家で仕事場を確保するのは難しい人は、外でテレワークの場所を確保する選択肢もある。AERA 2021年5月31日号で、記者がテレワークスペースの貸し出すサービスを体験した。



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 3回目の緊急事態宣言で会社から在宅勤務を命じられても、狭い家では仕事もはかどらない。住み替えたいけど、すぐには引っ越せない──。そんな人におすすめなのが、近ごろ増殖中のテレワークスペースだ。

 この記事を書いている私(井上)も、ほとんどの仕事を自宅でしている。都内の賃貸マンションは手狭で、やはり在宅勤務の夫とテーブルの奪い合いだ。夫がオンライン会議中なのを忘れて、寝間着で横切ることもしょっちゅう。プチ移住も検討しているが、なかなか結論を出せない。週に数回はカフェで仕事をしてみるが、電源がなかったり会議にはうるさかったり。

 そんなとき見つけたのが「ひとり会議室」という施設。空いている貸会議室をテレワーク用に貸し出すサービスだ。30分100円からで、1日最大1200円。午前9時から午後9時まで使える。東京、横浜、大阪の中心部に9カ所ある。

■ほどよい緊張感がいい

 5月上旬。JR渋谷駅から徒歩2分の渋谷東口駅前店を訪れた。雑居ビルの3〜5階にあり、二つ分の長机と、椅子3脚が自分のスペースだ。パソコンを広げて、ノートを置いても十分な余裕がある。同じ部屋を複数でシェアするが、パーティションで区切られているので他人の目は気にならない。無線LANも完備。子どものころに通っていた学習塾の自習室のよう。カフェのような談笑する空気ではないので、ほどよい緊張感がある。淡々と仕事をこなすにはいいかもしれない。昼は持ち込んだ弁当を食べ、15分仮眠。たまに気分転換に外に出て、10時間利用した。ウェブ会議のために1時間だけ使う人もいた。

 ひとり会議室は2019年にサービスを始めた。運営するハッチ・ワーク(東京)の芹澤健・広報室長によると、コロナ禍でテレワークの需要が高まり、利用者数は3倍に伸びた。ただ混んでいると電話やウェブ会議がしにくいこともある。最近は個室の需要が高まっているといい、30分500円で貸し切りにできるプランもつくった。

 かつて街中でよくみかけた電話ボックスのようなテレワークスペースも急増している。JR東日本や西日本といった鉄道会社が駅構内に個室型のブースを設けているほか、ビルの一角にも続々と登場している。

 オンライン取材をするため、千代田区のビルにあるブースを利用した。予約や入室の操作はすべてスマホで行う。予約時間になると、画面に「入室」ボタンが現れ、タップすると鍵が開いた。机と椅子、電源の最低限の設備がそろう。密室だから音漏れも気にならない。料金は15分で250円ほど。75分使ったので、約1300円だった。

 3大都市圏ではシェアオフィスやコワーキングスペースがいくつもある。月1万円以上するところもあるが、10分単位で利用できる施設も多い。地方でも移住者向けのテレワーク施設を整備する自治体がある。

 そうした施設をうまく活用すれば、テレワークと都心ライフを両立できるかもしれない。なにより、働く場所は生きる場所だと思う。その日、生きる場所を自分で決めるのも悪くない。(ライター・井上有紀子)

※AERA 2021年5月31日号