米国株の投資信託を買うなら「S&P500」か「全米株式」の2択。結論は「どちらもほぼ同じ」だが、細かい違いを知るために徹底比較した。「AERA Money 2022秋冬号」(2022年11月11日発売)から抜粋してお届けする。

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 iDeCo(個人型確定拠出年金)でも、つみたてNISA同様に米国株のインデックス型投資信託(以下、投信)の人気は根強い。米国株の代表的な指数「S&P500」と「全米株式」で迷う人が多いが、組み入れ銘柄の顔ぶれは実のところ、ほとんど変わらない。

 まずS&P500の組み入れ銘柄トップ10は、アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、テスラ、アルファベットなどの巨大ハイテク企業が独占している。

 S&P500に連動する投信で人気が高いのは、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」だ。

 主要ネット証券のiDeCoではSBI証券、松井証券、マネックス証券で買える。auカブコム証券、楽天証券のiDeCoでは買えない。

 ちなみにiDeCo口座では買えないものの、信託報酬0.0938%の「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」も人気だ。

 S&P500と並んで支持されているのは、米国市場に上場する約4000社(米国上場企業のほぼすべて)に投資できる全米株式の投信だ。

 iDeCoで買えるのは「楽天・全米株式インデックス・ファンド」のみで、取り扱い証券会社も松井証券と楽天証券の2社に絞られる。

 組み入れ銘柄トップ10はS&P500とほぼ変わらないが、各銘柄の組み入れ比率はS&P500より小さい。その分、今後急成長するかもしれないダイヤモンドの原石のような企業も幅広く組み入れているのが特徴だ。

 さて、どちらが儲かりそうか。SMBC日興証券の山本憲将さんが超人気の2本の投資信託をそれぞれ月1万円ずつつみたてた場合の試算をしてくれた。

「過去10年間のパフォーマンスを見ると、S&P500の運用成績が全米株式を上回りました。10年間で、つみたてたお金は120万円です。

 これが『eMAXIS Slim米国株式(S&P500)』は291万2667円、『楽天・全米株式インデックス・ファンド』は276万3602円になっていました。

 ここ10年間でS&P500も全米株式も元本が2倍以上に増えていたわけですが、S&P500の成績のほうが率にして12.4%、金額にして15万円ほどいい結果になりました」

 全米株式は、指数そのものの算出開始が遅いため15年、20年での検証はできなかったが、長期になるとこの差が縮まっていくだろう。決して全米株式がS&P500より劣っているわけではない。

「S&P500にも不安要素はあります。米国株は、この5年間は特に調子がよかったのですが、2022年は物価高と金利上昇により20%以上も下落しています。

 日本のS&P500の投信は1ドル=140円台の円安に助けられて基準価額は下がっていませんが、『S&P500の指数自体』は好調ではないです。

 しばらく成長スピードが鈍化する恐れもある。幅広く米国株全体に分散投資する全米株式が、長期投資ではいい結果につながるかもしれません」

 今から20年前の2002年、頭角を現していたのはマイクロソフトだけ。まだiPhoneは発売されておらず、アップル株は急上昇前だった。グーグルは上場すらしていなかった。アマゾンのネット通販はあったが、「アマゾンプライム」の開始は2005年だ。

 そしてメタ・プラットフォームズ(フェイスブック)は2022年に株価が半値以下まで下落、全米の時価総額トップ10から脱落した。これから20年後に、こうした巨大企業の景色が激変している可能性は十分にある。

一番ラクで簡単な方法

 資産運用ユーチューバーの小林亮平さんにも、「S&P500と全米株式、どちらがいいか」というお題で取材した。小林さんの考え方は新鮮。ラクで単純なほうを選ぶ考え方だ。

「個人的にはニュースなどで値動きをチェックしやすいS&P500がいいかなと考えます。ただ、楽天証券を使っているならiDeCoもつみたてNISAも楽天証券で一元化したほうが簡単なので『楽天・全米株式インデックス・ファンド』でも全く問題ないと思います。

『S&P500か全米株式か』より、iDeCoとNISAの口座を同じ証券会社にして、運用する投信もどれか1本にそろえると、わかりやすいしラクに運用できると思います」

 なるほど。常に相場を見ているわけでもなし、どちらか1本に「えいっ」と決めて揃えたほうが、いろいろと簡単ということだ。初心者メインで情報発信をし続けている小林さんならではの考え方かもしれない。

◯山本憲将(やまもと・のりまさ)/SMBC日興証券 アセットマネジメント・保険マーケティング部長。1994年にSMBC日興証券(当時は日興證券)入社。資産運用畑を中心に28年にわたり世界の株式市場の浮沈を見てきた大ベテラン

◯小林亮平(こばやし・りょうへい)/資産運用ユーチューバー。三菱UFJ銀行で4年弱勤務し、独立。チャンネル登録者数48万人超のユーチューブ「バンクアカデミー」で初心者向け資産運用情報を配信

(構成/編集部・中島晶子、伊藤忍)

※『AERA Money 2022秋冬号』から抜粋