シリーズ累計75万部を超すベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』が、今春ドラマ化された。著者の田村耕太郎さんは、「アホ」な輩たちへの共通の対処法として、「人生は思い通りにならない」「そんなもんなんだ」という思うことが大切だと話す。そのうえで、アホに時間を空費させない5カ条を教えてくれた。



*  *  *
「人生は思い通りにならない」ことを前提に、この時期「ビジネスパーソンに効く5カ条」をあげてもらった。それは、「観察力を持つ」「地道に努力を積み重ねる」「自分を見失わない」「タイムコストを考える」「結果を出したら休む」の五つだ。

 観察力とは、ビジネスの対象(相手)を観察する力。自分を観察する力のことでもある。

「自分と向き合って深く自分を知っていく。そして、目的のために相手をしっかり観察する。それから戦略を立てます」

 ドラマで、相手の迷惑をちっとも気にしない 片岡信二(東幹久)に、谷村小太郎(知念侑李)は自分の魂が抜けたかのような「幽体離脱」をして相手の気をそらし、難を逃れた。

「つまり、『観察力』です。すっと霊魂のように自分から抜け出して、上下左右、八方から自分を見る。すると、こんなことで怒っているのかと冷静になれるし、恥ずかしくなってくるんです。ささいなことで口うるさくなっているとか、相手にしなくてもいい人を相手にしているとか。身をもってわかります。これができるようになるには時間はかかりますが、会社だけでなく日常生活でも使えますよ」

 二つ目の「地道に努力を積み重ねる」ことは、「観察力を持つ」とセットにして意識したい。

「この二つがほとんどの人にできていないんです。ビジネスの対象をしっかり観察して地道な努力を重ねると、すべての仕事がうまくいかなくても、うまくいく精度が高まります。何より、目標に向かって観察するなど努力を積み重ねるプロセス自体が、本当の充実感につながると思います。うまくいかないことが前提の世の中で、本当の充実感を得るためにこの方法はビジネスパーソンの皆さんにお伝えしたいですね」

 成功する人に共通するのが、「自分を見失わない」ことだという。逆に、失敗する人の共通点が「自分を見失う」こととも。「自分を見失わせるもの」とは、「無駄なプライド」だ。

「妙なプライドを持っている人は、ちょっとした成功体験を持っている場合がほとんどです。『自分はできるんだ』とか『これが自分に向いている仕事なんだ』とか思う人がいるかもしれないんですが、そうでもないんです。私自身で言えば、本書が売れてすごくうれしいんですが、これは本当にラッキーなこと。このような本をもう一度書けるかといったら、そこは調子に乗らない方がいいと思っています」

 成功体験でつけてしまったプライドが、等身大の自分を観察する目を曇らせてしまうのだ。

 さらに成功する人は「タイムコストを考える」と田村耕太郎さん。現在アメリカの上場企業の戦略アドバイザーを務める田村さんだが、その企業はベンチャーだけあって、創業者のリーダーシップとスピード感が半端ないと言う。

「今の成功者のほとんどは仕事を早く進めて失敗して学んでいます。早くやっていけば細かい失敗もしますが、そのプロセスは学んでいるので、早く成功する。誰も最初からパーフェクトを狙っていません。私の勝っている企業のイメージは、失敗したり嫌な奴がいたり仲が悪くなったりしてもとにかく次に行く。海外では失敗をなんとも思わない。やりながら変えていく。常に動いているイメージです。逆に、日本は成功してもとどまっている。失敗するとそこでウジウジしている。観察は大事ですが、実行しないと成功につながらない。完璧主義は危ないんです」

 一方、田村さんは仕事の効率を上げるために「休む」ことの重要性も説く。

「長時間労働は、過労死の前に必ず生産性が落ちます。頭を空っぽにする訓練も大事です。瞑想(めいそう)ですね。簡単にいえば、ノーマインド。例えば、富士山をぼーっと見るだけでもいい。おいしいものを食べる時もそうなるでしょう。矛盾しているかもしれませんが、行き詰まった時にちょっとでもノーマインドの状態を作ることはすごく必要。『結果を出したら休む』ことで、新たな意欲も湧くはずです」

 最後に、そう聞いても、自分が本当にやりたいことや気合を入れて取り組むべき「目的」が見つからないという人はどうすればいいのか。田村さんの言葉は明快だ。

「今目の前にあることは、自分の決断の連続の結果です。そうだとしたらやりたいことが見えなくても、無意識に好きなものを選んでいる可能性がある。やりたいことを見つけようとするのは、エネルギーも時間も無駄な気がしてなりません。それより今、目の前にあることを精いっぱいやるべきです。それは若くても50代になっても同じ。コツコツ努力して観察することを自分の喜びにしていくことに、ほとんどうまくいかない人生の醍醐味(だいごみ)があると思うんです」

(文中一部敬称略)(フリーランス記者・坂口さゆり)

※AERA 2019年6月3日号より抜粋