コロナ禍でペットを飼う人が増え、拡大するペットビジネス市場。中でも先端技術を活用する”ペットテック”と呼ばれる領域が注目されている。AERA2022年4月25日号から。

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 ずらりと並んだ犬の鼻、鼻、鼻。この画像が実はとても大きな可能性を秘めている。

 鍵となるのは鼻紋。犬の鼻のシワは、一匹一匹違う模様をしている。これを指紋認証のように犬の個体識別に使おうというのが鼻紋認証アプリNose IDだ。スマホで鼻をスキャンするだけでAIが画像認識で個体を識別。5月初旬にアプリのリリースを予定している。サービスを手がけるS’more代表の韓慶燕(カンケイエン)さんが説明する。

「鼻紋認証を利用したサービスは米国、中国、韓国ですでに存在して、迷子犬の捜索やペット保険の登録に使われています」

 現在日本では1日に80匹程度の犬が迷子になっていて、6月からブリーダーやペットショップ等で販売される犬・猫にマイクロチップの装着が義務化される。

 鼻紋認証ではさらに、地域の他の飼い主や住民に迷子情報を流すことで、より安心なセーフティーネット作りを目指す。

 開発には、国内の大手情報メディア企業で鼻紋認証機能の開発を行っていたエンジニアが技術アドバイザーとして参加している。昨年1月から現在までに、鼻紋の登録数は4千匹超。一匹一匹を高い精度で認識するのには1万匹程度の登録が必要で、まだまだ鼻紋を登録してくれるワンちゃんを公式サイトで募集中だが、「迷子になっているのはこの子ですか?」のようにいくつか候補を出す形であれば、現状の精度でも成立するという。

■無料ですべての子に

 6月からは福岡市との実証実験もスタート予定。市内の犬の飼育者に鼻紋登録を促し、市全体で迷子犬を減らす目的だ。

 こうした迷子犬捜しのサービスに関して、韓さんは無料で提供することにこだわっている。

「迷子になった時にお金を払った子だけ助かる、というのは違うと思うから」(韓さん)

 鼻の先に見据えるのは、ペットと共存しやすい社会だ。鼻紋にさまざまな情報を一元化することで、将来的にはワクチン接種の証明や日常的な健康管理、災害時や緊急時に飼い主同士が助け合えるコミュニティー作りにもつなげたいと考えている。

 ちなみに猫の鼻でも理論的には可能だが、猫は犬より鼻が小さく鼻紋の溝も浅いため、さらに技術的な難しさがあるという。

 この子は今何を考えているんだろう? 言葉が話せたらいいのに。ペットを飼っている人ならきっと一度は感じたことがあるそんな願いに応えてくれるプロダクトもある。

 イヌパシーは犬の心拍から感情分析を行うウェアラブルデバイス。心拍モニターで得た情報から犬の状態を「リラックス」「ドキドキ」「ハッピー」「興味」「ストレス」に分類し、5色のライトで教えてくれる。2018年からハーネス型を販売してきたが、4月14日から新たにクラウドファンディングで首輪型の先行販売を開始した。首輪型には活動量計も搭載し、散歩の量は十分なのか、何をしたときにペットが満足してくれるのか、より多くのヒントが得られる。(編集部・高橋有紀)

※AERA 2022年4月25日号より抜粋