コロナ禍でオンライン化された就職活動。選考をはじめインターンシップや内定者懇談会、内定式なども、対面ではなくなり、学生も企業も接点の少なさに課題を抱えている。AERA 2021年10月25日号から。

*  *  *

 学生は内定を得た後も悩みが尽きない。ディスコの上席研究員、武井房子さんは言う。

「どの企業の内定を受けるか決められないのです」

 ぜいたくな悩みのように思えるが、ここにコロナ禍ならではの課題があるという。

「コロナ禍前の売り手市場だったときも複数内定をもらって迷う学生がいました。ただ、コロナ禍で選考も内定者懇談会もオンラインになりました。会社に一度も行ったこともなければ、内定者と直接話したこともありません。企業との接点が少なすぎて決定打に欠けます。10月1日のオンライン内定式は複数社掛け持ちして、トップのあいさつを聞き比べる人もいました。内定式さえも判断材料なのです」

 インターンシップでも接点を増やすことができる。ディスコによると、インターンを行った学生(22年春卒業予定)は今年3月時点で87.8%とコロナ禍前より高水準だ。だが、企業側の実施率は63.3%でコロナ禍前より10ポイントほど低い。武井さんは言う。

「オンラインでできるとは言っても会社の魅力が伝わりづらい。だから実施に踏み切れない会社もあります」

 そんななか、清水建設は昨夏と今夏、現場監督のインターンシップをVR(仮想現実)で実施した。現場監督は多くの職人のとりまとめや、現場の進捗、品質、安全を管理する。いままでは全国の工事現場に学生を集め、仕事を理解してもらっていた。それがコロナ禍で難しくなり、VRを利用することにした。同社人事部の嶋森遥子さんはこう話す。

「現場を知らなければ(就活生と企業の)ミスマッチが起きてしまうかもしれません。オンラインでどうにかできないか考え出しました」

■スマホで「現場」を見る

 専用眼鏡をかければ、学生は自分のスマホやパソコンから「現場」を見られる。現場は国内で建設中のビルや大学で、重機の音が響く。近くではロボットも動いていた。嶋森さんは言う。

「若手社員が職人さんとコミュニケーションを取る姿も見てもらいました。職人さんはちょっと怖いイメージがあるかもしれませんが、実際に会ってみると優しいですし、わからないことは教えてもらえます。いい関係を作るのも仕事です」

 コロナ禍のなか、新たな試みが次々と始まっている。(編集部・井上有紀子、深澤友紀)

※AERA 2021年10月25日号より抜粋