コロナ禍で海外渡航ができない状況が続いていたが、留学再開も見えてきた。志願者が戻る可能性がありそうだ。AERA 2021年9月27日号は「大学入試」特集。

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 コロナ禍で海外渡航が制限された影響が、大学入試にも及んでいる。21年度は国際・外国語系の学部の志願者が、国公立大、私立大ともに、前年と比べて大きく減った。在学生の7割以上が留学する東京外国語大学を始め、早稲田大学国際教養学部でも、一般入試の志願者数を数百人単位で減らした。駿台教育研究所・進学情報事業部部長の石原賢一さんはこう話す。

「国際系の学部は留学必須も多く、敬遠されたとみられます」

 コロナ禍で交換留学は、事実上中止となり、留学を卒業要件から外した大学も。一方、各大学はオンライン留学を始めた。

 学習院大学の国際社会科学部は、21年度の志願者数を約300人減らした。学部長の澁谷覚(さとる)教授はこう話す。

「コロナでTOEICなど英語の外部試験が実施されなかったため、外部試験を利用した入試方式を中止したところ、その分の志願者数が減りました」

 20年春出発の留学生はゼロ。秋に、希望者はオンライン留学ができるようになった。

「海外渡航が禁止された状況に対応して始めたオンライン留学でしたが、今では渡航を伴う留学が再開した後も続けていきたいと思います」(澁谷教授)

 語学に並行して、各国の学生とインターンシップをする4〜5週間のプログラム。企業から課題を聞き、オンライン上で解決策を話し合った。

「人と働く上で信頼関係を築くことが大切ですが、オンラインと対面とでは勝手が違います。しかしコロナ後は世界中から志を同じくする者がオンラインで集まり、一緒に働く時代になります。学生たちにはそれを先取りしたのが大きかった」(同)

■就活前に留学の可能性

 今後の見通しも立ってきた。文部科学省は、ワクチン接種が進んだなどとして、留学の可否判断を各大学に委ねた。学習院大では、1年半ぶりに留学を再開。8月末から、約30人が世界各地の協定校へ旅立った。

「コロナが収束したとき、いち早く活躍をと考えると、国際系学部の人気が下がり目の今が逆に狙い目。早めに動く人が、世界をリードする人になる」(同)

 大学通信・常務取締役の安田賢治さんも言う。

「海外の大学へ直接進む人は、むしろ減っていません。私立広尾学園高校から21年度に海外大に合格した生徒は、前年比約3倍ののべ220人を超えました」

 その理由をこう考える。

「今の高校生はグローバル志向です。コロナ次第ですが、22年度の入学生なら、就活前の大学2年の頃までに留学できるようになるかもしれない。志願者が戻ってくる可能性は高いと思います」(安田さん)

 観光系学部も厳しい。河合塾によると、観光の名のつく私大や、学科の21年度の志願者数は、前年比67%に。歴史ある立教大学観光学部でも一般入試の方式が変わったので単純に比較できないものの、20年度志願者の多かった個別学部日程が倍率6.1倍だったのに対し、21年度は4.4倍に低下。

 他方、新設も続く。22年4月、國學院大學に観光まちづくり学部が開かれる。金沢大学でも文理融合の学びを掲げる融合学域に新たに観光デザイン学類が誕生する。なぜ今なのか。金沢大の山崎光悦学長はこう話す。

「構想の始まりは2年前です。今は観光需要が低迷していますが、金沢でも新幹線開業効果により観光客数が劇的に伸びていました。コロナ禍を契機に、観光ビジネスも変わりつつあります。地域の魅力を引き出す観光業が産業振興と地方創生を推進し、我が国の大きな稼ぎ頭になる可能性を秘めています」

 アフターコロナに活躍できる人材を育てるという。

「これからは従来の観光学の知識だけでは立ち行かない。データサイエンスで人の動き、消費行動を分析して、エビデンスに基づいて新たな観光価値をデザインする人材を育成します」

(編集部・井上有紀子)

※AERA 2021年9月27日号より抜粋