芸能人ら著名人にもファンが多い、人気SF映画「スター・ウォーズ」。一方、経済界の中にも、このシリーズによって育まれた想像力や哲学が、自身に大きな影響を与えたと語る人がいる。三菱地所の吉田淳一社長(59)だ。

「こいつが一番のお気に入りでね……。ほらっ」

 目の前でパン、と手をたたくと少しとぼけた電子音で応じるR2−D2。「スター・ウォーズ」全作に登場し、陰のヒーロー的な存在のドロイドだ。

 三菱地所は、東京の玄関口である丸の内エリア周辺の街づくり開発を担う。今年4月に就任した吉田社長、実はR2−D2グッズのコレクターで、約400種類もの関連グッズを所有しているという。

「汚れると困るから……」と、自宅のコレクション部屋に箱に入れたままの状態で大切に保管している。

「奥さんに捨てられたりしないんですか?」と尋ねると、

「それは命を削られるようなモンですよ」

 と本気で身震い。コレクションは妻も公認で、取材の日に身に着けていたR2−D2柄のネクタイも、妻にプレゼントされたものだという。

 学生時代から実に40年近く「スター・ウォーズ」愛を貫き、ついにはR2−D2を“相棒”と呼ぶ。写真撮影で「ぜひ、C−3POのポーズで!」とむちゃぶりすると、照れながらも「こんな感じ?」と気さくに応じてくれた。

 人事畑が長く、社員と一緒に野球観戦に出かけることもある親しみあふれるキャラクター。ドロイドへの愛ゆえなのか、何だか見た目もそっくりだ。

 吉田社長がそこまでR2−D2に惹かれるのは、かわいらしいフォルムだけではなく、その“生きざま”にある。

 実は冷静沈着、かつ勇猛果敢。飛び出す2本の腕(?)で機体を整備し、アナキンやルークを何度もピンチから救ってきた。

 アミダラ女王が共和国の首都・コルサントへ向かう途中、通商連合に狙撃され、シールドを破壊されたときのこと。4体のドロイドが船外で修復を試みるが、一体、また一体と狙撃され、宇宙のもくずになっていく。最後に残ったR2−D2が、敵の砲撃が近づく中で間一髪、シールドを復活させた。

「滅私奉公の精神ですよね。普段は縁の下の力持ちなんだけど、いざというときは勇敢で、自らの身を奉仕的に捧げられる。トップとして、普段は皆が働きやすい環境をつくりながら、何かあった時には戦いにも身を投じられるような覚悟でいないといけないな、と。この姿勢は、“相棒”から教えられたことです」

 大学生のとき、初めて「スター・ウォーズ」を見た。映画館を出た吉田青年の胸に強く刻まれたのは「かわいくて頼りになる、あのロボットが欲しい!」という思い。以来、街でおもちゃ屋を見つけると、ついR2−D2を探してしまう。

「普通は主人公に憧れるんでしょうけど、僕はルークがR2−D2と言葉を交わしているシーンを見て『何を話しているんだろう?』と、そればっかり気になって(笑)。人間とコミュニケーションできるなんて、今でいうAIロボットの先駆けですよね」

 三菱地所は、10年後の完成を目指して、東京駅前に高さ390メートルの複合ビルを建設中。でき上がれば、日本一高いビルになる。ビジネスパーソンのニーズが目まぐるしく変わる現代、10年後の人々の暮らしがどう変わり、何が必要とされているのか。街づくりに挑む想像力の原点が、ロボットに憧れ続けた青年時代に垣間見えた。(編集部・市岡ひかり)

※AERA 2017年12月25日号より抜粋