。少しややこしいですが、お米は炭水化物、砂糖は糖類とだけ覚えておいてください。

 こんなマウスの実験があります。マウスを二つのグループに分け、一つのグループでは炭水化物の摂取量を増やし、もう一つのグループでは糖類の摂取量を増やしました。実験の結果、糖類を多量摂取したグループのマウスにだけ脂肪肝が確認されました。そしてこのグループでは、腸内環境の悪化が見られたそうです。

炭水化物には食物繊維も多く含まれており、腸内細菌のエサになります。腸内細菌は短鎖脂肪酸など体内に有用な物質を生成してくれます。腸内細菌にしっかり働いてもらうためにも、炭水化物は摂取しておくことをおすすめします。つまり、皆さんが注意すべき糖は、炭水化物ではなく、糖類だと考えられます。

(3)やるべき本当の糖制限

 ここまででお分かりかもしれませんが、皆さんがやるべき糖制限は、「糖質制限」ではなく、「糖類制限」です。お米やサツマイモ、人参などを過度に避ける必要はありません。避けるべき糖類は、砂糖や、お菓子・ジュースなどに多く含まれる果糖ぶどう糖液糖などです。具体的な目安は、WHO(世界保健機関)のガイドラインに従って「砂糖は一日の摂取カロリーの5%未満」としておきましょう。例えば平均的な成人女性の場合、砂糖大さじ3杯ほどでこの目安を超えそうです。

 とはいえ、僕のダイエットの理論の一つに「たまには好きなものを食べるべき」という考えがあります。なぜならば、我慢は心に毒だし、食に対する過度な我慢は人生の幸福度を下げてしまうと思うからです。ですので、お菓子やジュースを毎日摂取するのは避けるべきですが、たまには楽しむという生活を送ってほしいと思います。これが、僕が推奨する“糖制限ダイエット”です。

(文/計太)