炭水化物は三大栄養素の一つだが、過剰に摂取し続けると高血糖を招いてしまう。一方で、制限しすぎると問題も。では、どう付きあえばいいのだろう。専門家に聞いたAERA2023年1月16日号の記事を紹介する。
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「減量したいなら、まずは炭水化物を減らすことを考えてください。一切とらないのもよくないですが、炭水化物は太る源ではあります」
こう話すのは、『糖尿病は炭水化物コントロールでよくなる!』などの著書があり、炭水化物と血糖値の関係に詳しい、宇部内科小児科医院の團茂樹院長だ。その上で、こうアドバイスする。
「年末年始に砂糖たっぷりのケーキやおせちを食べすぎたなら、いつものメニューに戻しましょう」
炭水化物は体内に取り込まれると、ブドウ糖や果糖、ガラクトースに分解され、吸収される。ブドウ糖は肝臓に到達すると、全身の臓器のエネルギー源になる。残りはグリコーゲンや中性脂肪として肝臓などに貯蓄される。果糖は過剰分が肝臓に中性脂肪として蓄積される。
また、健康な人の体では、ブドウ糖をとると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されて、血糖値の上昇を抑える。ただ、急激にブドウ糖をとりすぎると、インスリンの働きが追いつかず、血糖値が大きく上下する「血糖値スパイク」を引き起こしてしまうのだ。
■安定させるには
「血糖値を安定させるためのポイントは、炭水化物、特にブドウ糖を適正な量に減らすことです。要は、食べすぎに注意することです」
カロリー制限で短期的なダイエットはできるが、長期間にわたるダイエット、血糖値コントロールのためには炭水化物の食べすぎに注意すべきだという。
でも、血糖値の安定のために一体どれくらい食べていいのか。その指標がいくつかある。
「血糖値は、血液中のブドウ糖濃度です。炭水化物は体内でブドウ糖、果糖などに分解されて吸収されますが、血糖値を直接上げるのはブドウ糖です」
ブドウ糖を利用した指標の一つが、GI値だ。「食品を食べたときに体が吸収するブドウ糖の濃度」を指す。シドニー大学の研究で知られるようになったが、あくまで食品中のブドウ糖の割合を示すので、実際に食べる食品にどれだけの量が含まれているかわからない。
「その点で、GI値は現実的でない場合があります。例えばニンジンはGI値が高いので、減量したい人はあまり食べないように指導されることがありますが、実はニンジンのGI値は約4本分で計算されています。普通はニンジンをそんなに食べないですよね」
■新指標で計算したら
そこで、注目されているのがGL値だ。およそ1食あたりのブドウ糖換算量、もしくは食品100グラムあたりのブドウ糖換算量を表す。
「GL値はGI値より実践的ですが、誤解を招きやすいと思います」
そこで團院長は、GL値を手軽に計算する方法を編み出した。それが「wtGL(ウェイトジーエル)値」だ。
計算式は、
実際に食べる炭水化物の量×GI値=実際に食べる食品中のブドウ糖換算量
例えば、自分がこれから食べる白ご飯を計算する。各数字は成分表などを参考にするとより正確だが、ネットで手軽に検索した結果を使っても構わないという。
まず白ご飯の量を調べよう。計量すると確実だが、わからなければ目安で。厚生労働省の指標では、お茶碗1杯は150グラム。今回は150グラムとしよう。
次にネットで「食品成分表 白ご飯」と検索する。食品100グラムあたりの炭水化物含有量を調べる。37.1グラムだった。
この数字をもとに、白ご飯の炭水化物量を計算する。
実際に食べる量は150グラムなので、炭水化物量は、
(150グラム÷100グラム)×37.1グラム=55.65グラム
そこで、この炭水化物量がどれだけ血糖値を上げるのか計算する。GI値を掛け算して、ブドウ糖換算量を算出する。
ネットで「GI値 白ご飯」と調べると、75%と出た。
55.65グラム×0.75=41.7グラム
いま食べようとしている白ご飯のブドウ糖換算量(wtGL値)は、四捨五入して42グラムとわかる。
では一体、どれくらいの量を食べていいのか。
「太ってきた方、糖尿病が気になる方は、1食あたりのwtGL値が50グラム未満になるようにしましょう」
團院長によると、糖尿病専門医が人にブドウ糖やタンパク質、脂質を含む食品を食べてもらったときの血糖値の上がり方を測定した「テストミール負荷試験」の結果から、糖尿病予備軍はwtGL値50グラム以上から血糖値が急上昇しやすいと推察されるため。
「糖質の多いイモ類などを一緒にとると、wtGL値はさらに上がりますから、白ご飯は多くても、軽く1杯にとどめるべきです」
糖尿病の人、または積極的に減量したい人は「wtGL値を40グラム以下に減らそう」。
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年1月16日号より抜粋