西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「中国とのつきあい」。

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【東洋】ポイント

(1)日中関係が悪くなり、中国人嫌いが増えそうで心配

(2)私は日本人と中国人は心を通じ合えると実感している

(3)日本は東洋に位置する国であるのを忘れてはいけない

 最近の日中関係は決してよくないようですね。たまに、中国の閣僚がニュースに登場しますが、人相が悪いなと感じてしまうのは、私だけでしょうか。米国や日本の態度に対して反発を示すニュースが多いわけですから、そうなってしまうのもいたしかたないかもしれません。とにかく、私がこれまでつきあってきた中国人とは全く違った印象の人たちなのです。これでは日本人に中国人嫌いが増えてしまうのではと心配になります。

 私は1980年9月に初めて訪中し、そのときに3人の中国人の友人ができました。張益英さん、謝玉泉さん、李岩さんです。張さんと謝さんは北京市がんセンターの放射線科の医師でした。通訳として選ばれただけあって、二人は流暢な日本語を話しました。気配りも微に入り細にわたっています。このお二人のおかげで私はすっかり中国人が好きになりました。

 李さんは北京市がんセンターの漢方薬部門のヘッドをしていました。日本語は片言ですが、ユーモアと機知に富んでいて、二人きりでいても、少しも退屈しません。二人で何度も中国国内を旅行しました。ときには35時間、汽車に乗り続けましたが、缶詰を肴に二人で飲むビールは旨かったですね。82年に私が病院を開設すると、李さんは「その病院の漢方薬部門は私に任せなさい」と何回も来日してくれました。1カ月は滞在して、平日の夕方2時間、連続講義です。一回も休みません。その友情の厚さに頭が下がりました。

 気功では二人の友人にお世話になりました。上海の中医学の先生、黄健理さんと北京から来た看護師の楊秀峰さん。黄さんは講義するときに同じ冗談を言う謹厳実直な人で、楊さんは、どんな気功をやっても一流の腕前でした。

 私が第二の故郷だと思っている内モンゴル自治区にも多くの友人がいます。このうち、ウインダライさんと孟松林さんは私の病院に6カ月留学しました。ウインさんは酒豪にしてヘビースモーカー、カレーライスが大好きでした。逆に孟さんは酒もタバコもやらない純情そのものの人。二人ともすぐに日本語がうまくなり驚きました。

 長い間、中国人とつきあってきて、私が実感しているのは、日本人と中国人は心を通じ合うことができるということです。それなのに、日中関係が悪くなってしまうというのは残念でしかたがありません。

 私は西洋医学の限界に気づき、中国医学に目を向けました。それによりホリスティック医学の道が開けたのです。日本人は知らないうちに欧米的なものの見方ばかりが身についてしまっているのかもしれません。でも日本は間違いなく東洋に位置する国なのです。それを忘れてはいけないのではないでしょうか。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

※週刊朝日  2022年6月24日号