コロナ禍が直撃した今年春の就職状況が明らかになった。採用を中止・縮小した業種もあり、翻弄された学生は多い。大学はオンラインを活用してどう対応したのか。AERA 2021年10月25日号は「採用される大学」特集。

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 2023年春の就職を目指す50人の大学3年生や大学院生が10月上旬、就業体験(インターンシップ)先を探すために東京都内の会場に集まった。就職情報サイトを運営する「学情」主催のマッチングイベントだ。休憩時間は静か。隣と話す人もいない。「新型コロナウイルス対策のためか、まだ慣れずに緊張しているからか、だと思います」(主催者)

 それでも、企業に質問する姿勢は例年どおり活発だった。

「リアルなイベントはほとんどありません。貴重な機会だと思って参加しました。他の人の質問が具体的ですごいと思うところもあったし、自分が今、どの位置にいるのか確認できたと思います」(立正大学の男性)

「コロナ禍でも売り上げを伸ばし、安定している食品メーカーを志望しています。いろんなインターンシップに参加して情報収集しています」(東京理科大学大学院の女性)

 イベントに出展したキッコーマンの採用担当、井元優吾さん(24)はこう語る。

「昨年の21年卒(21年春入社)の学生から面接はすべてオンライン選考です。画面越しでは実際の雰囲気と異なる場合もあるため、少し不安はありました。でも、入社した社員は例年と遜色ありませんでした」

■状況は大きく変わらず

 コロナ禍が直撃した21年卒の就活の結果を見てみよう。就活生に人気の企業102社がどの大学から何人を採用したか、大学通信の協力を得て一覧にした。その企業のなかで最も採用数が多かった大学を赤色、採用数で5番目までの大学を青色、そのほか10人以上が採用された大学を黄色で示した。ほぼ全業種で早稲田大学や慶應義塾大学が強いことなどが、ひと目で分かる。ただ、卒業者数は大学ごとに大きく異なるので、比べる際は注意してほしい。

 数字をまとめた大学通信調査部長の井沢秀さんが分析する。

「状況は大きく変わっていません。メガバンクは縮小傾向ですが、自動車、電機メーカーは安定しており、難関大学から採用しています。医薬品系はやはり医学部、薬学部のある難関国立大が強い傾向です」

 就職情報会社ディスコによると、10月1日時点の21年卒の内定率は88.6%と高水準で、コロナ禍前の20年卒を1.9ポイント下回った程度だった。

 コロナ禍で航空・旅行業界は採用を中止したり減らしたりしたところが多い。両業種に多数の人材が輩出してきた明治大学の就職キャリア支援センター、原口善信さんは明かす。

「低学年の頃から強く志望する学生たちには特にダメージが大きかったです」

 同大では、例えば全日本空輸(ANA)への就職者数は20年卒16人から21年卒1人と大幅に減った。

「21年卒は『これから航空会社にエントリーシートを出そう』というときにコロナ禍で就活が中断しました。採用があったのは、JAL(日本航空)とANAではパイロット職などに限られました。航空業界に絞っていた学生は他の業界を見ようにも人気企業はすでに選考が始まっていることが多かったです」

 それでも、全業種で見ると全学部就職内定率は90%以上を維持。前年度とほぼ変わらない結果となった。コロナ禍で、大学は学内ガイダンスや個別相談をオンラインで対応し、学生を支援した。

 航空業界は来春の22年卒の採用もほとんどない。原口さんは「なぜ航空会社に入りたいのか」と学生たちに問いかけてきたという。

「そうすると、別の業界でも思い描いたことをできると気づきます。例えば、人を喜ばせることが好きなのであれば、エンタメ業界なら近いことができるかもしれないと、芸能事務所、ブライダル業界、テレビ制作会社、ゲーム会社に入った学生もいました」

■知名度にこだわらない

 9月末に緊急事態宣言が解除され、10月から対面の面談を再開した。原口さんは言う。

「対面とオンラインを組み合わせて、より丁寧なフォローをしていきたいと思います」

 青山学院大学も、航空・旅行業界に多くの卒業生を送り込んできた。例えば20年卒を見ると、ANAには調査対象52大学で最多の41人、JALには同3番目の32人が入社した。同大は20年4月、全4年生を対象に緊急アンケートを実施。すぐに約10%にあたる約500人から「不安で就職活動が進められず相談したい」という回答が寄せられた。進路・就職センターの祖父江健一事務部長はこう話す。

