11月16日朝の、女優・沢尻エリカ容疑者の突然の逮捕劇によって、CM放送中止、楽曲出荷停止など各方面に大きな衝撃が走った。なかでも最も逮捕の影響が懸念されていたのが、斎藤道三の娘でのちに織田信長の正妻となる帰蝶(濃姫)役で出演予定だったNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」だ。21日夕方、NHKは帰蝶役を女優の川口春奈に変更すると発表した。



 川口は、ドラマ「ヒモメン」「イノセンス 冤罪弁護士」や映画「一週間フレンズ。」、「クノールカップスープ」のCMなどに出演する人気女優。沢尻より9歳若い24歳の女優の抜擢(ばってき)となった。

 沢尻容疑者は出演クレジットでは女性の一番手、事実上のヒロイン扱いだ。クランクインは6月で、すでに10話ぶんの撮影が進んでいたという。放送開始の1月まで時間がない中で時代劇初挑戦となる川口に白羽の矢が立った。

 この起用について、ドラマ評論家の吉田潮さんは、

「顔や名前も知られていて、実績もそれなりにある。『若い』という声もあがるかもしれませんが、相手役の染谷将太さんとの並びを考えると、しっくりくるのではないかとも感じます。出演者変更が発表されたということは放送も間に合うということでしょうから、いろいろよかったのではないでしょうか」

 織田信長役の染谷は27歳。出演者の変更で、帰蝶の役どころも変わってくるだろうか。吉田さんは言う。

「もともとNHKが沢尻容疑者でどんな帰蝶を目指していたか気になるところですね。川口春奈は『ヒモメン』でのコメディー系の演技がよかったので、相手を振り回すような帰蝶というのもよさそうな気がします」

 代役発表前日の20日にはNHKの木田幸紀放送総局長が定例会見の場で沢尻容疑者逮捕と「麒麟がくる」について、「出演者の方もスタッフも絶対口にしないですが、ショックだと思います」と語っていた。

 出演者に薬物検査の義務づけも必要なのではという問いに対して、

「所属事務所を通して事前に確認しているが、こういうことが起きている。さらに対応を検討していく必要がある」

 と答えた。

「これは相当ピリピリしていたことを裏づける発言だという気がします。ピエール瀧さんの時にはそんな発言はしていませんし今回の騒動の大きさが如実に表れているという気がします」

 と芸能評論家の三杉武さんは言う。

 放送中の大河ドラマ「いだてん」でも、出演者のピエール瀧=麻薬取締法違反(使用)罪で有罪判決=が逮捕され、急きょ代役をあてた。今回も剛力彩芽、のん、満島ひかり、蒼井優、貫地谷しほり、杏……沢尻容疑者の逮捕後から、大河の代役として、各マスコミやネット上ではさまざまな名前があがり、盛り上がりをみせていた。

 この騒動をポジティブにとらえるのもいいのではないかと、上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)は言う。

「『いだてん』の場合は放送開始後の騒動が続いたかたちですが、今回は役どころが大きかっただけに、放送開始後の逮捕だった場合、本当に取り返しのつかない事態に陥る可能性もありました」

 川口春奈をむかえ、「麒麟がくる」はリスタートする。碓井教授は言う。

「沢尻容疑者の騒動によって、次に放送される大河ドラマが『麒麟がくる』という作品で、日本のほとんどの人が、信長の正妻役が沢尻エリカから川口春奈という女優に代わったことを認識した。それは確かなんです。ここからは前向きにとらえ、制作陣と出演者たちみんなが、放送開始にむけて団結していけるのではないでしょうか」

 沢尻容疑者の捜査の進展とともに、大河ドラマ「麒麟がくる」の今後の撮影状況もおおいに気になる出来事となりそうだ。(本誌・太田サトル)

※週刊朝日  2019年12月6日号