塾通いに習い事に運動にと、なにかと忙しい現代っ子ですが、睡眠は最重要。充実した毎日を過ごすには、質と量、どちらも必須です。しっかり寝てスッキリと翌朝を迎えるための習慣とは? 精神科医の樺沢紫苑先生に聞きました。発売中の「AERA with Kids2022春号」(朝日新聞出版)から一部抜粋してお届けします。

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 睡眠不足はデメリットだらけで、何一ついいことがありません。集中力や注意力、判断力、記憶力、気分などが低下することが明らかになっています。大人でも睡眠不足だと家事の効率が悪くなったり、仕事に集中できなかったり、イライラすることはありませんか? また、風邪以外にもがんや糖尿病など将来的に病気にかかるリスクを高めたり、寿命を縮めたりすることも研究でわかっています。

 さらに、睡眠不足になると、食欲増進ホルモンのグレリンが増え、食欲抑制ホルモンのレプチンが減ります。つまり、食欲が異常に増して「食べたい!」という衝動が抑えられなくなるのです。いくら成長期とはいえ、ドカ食いをして、必要以上にハイカロリー、高脂肪の食べ物を摂り続けていては、肥満の可能性が高まり、健康面も心配になりますね。

 試験前にも睡眠時間を削って勉強時間を増やすのではなく、しっかり寝て集中力など「質」を高めましょう。

 必要な睡眠時間は子どもによっても、年齢によっても異なります。朝目覚めたときの気分がいいかどうか、日中の眠気がないかどうか、チェックしてみましょう。ここでは、「いい眠り」のためのおすすめの習慣を紹介します。

(1)動画やゲームは遅くても寝る30分前には終わらせる

 寝る直前の動画やゲームは睡眠の妨げになるのでやめたほうがいいでしょう。その理由は二つあります。一つめは、「ブルーライト」です。ブルーライトはタブレットやスマホ、パソコン、ゲーム機などの画面から発される青い光のこと。青空の波長と同じなので、ブルーライトを浴びると脳が昼間だと錯覚し、睡眠物質メラトニンの生成を抑えてしまいます。

 二つめが、「ドーパミン」。面白い動画やゲームに夢中になると、脳が興奮し、ドーパミンが分泌されます。ドーパミンは心臓をドキドキさせる物質です。脳を昼間と勘違いさせ、さらに興奮させてしまっている状態では、布団に入ってもなかなか寝つけないですよね。

 動画・ゲームタイムの理想は就寝2時間前までと言いたいところですが、せめて寝る30分前から動画やゲーム、スマホの画面は見ないようにしましょう。大人もこれは同じ。就寝前に「LINEの返信だけはしておきたい」といった場合でも、5分以内にすませたいところです。

<親の行動Point>
早めに夕食、入浴をすませていても、寝る直前までテレビや動画をダラダラ見るのは避けて。就寝30分前になったら親もスマホを見るのはストップ!

(2)寝る30分前からリラックスして過ごすようにする

「明日の時間割そろえたの?」「もう寝る時間!」とドタバタと一日を終え、脳や体が興奮したままの状態では、なかなかすぐには寝つけないもの。深い眠りにつくためには、日中優位になっている交感神経から副交感神経に切り替える必要があります。切り替えには2時間かかるといわれていますが、少なくとも就寝30分前からは、暗めの部屋でのんびり過ごしましょう。

<親の行動Point>
読書やおしゃべり、ストレッチなどがオススメ。続きの気になる漫画は避けて。

(3)寝る2時間前までに食事、90分前までに入浴がベター

 もしお子さんの眠りが浅いようであれば、食事や入浴の時間を見直すのも一つの手。寝る前に食事をすると、血糖値が上がったままなので、疲労を回復させる成長ホルモンが十分に出ず、疲れがとれにくくなります。また、スタンフォード大学の西野精治教授は、就寝90分前に入浴をすませることを推奨。深く眠るためには、就寝時に体の内部の体温を1度下げることがポイントです。

<親の行動Point>
寝つきの悪い子には、食事やお風呂の時 間を今よりも早められないか調整してみて。

(4)寝る前に親子で会話をするとぐっすり眠れる

 寝る前のリラックスタイムは大切。オススメの過ごし方の一つが、親子でおしゃべりを楽しむこと。会話やスキンシップをすることで、幸せを感じさせる脳内物質のオキシトシンが分泌されます。オキシトシン的幸福は、いわば「つながり」の幸福。非常にリラックス効果があるので、幸せな気持ちで眠りにつけます。今日うれしかったことなどを話してみては。

<親の行動Point>
子どもを膝に乗せて抱っこする、20秒以上のハグでもOK。ペットと触れ合うのも◎

(5)寝る直前に3行ポジティブ日記を書いてみる

 寝る前にお子さんに余力があればやってみてほしいのが、3行ポジティブ日記。今日あった楽しかったことを三つあげ、それぞれ1行でいいので書きます。なくても、無理やりひねり出そうとしてみてください。寝る前15分以内にやるのがポイントです。寝る直前は記憶に残るので、1日をポジティブなイメージで終わることができ、ポジティブ思考の練習にもなります。

<親の行動Point>
「給食がおいしかった」「いつもより早く宿題が終わった」など何でもOK。

(6)勉強より睡眠! よく眠ったほうが記憶が定着する

 一昔前は「受験生は睡眠時間を削って勉強することが当たり前」でしたが、私は「勉強か睡眠か」と聞かれたら、絶対に「睡眠」と答えています。記憶を定着させるためには睡眠時間が6〜7時間は必要だと証明されているからです。別の研究では「質のいい睡眠をとっている人ほど学習内容が定着する」こともわかっています。

(7)休日も朝日を浴びて体を動かせば夜は自然と眠くなる

 コロナ禍で外出の機会が減ってしまい、休日は子どもが一日中家にいて、夜なかなか寝ない……。そんなときこそ、大切にしてほしいのが、朝起きたらしっかり朝日を浴びることと運動です。太陽の光を浴びると、14〜16時間後に眠気が出てきます。また、日中に運動することで睡眠物質メラトニンの原料となるセロトニンが活性化されます。親子で朝の散歩をしてみては。

(文/AERA with Kids編集部)

樺沢紫苑先生/精神科医。作家。1965年、札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年、米国シカゴのイリノイ大学に留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通じてメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンに掲げ、YouTubeなどで発信。『学びを結果に変えるアウトプット大全』ほか著書多数。

※「AERA with Kids2022春号」より転載