「就職活動へのモチベーションをどうしても持てない学生は例年数%はいますが、コロナ禍で10倍に。職員がすぐに電話をかけて相談を受け始めました」

 一方で、学生から「隠れた良い企業はどこですか」と問われることが増えたという。

「学生は名前を聞いたことのあるBtоC(消費者向け)の企業ばかり見てきましたが、こうした企業は景気や社会の影響を受けやすいと考え、BtоB(法人向け)の企業にも目を向け始めました」

 コロナ禍前、同大から10人以上就職した企業は毎年30社以上あった。だが、21年卒はその数が3分の1に減って就職先が散らばった。航空・旅行業界を目指していた21年卒の女性(23)は法人向けに顧客管理事業を展開する企業に就職し、営業職として働いている。

「行きたかった企業に挑戦することもできずに悔しかったけど、就職センターの職員さんに何度も相談に乗ってもらい、最終的には働いている方々の人柄で決めました。仕事で様々な業界に携われるのが面白いし、(働く時間を自由に決められる)フルフレックスタイム制で働きやすい。今の会社に満足しています」

■不安のなかでも諦めず

 関西学院大も航空業界に強い。20年卒のJALとANAの就職者数は計48人いた。だが、21年卒はJALへの3人にとどまった。その状況下でも国際学部4年の片山理咲子さんは、パイロット訓練生で内定を得た。

「コロナ禍で、22年卒の採用は全てなくなってしまうのではないかと思いましたが、諦めずに大学のキャリアセンターを活用して、先輩たちに話を聞きに行きました。話を聞けば聞くほど、社員一丸となって飛行機を飛ばしてお客さまに喜んでいただくという仕事の魅力に気付かされ、チームで何かを達成することにやりがいを感じる自分にフィットしていると思いました」

 女子大もコロナ禍のあおりを受け、21年卒の平均実就職率(大学通信調べ)は4.3ポイントも下げた(大学全体で3.3ポイント低下)。就職情報を提供するマイナビの編集長、高橋誠人さんはこう語る。

「もともと女子大は99%以上の就職率を誇る学校があるくらい、就職の強さが売りでした。しかし、女子大で人気の航空・旅行業界はコロナ禍で就職が厳しくなりました。さらにコロナ禍前からメガバンクへの就職は、DX(デジタル化による変革)、AIの導入による無人化の方向で一般職の人数が絞られています」

 例えば、同志社女子大学は21年卒の就職内定率を1ポイント以上落とした。JALやANAは毎年20人近く入社する最大の就職先だったが、21年卒は0人だった。同大を今春卒業した神奈川県在住の女性(23)も、当時は航空業界を志望していた。

「周りには航空業界を志望する人が多かったです。航空業界の就職がなくなり、燃え尽きて一時は『就活をお休みするね』という友だちもいました」

 同大キャリア支援課の西岡慎介課長は、コロナ禍前からあった一般職採用の減少の影響が最も大きいと言う。

「総合職への就職は共学の学生との戦いになりますが、女子大の丁寧さを生かした支援に力を入れています。大人数のセミナーだけでなく、学生がエントリーシートを実際に書いてみる少人数講座も開いています」

 東京女子大学キャリア・センター課の森田光則課長も、学生の支援に苦慮してきた。

「女子大はきめ細やかな対応が強みですが、コロナ禍で学生が学内に入れなくなりました。オンラインで説明会などを開きますが、学生とのつながりが薄くなりました。学生の今の状況が十分にわかりません」

 そこで、ウェブサイトでチャット相談を開始した。

「コロナもあるから早く動く学生もいれば、どうしたらよいか分からず動けない学生もいて二極化が心配です。いつでも質問できるよう、24時間自動応答の機能にしました。込み入ったことなら、キャリアカウンセラーがチャットで応対する機能もあります。そこからオンラインの個別相談にもつなげられています」(森田課長)

 写真投稿アプリ「インスタグラム」のライブ配信機能「インスタライブ」のようなイメージで、職員がオンライン上に登場して、学生たちの前でチャット相談に答えることも始めた。(編集部・井上有紀子、深澤友紀)

※AERA 2021年10月25日号より抜粋