誰もが経験したことがある口内炎。多くは自然に治るが、まれに感染症や全身の病気と関係するものやがんの初期症状であることもある。注意が必要な口内炎には、どんな特徴があるのか。

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 口の中に発生するできもので、圧倒的に多い口内炎。口の中の粘膜に起きる炎症すべてを指し、原因はさまざまだ。

 一般的な口内炎は、「アフタ性口内炎」と呼ばれ、頬や唇の内側、舌、歯肉などの粘膜に、白く丸い潰瘍ができる。原因は不明なことが多いが、かんだり、かたいものを食べたりして口の中に傷ができ、それに対するからだの過剰な反応として炎症が起きることが一因と考えられている。一般的には、放置しても1週間程度で自然に治るが、疲れやストレスなどによって免疫力が落ちていると、潰瘍の数が増えたり、治りにくくなったりすることもある。

■全身の病気が原因で口内炎が出ることも

 問題となるのが、感染症や全身の病気、アレルギーが原因となる口内炎だ。感染症の代表が「口腔カンジダ症」で、カンジダ菌という真菌(カビ)によって起こる。カンジダ菌は口の中の常在菌の一つだが、体力が低下している人や高齢者、唾液量が減少している人はカンジダ菌が異常に増殖することがあり、発症する。

 慶応義塾大学病院歯科・口腔外科准教授の角田和之歯科医師はこう話す。

「粘膜が点状や線状に白くなったり、赤くなったりするほか、痛みや味覚障害が出ることもあり、症状は七変化です。見た目だけでは診断が難しく、細菌検査をして診断します」

 単純ヘルペスウイルスの感染によっても、口内炎ができる。多くの場合、子どものころに感染し、症状がないまま抗体をつくる。大人になって体力が落ちているときなどに、潜伏していたウイルスが活性化して症状が出る。

 一方、大人になって初めて感染することもあり、その場合は口の中全体に口内炎が出るなど、症状が強い。発熱する場合も少なくない。

 口の中や手足などに水疱性の発疹が出る「手足口病」も感染症によってできる口内炎の一つだ。子どもが中心の感染症だが、大人になって発症する場合もある。

 全身の病気が原因で口の中に症状が出ることもある。その一つがクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(腸に慢性的な炎症が起きる病気)だ。

「口の中から腸まではつながっているので、腸管の病気が口の中に出てきても、不思議はありません。口内炎がなかなか治らず、検査をしても原因不明で、しばらくしてから下痢が止まらなくなり、クローン病が発覚したというケースもあります」(角田歯科医師)

 繰り返し口内炎ができる場合、慢性の炎症性疾患の一つである「ベーチェット病」も疑われる。皮膚や外陰部、目にも症状が出るが、特に口内炎は頻度が高い。

 そのほか、アレルギーや抗がん剤の副作用、入れ歯が舌や頬の内側に当たり続けることによる口内炎もある。

■かたいしこりに触れたらがんに注意

 最も注意しなければならない口の中の病気が、がんによるものだ。がんの初期は、粘膜が赤くなったり白くなったりすることもあるが、アフタ性口内炎のような口内炎ができることもある。一般的な口内炎とは、どのように違うのか。国立がん研究センター中央病院頭頸部外科長の吉本世一医師は、こう説明する。

「2週間以上経っても治らず、さらに悪化していくようなら、注意が必要です。自分でチェックする方法としては、目を閉じて口内炎の部分を指で触れるのがおすすめです。かたいしこりに触れる場合は、腫瘍を疑って早めに医療機関を受診したほうがいいでしょう」

 粘膜のただれ、出血、痛みといった症状が出たり、かむ、のみ込む、話すといった機能に支障が出たりしたときには、がんは進行している可能性が高い。

「実際には口内炎ができても、がんではないことがほとんどです。このため、口内炎だけでは受診につながりにくく、自分でがんを疑って受診するケースは生活に支障が出るほど症状が重く、進行している傾向があります。耳鼻科や歯科医院で異変が見つかり、紹介されてくるケースでは、早期に見つかることもあります」(吉本医師)

 専門的な医療機関では、最終的に組織や細胞を採取し、がんの有無を確定する。

 治療は、がんとその周囲を切除する手術が基本となる。ほかの多くのがんと同様、早期で手術できれば治りやすく、切除範囲も小さくてすむので、機能や見た目への影響が少ない。

 口にできるがんは口腔がんと呼ばれ、できた部位によって舌がん、口腔底がん、頬粘膜がん、下歯肉がん、上歯肉がん、硬口蓋がん、口唇がんに分類される。いずれの場所もほとんどが粘膜組織から発生する「扁平上皮がん」だ。なかでも多いのが舌がんで、口腔がんの5割以上を占める。舌の側面にできることが多く、上部分にできることはほとんどない。

 口腔がんは、高齢化に伴って、増加傾向にある。発症のリスクとなるのが、習慣的な喫煙や大量の飲酒、むし歯や合わない入れ歯などによる慢性的な刺激、口腔内の不衛生などだ。吉本医師は、次のように懸念する。

「食習慣の影響で、若い世代ほどあごが小さい傾向があります。歯が過密状態になって内側に倒れると、舌に当たり続けることがあります。その部分が慢性的な炎症となり、がんのリスクとなるのです。また、むし歯を放置すると、削れた部分の歯が尖って舌を刺激するため、同様のリスクがあります」

 歯並びが悪い人、むし歯がある人は特に、がんの予防という観点からも歯科医院でのチェックが必要だ。

(文・中寺暁子)

※週刊朝日2022年8月12日号より