「ETF」をご存じだろうか?

 日本語では「上場投資信託」。株式市場に上場した投資信託(以下、投信)のことだ。上場した投信と言われても初心者にはわかりづらいので、ここでは通常の投信と比べつつ説明する。

 つみたてNISAなどでも買える「通常の投信」は市場で売り買いされているわけではなく、基準価額(投信の値段)の更新は1日1回だ。

 一方、ETFは株式市場の開いている時間にリアルタイムで売り買いできる。「買いたい!」と思ったとき、その時々の取引価格で買える点が、まず通常の投信と違うところである。

 米国株や不動産への投資で強烈な資産を築いた、たぱぞうさんにETFの基本から教わろう。

「ETFは、いろいろな会社の株をまとめた『株の束』です。取引価格を見ながら機動的に売買したい人にもETFは好まれます。ただ、初心者はゆっくり買って長期保有する形で十分です」

 たとえば「MAXIS米国株式(S&P500)上場投信」は日本の株式市場で買える。証券コードは2558。名前の通り、米国の株価指数S&P500と同じような値動きをする。

 MAXIS米国株式の中身は、つみたてNISAで人気のインデックス型投信「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と全く同じである。

 ETFも信託報酬(運用コスト)が価格から引かれる。MAXIS米国株式の場合は年0.077%、eMAXIS Slimのほうは年0.0968%(共に税込み)。ETFのほうが安い。

 個別株と同様に売買できるが、個別株と同様に売買手数料もかかる。最近はauカブコム証券、SBI証券、GMOクリック証券、楽天証券で買えば安い、というかタダ。

 この4社は、東証に上場する日本株やETFの約定(やくじょう)金額が1日100万円以下なら無料だ。

「ETFのもう一つの大きな特徴は定期的に分配金が支払われるものが多いことです。株式ETFなら、組み入れられている株式の配当が分配金として投資家に支払われます」

 配当は全額、分配金として出すのがETFの「決まり事」。通常の投信と比べて透明性が高い金融商品なのだ。

 つみたてNISAの対象商品として主流のインデックス型投信の場合、分配金を抑制して再投資に回す方針のものがほとんど。だが、ETFは分配金が定期的に支払われるので、お小遣いのようでうれしい。

「たとえば1000万円分のETFを持っていて、分配金利回りが3%なら年間30万円。税引き後でざっくり24万円、1カ月当たり2万円。老後の暮らしの足しになりますね。

 保有額がもっと多ければETFの分配金だけでも生活費をまかなえます。分配金をもらっても元本が減る感覚はなく、安心感があります」

 これが、ETFを長期投資する最大のメリットだろう。老後は生活費のために資産を売る必要が出てくる。投信の場合、分配金は再投資されているので、取り崩す行為はどうしても「元本を削っている感」がある。投信でも分配金の分だけ計算して取り崩せばETFと同じことなのだが、気分の問題。

「資産を効率的に増やすという意味では投信のほうがいい。それでも、ETFを好む人はいます」

 リタイアして資産で生活費をまかなう段階に入ったら、自分の手で取り崩すか、分配金が勝手に振り込まれるか。好みが分かれる。

 ETFの分配金は「強制的な利益確定」ともいえる。

「お金を育てる段階では、ETFで分配金が出ても手動で再投資に回しましょう。面倒ですし、分配金が出た段階で税金も差し引かれるので通常の投信より『増え方』の面で不利ですが、そこは『老後の打ち出の小づち』を作るための手間と考えましょう。

 分配金を再投資すれば少し効率的に増えていきます。ETFがまとまった資産に育ったら、分配金が口座に入ってくる喜びを味わえます」

 100万円分の通常の投信とETFの資産の増え方を比較すると、どうなるか。期間10年、共に毎年5%ずつ価格が上昇、ETFは元本から毎年利回り3%の分配金が支払われる(その分、元本は減少)と仮定して、検証した。

 10年間の資産の推移を見ると通常の投信は215万円。ETFは元本が162万円に増え、分配金は10年間の合計で30万円。合計すると192万円なので、実質的に23万円ほど通常の投信のほうがお金は増えていることがわかる。

 純粋にお金を増やすなら通常の投信、増やしたお金の一部を使っていきたいならETF。現役世代の資産運用は通常の投信がメインでかまわない。さらに老後の安心と便利さを準備したいならETFもつみたてる、という使い分けが肝心だ。

 さらに、東証ETFならネット証券の「貸株サービス」も使えると、たぱぞうさんがアドバイスをくれた。

「S&P500の東証ETFなどを証券会社に貸し出すと、金利がもらえます。現在は、貸し出したETFの金額に対して年0.1%程度の金利を円で受け取れます」

◎たぱぞう/投資顧問アドバイザー。米国株や不動産への投資で財産を億に乗せ、2019年、40代で会社員卒業。自身のブログでも海外ETFをいち早く紹介。著書多数

(文/木村慎一郎、編集/中島晶子)

※『AERA Money 2022夏号』から抜粋