対立抗争が激化している指定暴力団山口組と神戸山口組について、兵庫、愛知、岐阜、三重、大阪、京都6府県の公安委員会が暴力団対策法に基づき、活動を大幅に制限する「特定抗争指定暴力団」に指定してから半月あまり。定められた警戒区域で組員が5人以上で集まることや組事務所への出入り禁止など、厳しく活動を制限するものとなっている。指定期間は3カ月だが、延長もきる。



 違反した場合には、即座に警察が逮捕することができる。指定されて間もなくの2019年末、大阪・ミナミの歓楽街が騒然とした。暴力団風の男性が次々に、連行されていく。

 六代目山口組の「直参」と呼ばれる有力組長が警戒区域内で組員とともに集まっているという情報が警察に入ったのだ。

「この時は、組長の運転手が一緒にいたことを確認できず、4人だったので厳重注意で帰らせた。話し合える場所がないので、組長らも苦労しているようだった。特定抗争指定暴力団の効果だろう」(捜査関係者)

 六代目山口組と神戸山口組は毎年、年末に餅つき、元旦は初詣に行くのが恒例となっている。だが、特定抗争指定の直前とあって、どちらも大掛かりな行事は中止となった。そんな中、注目される動きがあった。

 六代目山口組ナンバー2、高山清司若頭の出身母体である弘道会系高山組が名古屋市から三重県内に事務所を移転したというのだ。

 移転したのは「警戒区域」外の場所とみられる。

「特定抗争指定逃れの、偽装で事務所を移転したのではないか」(捜査関係者)と警戒を強めている。六代目山口組の関係者はこう話す。

「山口組のシンボルでもある、神戸市灘区の本部が特定抗争指定で使用禁止。何かあれば少人数の会合のために、名古屋へ行かなければならない。抗争中なので、移動にもボディーガードの数を増やすなど、気を使います。『名古屋に本部が移ってしまった』とぼやく組長もいますね。5人以上が集まるとまずいということで、新幹線に乗るにも気を遣う。同じ列車で鉢合わせすると、特定抗争指定に引っかかってまずいので、本部への報告を求められる」

 昨年11月、幹部の組長が六代目山口組の関係者に射殺されるなど、劣勢が続いていた神戸山口組。組長射殺事件当時は、臨時で幹部が集まるなど会合を重ねていたが、年が明けてからは、会合はほとんどやっていないとされる。

「特定抗争指定で、六代目山口組の襲撃など攻勢が止まったのは事実。神戸山口組も一息ついているように見える。だが、神戸山口組の中核組織で名門、山健組がこのまま、黙っているとは考えられない。ひそかに反撃のチャンスを狙って動いている連中が名古屋入りしているという情報もあるので警戒を強めている」(前出の捜査関係者)

 そして2017年4月に神戸山口組から分裂した任侠山口組は組名を「絆會」と変更したことを発表。こちらも、声明で<抗争事件の情勢を鑑みて(中略)代紋、組織名を「絆會」と改めた>としている。

 元山口組顧問弁護士の山之内幸夫氏は近著「山口組の平成史」(ちくま新書)で<ヤクザが「天国と地獄」を味わった平成>令和になっても<一番の課題は暴力団排除の環境をどう生き抜くか>と記す。そして特定抗争指定についてはこうコメントした。

「指定後、暴力沙汰などの力で抑え込む動きは止まった。今後、六代目山口組側は神戸山口組の有力な組長を切り崩し、取り込もうとするのではないか。事実、神戸山口組の2つの組が直参組長となっている。だが、一度火が付いた抗争がそう簡単に終わるとは思えない」

 落ち着いたようにみえた「抗争」。だが、1月20日には、神戸市の会社で銃弾の跡が発見された。近くには拳銃が置かれていた。

「神戸山口組幹部と関係が深いという情報もあり、捜査している」(前出の捜査関係者)

 予断を許さない状況が続いている。(本誌取材班)

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