日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「日米のコロナ対策の違い」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のない大型連休を利用して、アメリカに行ってきました。覚悟して向かった空港での入国審査が意外とあっさりして拍子抜けしたことから始まった旅は、日米のコロナ対策の違いやコロナに対する考え方の違いを痛感する日々でした。そこで今回は「私のコロナ禍の海外旅行体験記〜出国から到着まで」を共有させていただきたいと思います。

 渡米までに私が最も不安だったことは「無事に出国できるか」ということでした。パスポートさえあれば飛行機に乗り込めたこれまでの海外渡航とは違い、今回の渡航では入国する国が提示する条件を調べて必要な資料を揃え、直前までコロナにならないように気をつけながら生活し、直前のコロナ検査で陰性であることを証明する必要がありました。

 オミクロン株感染拡大以降のアメリカへの入国条件は、米国行きの便に搭乗する2歳以上のすべての米国への渡航者は、フライトが出発する「1日以内」に受けた新型コロナウイルス検査の陰性証明書と新型コロナウイルスワクチン接種証明書の提示です。

 渡米における有効な新型コロナウイルス検査として、核酸増幅検査と抗原検査が挙げられています。勤務先のクリニックでは渡航用のコロナ検査をずっと行っていますが、みなさんが核酸増幅検査に含まれるPCR検査を希望されます。

 私自身もPCR検査を希望していましたが、フライト前日が勤務日であったことやフライト日が祝日だったことから、昼休みに抗原検査を行い、陰性を確認することにしました。しかしながら、抗原検査を希望された方にお会いしたことがなかった私は、抗原検査で本当に大丈夫なのか不安で仕方なく、航空会社やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)が記載しているフライト条件を何度も確認し、インターネット上で「抗原検査でアメリカに出国できた」という記事を探してしまう始末でした。

 ハワイ便が満席だという報道を受け、念の為、フライト時間の3時間前に成田空港に到着するも、成田空港の国際線ターミナルは閑散としていました。覚悟していたチェックイン時の書類確認もあっさりとしたもので、丁寧な書類確認があるかと思いきや、陰性証明書や接種証明書をさっと確認し、宣誓書を提出したら、あとは荷物を預け、パスポートを提出しボーディングチケットをもらって終了。30分足らずで出発ゲートに到着してしまいました。

 免税店を含むほとんどのお店が閉まっていたため、フライトの時間が来るまでラウンジに行ってみました。そこには、出発ゲートの閑散とした様子とは打って変わり、空席を探すのがやっとなほど多くのいろんな国籍の方がいる光景が広がっていました。日本は観光目的の入国は禁止したままですから、ラウンジにいたのも、私のような観光目的の人は少なく、留学やビジネス目的の方がメインだったのではないでしょうか。皆、軽食を取ったり、談笑したり、仕事をしながら各々のフライトを待っているようでした。

 ロサンゼルス国際空港に到着してから痛感したのは、アメリカは人も経済も動いているということでした。成田空港とは違い、色んな国から来た多くの人が入国審査に並び、到着ロビーには多くのお迎えの人がたくさんいたからです。もちろんコロナ前とは違い、空港では勤務する方の多くはマスクを着用していました。けれども、入国審査に並ぶ人は着用していない人も多く、入国審査が終わり空港を出た瞬間、私もマスクを外しました。

 ちなみに、入国審査ではコロナ前と同じ、入国の目的や所持金、滞在先など簡単な質問をいくつか聞かれたものの、新型コロナウイルス検査の陰性証明書や新型コロナウイルスワクチン接種証明書を見せてという指示は一切なく、さっと終わってしまいました。

 Our world in dataによると、2022年5月12日時点での日本における追加接種(3回目の接種)率は55.6%です。内閣官房内閣広報室が公開しているデータによると、5月16日時点の3回目接種の年齢階級別接種率は、20歳代が36.7%、30歳代が40.5%、40歳代が50.6%、50歳代が68.9%と若い世代ほど接種率が低いことがわかります。



 現在、新型コロナウイルスワクチンの追加接種を終えている人は、日本国が指定するオミクロン指定国・地域以外からの入国であれば、入国時に陰性を認めれば、帰国後の隔離は免除されます。つまり日本人は、渡航先を選べば帰国後の隔離なしで観光目的の海外旅行に行って帰国することができるというわけです。

 グーグルが検索結果をもとにアメリカ人の今夏の旅行トレンドについて調べたところ、「パスポート取得」に関する検索が2022年1月から4月で前年比の300%も増加しており、海外旅行への関心が高まっているといいます。

 日本はというと、外国人の観光目的の入国は禁止したままです。来月から、1日当たりの入国・帰国者数の上限を「2万人程度」に引き上げ、外国人観光客受け入れの本格再開に向けて政府は調整に入っていることが報じられていますが、多くの人が飛行機や新幹線、鉄道や車を使い国内を旅行している一方で、依然として海外からの観光客は国内に入れないという規制をまだ継続するということになります。水際対策は、新型コロナウイルス感染症が国内に流行していない場合は有効です。オミクロン株を含めコロナ感染が拡大してしまった今、もはや厳しい水際対策は意味がありません。

 4月27日、アメリカ政府首席医療顧問であるファウチ氏は、「パンデミックはまだ終わっていないが、パンデミックの急性期の段階を脱し新しいフェーズに入った」という見解を示していましたが、ロサンゼルスやサンディエゴの街や空港には、コロナ検査スポットが至るところにありました。ワクチン接種を促す広告も、街の至る所で目にしました。「コロナ検査をたくさんして、陽性が出たら自主的に隔離し、悪化を認めれば医療機関を受診する」というコロナと共存する社会の姿を目の当たりにし、コロナに対する捉え方の違いを実感した旅になりました。次回は、カリフォルニアの街で感じたコロナ対策や出国前の検査などについて、まとめたいと思います。

 山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)