日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「新型コロナウイルス感染者再拡大」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 新型コロナウイルスの感染が、再び拡大しています。先月20日には7,778人まで減少していた全国の新規感染者数が、7月に入り、急な増加傾向を認めています。実は、こうした感染拡大は日本だけではありません。フランスやドイツ、アメリカなど欧米では6月ごろから、韓国では日本と同じく7月に入り感染者数が増加しているのです。

 欧米や日本におけるコロナの感染状況の経過をみると、昨年は夏と冬の時期に流行の山があり、夏より冬の方で大きな流行を認めています。昨年同様、6月ごろから欧米でコロナの感染が広がりを認めていたことから、「日本でもそろそろ、夏の流行が起きてもおかしくない」と私は考えていました。というのも、7月に入ってからでしょうか。勤務先のクリニックで、38度を超える発熱を認める人に新型コロナウイルスの抗原検査を行うと、高い確率で陽性を認める方が急に増えてきたからです。

 もちろん、新型コロナウイルス感染症に季節性の流行が存在するかについては、まだ医学的コンセンサスがあるわけではありません。しかし、たとえば「Our world in data」などのデータベースで世界各国のコロナ新規感染者数のグラフをみてみると、どうも感染者数の違いはあれども、世界の流行の波も同様のパターンを認めているようなのです。

 もともと、「コロナウイルス」はヒトに感染することで「風邪」を引き起こす病原体として蔓延している4種類(HCoV−229E、HCoV−OC43、HCoV−NL63、HCoV−HKU1)と、動物からヒトに感染した重症肺炎ウイルスの2種類(SARS−CoV、MERS−CoV)がありました。

 日常的に私たちが感染し、風邪を引き起こす4種類のコロナウイルスは、風邪の10〜15%を占めると言われており、冬に流行のピークを認めています。ほとんどの子どもが感染を経験し、これらのウイルスに私たちは生涯に渡って何度も感染しますが、軽い症状しか引き起こさないため、基本的に問題になることはないとされています。2019年に中国武漢市で発見され、瞬く間に全世界に感染拡大した新型コロナウイルス(SARS−CoV−2)は、新たに追加されたコロナウイルスの一つなのです。

 2021年の日本における新型コロナウイルス感染症の感染者数の推移は、1月中旬にピークの小さな山があり、5月中旬にピークの小さな山があり、8月末をピークとした中程度の山がありました。2022年に入り、2月初旬がピークの大きな山を認めたことは、記憶に新しいと思います。今年の7月に入ってからの感染者数の増加傾向も、昨年の8月末にピークを迎えた流行と同じ経過を辿る可能性があると私は考えています。

 つまり、これまでの流行の推移や風邪を引き起こすウイルスであるコロナウイルスの季節性変化をもつという特性から、私は「新型コロナウイルスも季節性の変化を認めているのではないか」と推測しているのです。

 7月7日、政府は「現時点で、従点措置の適用などの行動制限を行うことは考えていない」と明らかにしました。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックも3年目に突入し、ワクチンも開発され、日本はもちろん世界で接種が進み、治療薬も開発された今、再び行動制限を行う必要は、私もないと思います。それよりも、希望者がワクチンを追加接種できるようにすべきではないかと考えています。時間の経過に伴いワクチンの予防効果が低下するというこれまでの報告に加えて、追加接種の感染予防効果についても報告されているからです。

 たとえば、2021年7月30日から8月31日までに2回の新型コロナウイルスワクチンを完了した60歳以上の接種者約114万人を対象とし、コロナの感染率と重症化を調べたイスラエルの報告は、3回目の追加接種から少なくとも12日後に確認された感染率は、追加接種群の方が非追加接種群より11.3分の1低く、重症化率は19.5分の1低かったことを報告しています。

 また18歳上を対象とし、ファイザー製またはモデルナ製の新型コロナウイルスワクチンの3回接種とオミクロン株およびデルタ株によるコロナ感染との関連を推定したアメリカの調査結果からも、追加接種がオミクロン株とデルタ株の両方の変異体に対する感染予防に関連があったことが示唆されています。

 日本では、5月下旬より4回目の接種(2回目の追加接種)も始められています。厚生労働省によると3回目接種から5か月以上が経過した(1)60歳以上の方、(2)18歳以上60歳未満で、基礎疾患を有する方や重症化リスクが高いと医師が認める方、が対象です。どうして、感染リスクが高いからと1回目の接種は医療従事者から開始されたのにも関わらず4回目の接種が受けられないのでしょう。

 新型コロナウイルスワクチンを有効期限までに使い切れない自治体が続出し、品川区では約6万回分、大阪市では約8万5000回分、広島市では約7万回分が廃棄に回ったという報道がありました。廃棄されたという報道を耳にするたびに、「廃棄するくらいなら、医療従事者や感染リスクの高い人、希望する人が接種できるようにしていいのではないか」と思います。

 まさに今、クリニックでもコロナが急に増えてきていると肌で感じるほど、陽性が多くなってきています。3回目の接種から5ヶ月が過ぎようとしており、「自分もとうとうコロナに感染してしまうのではないか、そうしたら職場に迷惑をかけてしまう」と思いながら診療にあたっています。廃棄するくらいなら、種類の希望はしないから4回目の接種をさせてほしいと切に願っています。

 山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)