元朝日新聞記者でアフロヘア−がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

*  *  *

 先日の新聞で、共働き夫婦でも妻と夫の1日の家事・育児時間の差は約4時間半で、15年間ほぼ縮んでいないという調査結果が紹介されていた。結局は夫の側に「家事育児をしないのが『男らしさ』という意識があるのでは」と専門家。

 ま、さもありなん。私は独身子ナシゆえ育児は未経験だが、少なくとも家事に関しては「外で働いているから家事できない」ってことは全くないということを知っている。だって会社員時代はまあまあ長時間労働だったが他に誰もやらんとなれば自分でやった。逆に言えば、やらないのは「できない」のではなく、単にやる気がないだけである。私も実家にいたころは超ヒマだったのに母にほぼ任せきり。ハイやる気がなかったのです。母がやってくれるからラッキーと思っていたんですな。

 で、そこなんですよ。自分の身の回りのことを誰かがやってくれることって、本当にラッキーなのか。

 今にして思うと、就職してすぐ家を出たがゆえ仕方なく最低限の掃除洗濯料理をやり続けたことが、いかに今の自分を支えているかを痛感しない日はない。いや「支えている」なんて言葉じゃ全く不十分で、会社を離れ明日をも知れぬ不安定な身となってもニコニコ暮らしているのは100%家事ができるおかげである。だって家事っていわばセルフ「お・も・て・な・し」。家事さえできれば金があろうがなかろうが、快適な部屋でウマイものを食べ清潔なお気に入りの服を着て日々生きられるのだ。となれば世の中がどうひっくり返ろうが何を心配する必要がある? 家事とはいつでもどこでも自分の手で作り出せるベーシックインカムなのである。

 そんな宝を自ら手放すことが「ラッキー」とか、ましてや「男らしさ」などと言っている人が正直心配だ。念のため付け足しておけば、そもそも家事をしない人が「男らしい」なんて思ってる女性は今どき皆無で、つまりは100%モテない要素でしかなく、どう考えても百害あって一利なしのナゾの価値観であることを申し添えておく。

◎稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

※AERA 2022年11月21日号