タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

*  *  *

 もうそろそろ「女性活躍」という言葉をやめないか?と思うのですが、いかがでしょう。“女性活躍”“女性が輝く”などの文言は安倍政権下で盛んに使われ、女性に関する政策が進みました。「それまで話題にならなかった女性の問題に光を当てた功績は大きい」と評価する声もあります。キラキラした女性活躍祭りのイメージは確かに、もっと女性をもり立てよう、という空気の醸成(じょうせい)に成功しました。結果として働く女性も増加。しかし、その大部分は不安定で低賃金の非正規雇用で、コロナ禍で真っ先に打撃を受けたのは彼女たちです。不意打ちの休校措置で、収入を断たれた女性も多数いました。

 今や、ジェンダー格差や性差別の問題は世界的な優先課題です。他国の取り組みが進む中、日本の進捗(しんちょく)は遅く、残念ながら世界有数の男女格差大国であることに変わりはありません。「女性活躍」はすっかり定着した表現になりましたが、もうイメージ戦略で盛り上げる段階をとっくに過ぎています。言うべきは“活躍”という表現でふわっと覆(おお)い隠されていた実態を示す「女性差別撤廃と男女格差の是正」ではないでしょうか。

 先日、金融庁が上場企業およそ4千社に、女性管理職の比率や男女間の賃金格差、男性の育休取得率の指標の開示を義務付けることが報じられました。企業が年に1回作成する有価証券報告書に記載する「従業員の状況」に、これらの項目を追加するそうです。時代の潮流に乗った判断ですが、テレビのニュースがこれを報じた際の「企業の女性活躍への取り組みを示す指標」などの言い回しが気になりました。すでに平等が達成された状態で女性を応援するなら「活躍」ですが、実態は全くそうではありません。もう「女性活躍」と言うのをやめ、「女性差別の撤廃と男女格差の是正」と明言するべき時期が来ていると思います。

◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。

※AERA 2022年6月6日号