今年の国公立大入試の志願者数は約42万9千人で、前年から約3200人増加した。近年、国公立大の志願者数は少子化やコロナ禍の影響で減少傾向だったが、3年ぶりに増加に転じた。志願倍率は昨年と同様の4・3倍だった。

 今年の大学入試の最大のトピックは、導入から2年目を迎えた大学入学共通テストの難化だろう。

 数学I・Aや生物では平均点が前年から20点前後下落するなど、理系科目を中心に平均点が大幅に下がった。思うように点数が取れなかった場合、受験生の弱気の出願につながる傾向があり、志願者数の減少も予想された。

「それでも志願者数が増加に転じたのは、トップ校を中心に、平均点の下落に動じずに強気の出願をする受験生が多かったことが背景にあるのでしょう」

 こう話すのは教育ジャーナリストの神戸悟さんだ。特に旧七帝大や一橋大、東工大を狙う受験生たちが強気な姿勢を貫いていたと続ける。

「『弱気になると、かえって失敗する』。これは受験業界で、国公立大受験について繰り返し言われてきたことです」

 安全志向の出願が増えると、特定の大学に出願が集中し、倍率が上がる。合格最低点が上がって、例年であれば合格ラインの受験生が不合格に、というケースが多くなる。

「経験値の高い伝統的な進学校では『安易に志望校のランクを下げるな』と指導されていたはずです」(神戸さん)

 国公立大に強い高校はどこか、合格者数ランキングを見てみよう。全国最多は済々黌(熊本)で358人。開成(東京)337人、金沢泉丘(石川)336人、修猷館(福岡)335人、東海(愛知)330人と続いた。トップ15校の顔ぶれは、いずれも屈指の大学合格実績を誇る伝統校で、特に西日本の公立校が目立つ。

「東西での差異というより、首都圏とそれ以外での受験行動の違いが表れている結果でしょう」(同)

 首都圏には早慶を筆頭に有力私大が充実しているため、地元を出て地方の国公立大に進学する道が選ばれにくい。その意味で、このランキングに西の公立校が並ぶ傾向は来年も変わらないと思われる。ただ、3年後にはランキングに変動があるかもしれない。

「今年から新しい教育課程に変わるのに伴い、2025年の大学入学共通テストではプログラミングなどを扱う『情報I』が必須科目になります。現役合格を優先する受験生は、この年は国公立大受験を避けて私大受験に切り替えるなど、安全志向となるでしょう」(同)

 新教科への受験対策など、各高校の動向に注目したい。(本誌・秦正理)

※週刊朝日  2022年6月10日号