放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「40代と50代の差」をテーマに送る。

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 今日は40歳を超えた団ジュニ世代にぜひ見ていただきたい映画がある。7月15日に公開された、ピクサーの「カーズ/クロスロード」(「カーズ3」)。「カーズ」を見たことなくても、車が擬人化されてて話すやつでしょ?くらいの知識はあると思う。今まで「カーズ」を見たことない人でも設定はすぐに理解できる。

 で、この「カーズ3」の内容がすごいのだ。40歳以上のサラリーマンが見たら、胸に突き刺さりまくると思う。

 主人公は赤い車、マックィーン。人気のベテランレーサー(車だけどね)マックィーンだが、今回、新世代ルーキー・ストームが登場して、レース中にその焦りから、大クラッシュを起こしてしまう。

 そこから、リハビリ的なことも含めて、マックィーンは新たな場所でトレーニングを行うことになるのだが。今回のテーマは「老い」である。

 人気も実力もあった主人公が、年を重ねて、その年を取ったことを認めていく物語なのだ。子供向けなのに、なんて設定なんだ。

 物語の中で主人公のマックィーンは、ある人物から言われるのだ。「老いと認めろ」と。この台詞が出たときには驚いた。

 言ってしまえば、「カーズ」のような物語はヒーローものである。そのヒーローが年老いたことを認めろと周りにせまられて、それを認め、新たな選択をしていくのだ。

 これ以上、物語の先は書かないが、想像を超えた展開になっていく。年老いた選手の復帰物語なんて簡単なものではなく、そこには大きな現実を受け入れた結果がある。

 40を過ぎ、40代中盤になってくると、10年前の自分たちのように、30代の経験も積んで体力もあり、力をつけてきた者たちがキラキラ見え始める。本当はキラキラ見えているのに、認められない人も多いのだ。そこを認めたところから、新たな成長があるんだと思う。

 映画「カーズ3」を見ると、人生の後半って、もしかしたら負けを認めることを学んでいくのかなと。人に対してだけじゃなく、年にも体力にも、自分にも。負けた自分を認めて、そこからどう踏み出すのか?

 負けを認めたときに周りになにを言ってあげられるのか?

 これが50代になってくると、より負けも認めやすいと思うんだけど、やっぱり40代ってまだまだ気持ちが若かったりするので、それをしにくいんですよね。

 20代前半のときに、車の免許を取ろうとして教習所に通い、ヘロヘロになってる僕に、20歳以上年上の先輩作家が言った。「おさむ、将来、絶対に仕事なんて減るから。仕事が減ったら時間ができる。だからな、今は免許とか無理に取らずに、そのときのために、取っておけよ。俺なんかさ、この年になって、大型二輪の免許とか取りに行ってさ。楽しいぞ〜」と教えてくれた先輩。残念ながら50代のときに亡くなってしまったのだが、あのときに、負けることを認めて、ギラギラしていた僕にあのアドバイスをくれたあの作家さんは、まさに「カーズ3」のマックィーン。今になってその格好良さが染みる。

※週刊朝日  2017年8月4日号