財産を相続人以外へ残す選択肢として、故人が残した遺産を、特定の個人や団体に寄付する「遺贈寄付」が注目を集めている。とはいえ、遺贈寄付について詳しく知る人はまだそれほど多くないだろう。想いを実現するには、遺言書の作成などの手続きも欠かせない。どんな点に注意したらいいか、具体的に見ていこう。

【前編/「遺贈寄付」が増加傾向 関心が高まる背景は?】より続く

 第一に、寄付をする団体についてしっかり調べる必要がある。どんな活動をしているかはもちろん、将来にわたり安定して活動していけるかを見るうえで、団体の運営状況や財政状況は丁寧に把握しておきたい。わからない点は直接、団体に問い合わせるとよい。情報開示の姿勢も大事な判断材料になる。寄付先は一つに絞る必要はなく、複数の団体でも構わない。

 次に、寄付先が決まったら、いくら寄付するか決める。そのためにはまず、自分がどれだけ財産を持っているか、最終的にどれだけ残せそうかを把握、整理しておくのが必須だ。寄付するかどうかに限らず、終活をするうえでの基本でもある。

 どこにいくら寄付するかが決まったら、その旨を遺言書に残す。無用なトラブルを避けるためだ。これまでも本誌でたびたび紹介しているが、遺言書には3種類ある。

 本人が手書きで書いた自筆証書遺言のほか、2人以上の証人の立ち会いのもと公証人に確認してもらう秘密証書遺言、話す内容をもとに公証人が作成する公正証書遺言だ。

 専門家の多くは公正証書遺言を勧めるが、自筆証書遺言は昨年7月、全国の法務局で保管する制度ができた。この制度を利用すると紛失や改ざんの恐れがなくなり、家庭裁判所での「検認」の手続きもいらないので、参考にしてほしい。

 遺贈寄付の普及活動や寄付先の紹介をしている一般社団法人「全国レガシーギフト協会」(港区)の理事、山北洋二さんはこんなアドバイスをしてくれた。

「法定相続人が最低限もらえる取り分である『遺留分』に注意しましょう。遺留分を上回るような寄付をしてしまうと、相続人が不満を感じたり、寄付の返還を求めたりするといったトラブルになる恐れがあります。『付言事項』で、寄付をする理由や遺族への想いを書き残しておくこともおすすめします。遺族の納得が得られやすい」

 額を決められない場合は、財産の「○分の1」「半分」といった具合に割合で示してもよい。このように、遺言で寄付の金額などを割合で示す遺贈が「包括遺贈」。これに対し、具体額などを示す遺贈を「特定遺贈」と言う。

 山北さんによれば、不動産を寄付したい場合や、包括遺贈のケースは要注意だ。

 不動産の場合、団体が価値を感じられる土地ならいいが、そうでないと現金化に手間や時間がかかる。名義が変更されていなかったり、不便な土地だったりすれば売るのが難しいケースもある。こうした事情から不動産の受け入れに消極的な団体もあり、寄付が実現しないこともある。

 また包括遺贈の場合、土地を売った時に得られた利益にかかる所得税や住民税(「みなし譲渡課税」)は、寄付を受けた側が負担しなければならない点もネックになっている。負担せずに済む方法もあるが、一定の条件や手続きがいる。

 スムーズに寄付が実現できるよう、不動産の寄付や包括遺贈を検討する際は、寄付先や、弁護士や司法書士といった専門家にあらかじめ相談することをおすすめする。

 もうひとつ気になる点として、知名度の高い団体の名をかたったり、活動実態がないのに具体的な取り組みがあるかのように装ったりして、寄付を呼びかける例も一部でみられる、と複数の関係者から聞いた。

 コツコツ築いた虎の子の財産を、怪しげな団体に取られてはかなわない。少しでも疑問を感じたら直接問い合わせ、専門家に相談しよう。

 いろいろ注意点を書き連ねると、面倒に感じる人もいるかもしれない。

 だが、日本承継寄付協会代表理事の三浦美樹さんは「遺贈寄付はわかりやすく、シンプルに社会を変えられる手段」と強調する。

「遺贈寄付を『お金持ちがするもの』と思う人は多いですが、誰でもできます。寄付を受ける側にとって、たとえ1万円でも3万円でも、寄付してもらえればうれしいはず。遠慮はいりません。何もしなければ、財産は配偶者や子どもら相続人のもとへ移るだけですが、本人の気持ちしだいで、孫やひ孫ら、将来の世代や離れた国や地域のために役立ててもらえる。人生でたった一回のチャンス。財産をどう残すか、じっくり考えてほしい」

 三浦さんによれば、財産の行方がはっきりすると、残りの人生にハリが出るケースは多い。人生最後の社会貢献、ぜひ検討してみては。(本誌・池田正史)

※週刊朝日  2021年12月3日号より抜粋