コロナ禍で中学受験のトレンドが変化しつつある。急上昇していた大学付属校の人気が落ち着く見方が出ている。AERA 2021年7月12日号から。



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 コロナ禍で先行きの見えない不安に覆われるなか実施された今春の中学入試。経済悪化のあおりで、5年連続で上昇した受験率が減少に転じるのではないかとの大方の予想を裏切り、昨年とほぼ同水準で推移した。1都3県では募集定員を上回る受験者が詰めかける結果となった。

 その要因を、スタジオキャンパス代表の矢野耕平さんは次のように話す。

「公立中学がコロナ対応に四苦八苦する中、各学校が行った私学ならではの迅速で柔軟な取り組みが注目され、受験率を押し上げたのは間違いないでしょう。在校生全員にいち早く授業用タブレットを配布したり、動画やSNSを駆使して受験生に学校情報を届けたりするなど、積極的な対策を講じた私学が保護者の好感を得て、受験生増につながったと思われます」

■コロナ禍で人気に変化

 中には、密にならないよう1日1組だけ個別に教師が付き添い学校案内を実施した学校もあり、好評だったという。

 一方、コロナの影響で一変すると矢野さんがみているのが、ここ数年、急騰していた大学付属校人気だ。人気の背景には、文部科学省による大学入試の定員厳格化があった。指針を受け、首都圏の私立大学が一気に合格者を減少させたことで大学入試が難化。大学入試改革への不安もあり、危機感をもった保護者の間で、安全策として「中学から付属校に入れて大学受験なしで難関大学に進学させよう」という動きが加速していた。

 2021年の大学付属・系列校からの大学の内部合格率は、首都圏では早稲田大学、慶應義塾大学、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)の付属・系列校の多くが内部合格率9割を超えており、保護者の「親心」が実を結んだ結果となった。

 しかし、来年には、大学付属校人気は落ち着くというのが矢野さんの見立てだ。

 今年の大学入試では、コロナ感染者の多い首都圏での入試を回避したい受験生や、対面授業の保証がない中での生活費負担を懸念した受験生が、首都圏の私立大学を避け地元大学に流れるケースが顕著となった。河合塾「2021年度主要私立大志願状況」によると、この傾向はMARCHクラスに目立ち、青山学院大学では、前年比で30%以上も受験者を減らしている。

 大学に入りやすくなったのなら、人気集中で偏差値が高どまりする付属校を目指さなくてもいい。中高は進学校にして6年後の選択肢を広げておき、大学進学時に改めて目標を考える保護者が増える可能性は高い。

「東京の私大受験者数の急速な回復はしばらくないと予想されます。来年は、付属校人気はいったん落ち着きを取り戻すでしょう。大学入試改革が安定してくる数年後には、“付属校離れ”などということも十分考えられます」(矢野さん、以下同)
■好きなことに打ち込む

 とはいえ、付属校ならではの魅力があるのも間違いない。

 受験対策の必要がないのでカリキュラムがゆったりと組まれ、勉強に追われることなく部活や課外活動など好きなことに打ち込むことができる。学校によっては、系列大学と連携した特別講座が実施されるところもある。大学進学前に専門的な講義を受けられれば、学部選択や将来のキャリアプランを考えるきっかけになるだろう。OB・OGネットワークが強い学校なら、公私にわたり人脈を生かすことができ、大きなメリットになる。

 好きなことを掘り下げたいタイプには、時間的余裕のある付属校が向き、競争心が強く、進度の速い授業が苦にならないなら進学校向きといえそうだ。(ライター・深津チヅ子)

※AERA 2021年7月12日号より抜粋