求人倍率が上昇し続け、今やバブル期並みの人手不足。来春入社に向けた採用活動も学生優位の「売り手市場」で、企業はあの手この手で新入社員獲得に動く。麻雀や焼き肉など、就職と一見関係ないことも採用の独自性のPR材料に。さて、御社の採用はどう変わりました?

「ランチを食べながら、お話を聞かせて頂けませんか」

 人材サービス会社ビズリーチ(東京都)の就活サイト「ニクリーチ」に学生が登録すると、こんなスカウトメールが企業から届く。

 企業側は学生のプロフィルをもとに、採用したい学生を焼き肉などの食事付きでスカウト。登録者の大学3年生、末松佳峰さん(20)は「ごちそうを食べながら、企業の人のお話を聞けるのがよい」と語る。

 6月時点で8万人超の学生が登録し、導入企業は300社超。ニュースアプリを運営するGunosy(グノシー=東京都)は2015年から新卒採用を始め、ニクリーチを使っている。「新卒採用のイメージが学生に定着しておらず、話題になる方法をとる必要があった」という。

 麻雀が強いと有利。そんな就職活動もある。

 人材サービス会社のカケハシ スカイソリューションズ(東京都)は、学生と採用担当者による麻雀大会を12年から開催。「麻雀採用」と銘打ち、論理的思考力や判断力の強い学生に出会える場を提供している。大会後は懇親会があり、学生の人柄にも触れられる。

 入賞者は企業が選考で優遇。不動産会社の那珂ハウジング(茨城県那珂市)は、この方式で昨年1人採用した。「不動産営業は、人より収入を多く得たいというハングリーな姿勢が不可欠。そんな人材を採るため、参加した」という。最後は社長との麻雀で採用を決定した。

 麻雀に限らず、強みを何か持つ学生は魅力的だ。不動産会社の東急リバブル(東京都)は、何らかの「ナンバー1」経験をアピールできる学生に、1次面接を免除している。

「就活応援 0円酒場」。こんな風変わりな採用の場もある。東京都内を中心に鶏料理居酒屋「てけてけ」などを展開するユナイテッド&コレクティブ(東京都)で、15年から始めた。

 お店でお酒や料理を無料で味わい、社員と学生が懇談して会社の実像を伝える。チキン南蛮など自慢のメニューを体感してもらうこともできる。

 かつて会社説明会の参加者は数人だったが、0円酒場を始めてから毎回30〜40人が参加する。うち約7割が選考の場に進む。採用担当の渡邉烈任さんは「内定者が昨年の3倍以上に増え、かなりの成果」という。今年は採用目標25人に対し、既に20人が内定している。

 なぜ、こうしたユニークな採用活動が広がるのか。

 リクルートグループ・就職みらい研究所の岡崎仁美所長は「新卒一括採用だけでは人材確保が難しく、他社にない方法やこれまでやらなかった方法をとる必要が出てきている」と話す。

 リクルートは、企業の採用予定や学生の就職意向をもとに、大卒求人倍率を調べている。18年3月卒は1.78倍。就職希望の学生数がここ数年ほぼ横ばいなのに対し、求人数は増える傾向だ。求人倍率が上がり、採用も多様化しているようだ。

 最近の学生は、自己PRや志望動機などの面接対策に余念がない。面接だと学生の本当の姿をつかめない。そんな思いから、人材サービス会社ビースタイル(東京都)は、面接を廃止した。

 代わりに、社員との面談やインターンなど、会社を知ってもらう場を数多く設ける。学生は平均7回会社を訪問。次の選考に進むかどうかは、企業側でなく学生側が判断する。最終的な採否はもちろん企業側が決めるが、「学生に選んでもらうことで、本当に働きたい人を採用できる」という。

 廃止を決めたきっかけの一つは、内定辞退率の高さだった。廃止前の15年度入社はほぼ半数が辞退した。廃止後の16年度入社は内定者7人に対し、辞退者ゼロ。17年度も23人に対し、1人にとどまる。

 記者が大学にいた約5年前、「就職先が決まらなければ、卒業するよりも留年を」との言葉をよく聞いた。当時は新卒でないと就職が難しいと言われたが、今は様変わりのようだ。

 NPO法人のキャリア解放区(東京都)は、企業と学生を集めて「就活アウトロー採用」を13年から実施している。通常の就職に違和感を覚え、就職せずに卒業した29歳以下の若者が集まる。合宿やワークショップに参加し、企業の採用担当者と「愛」「信頼」などのテーマで議論する。

 当初は参加企業名が明かされず、企業側も学生側も本音で意見を交わす。その後、参加企業名が示され、会社説明に入る。学生と企業が互いに関心を持てば、採用過程へと進んでいく。

 昨年はのべ70社、400人の学生が参加し、約80人が就職先を決めた。納富順一代表理事は「ものわかりのよい若者ばかり集めても限界、と考える企業が増えている」という。

 アウトロー採用の実績があるコンサルティング会社、アクセンチュア(東京都)はこう評価する。

「一見当たり前なことも、『なぜこんなことをするのか』と疑う目線があれば、新入社員でも上司に意見を言える。それが新しい価値を生むきっかけになる」

 食品メーカーのカルビー(東京都)は、新卒を毎年15人ほど採用するが、今年から既卒採用も始めた。大学・大学院卒業後5年以内が対象で、若干名を募集。これまでとは違う発想を持った多様な人材を確保するねらいという。

 就職後数年で退職して就職活動を新たに始める、「第二新卒」が近年増えた。

 第二新卒などの人材紹介サービスをするUZUZ(東京都)の川畑翔太郎専務は「中小やベンチャーは、新卒採用だけでは確保しにくい状況です」と話す。

 パワハラや長時間労働を理由に、就職しても短期間で退職する。こうした若者たちが第二新卒として新たな職場を探しており、企業側も採用で注目している。

 18歳人口は減少傾向で、就職活動の売り手市場はまだ続きそう。今後もユニークな採用は広がりそうだ。

※週刊朝日 2017年8月11日号