本当は丁寧にじっくりと、自分の心身の健康や資産管理、スキルアップや子育てにじっくり向き合いたい。ただ、毎日2、3時間を費やすのは、忙しい現代人には難しい。それならば「15分」。1日15分の捻出で、人生が劇的に変わるのだ。AERA 2022年7月18−25日合併号から、15分を意識した「効率的な勉強法」を紹介する。

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 勉強においても「15分」を意識することで、効果を上げることができるようだ。

「人間は瞳孔が開いたとき、爆発的に集中力が高まります」

 こう話すのは全国で70教室を展開する幼児教室「コペル」の大坪信之社長だ。

 夢中になると、瞳がキラキラと輝く。瞳孔が開く瞬間だ。ただし、その状態は長続きしない、と大坪さんは言う。

「瞳孔が開いているとき、人間の脳は全力疾走しているときの筋肉以上にエネルギーを消費しています。なので、集中力は長く続きません。全力疾走で1時間走り続けるのが難しいように、途中で瞳孔が閉じてしまうんです」

 大坪さんによると、集中力が持続する目安は「年齢プラス1分間」。3歳児であれば4分間、5歳児は6分間。ただ、年齢とともに長くなるのは中学生ぐらいまで。上限は15分だという。

 この人間の特性を応用したのが、コペルでも実践しているインターリーブ(同時並行)学習法だ。例えば、外国語を学ぶときには、スピーキング、リスニング、ライティングといったスキルをそれぞれまとめて学ぶのではなく、短時間で区切り、繰り返して学ぶ。切り替えのポイントは 「飽きたら別のことをする」に尽きる。

 大坪さんは1枚のボードに伝えたい情報をシンプルにまとめて提示する「フラッシュカード」など、これまでに約30年かけて1万3千枚のカード教材、7千枚のプリント教材、100曲以上のオリジナルソングを開発した。最初の10年間で作った教材は今、ほとんど残っていないという。大坪さんはその理由をこう説明する。

「瞳孔全開の状態が100点だとすると、90点程度の関心しか集められなくなれば随時入れ替えています。嫌がることを無理やり長時間やらせるのはナンセンスです。楽しいと感じながら学ばなければ身につかないのは大人も同じ。気合と根性で勉強しても成果は得られません」

■暗記+筋トレで効果増

 大学の講義でも「15分効果」が活用されている。明治大学法学部の堀田秀吾教授は90分の講義で、ほぼ15分に1度、学生にテーマの転換や性質の違う作業を課してリフレッシュさせている。例えば、講話→ミニテスト→グループディスカッションといった具合だ。1分前後の休憩をはさむのも効果的という。講義中は、楽器だけで演奏されたインストゥルメンタル音楽も流す。作業を切り替えるタイミングでBGMを変えると集中力が増すという。

 堀田さんが「15分」に着眼するようになったのは、専任教員になった約20年前。教壇から見ていると、20分を過ぎたあたりから、あくびをしたり、机に突っ伏したりする学生が増えるのを実感した。試しに15分で講義内容を切り替えると、机に突っ伏す学生がいなくなった。科学的裏付けを求めて調べると、符合する研究結果がいくつも見つかった。

「米国のマサチューセッツ工科大学の研究者らの2002年の研究結果によると、成人の集中力が続くのは20分程度でした。米セントルイス大学の07年の研究でも、10〜15分を過ぎると聴講中の学生の集中力が減退し始める、との結果が出ています。20年の北京科技大学の研究結果でも、15〜20分の作業をすると脳が疲れてパフォーマンスが落ちる、と指摘しています」(堀田さん)

 堀田さんのイチ押しの勉強法は、暗記のあとの筋トレだ。勉強後に筋トレをすると、記憶力が10%アップする実験データもあるという。堀田さんは言う。

「筋トレで血流が良くなりますから脳のパフォーマンスも上がります。心拍数が120ぐらいまで上がる運動が記憶の定着にはちょうどいい。階段昇降運動を10分ぐらい行うと最もパフォーマンスが上がると言われています」

(編集部・渡辺豪)

※AERA 2022年7月18−25日合併号