漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が「私の家政夫ナギサさん」(TBS系 火曜22:00〜)をウォッチした。


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 製薬会社のMR(医薬情報担当者)の相原メイ(多部未華子)は、仕事は出来るのに、家事能力ゼロの28歳独身女子。そんな彼女の元にスーパー家政夫おじさん・鴫野(しぎの)ナギサ(大森南朋)がやって来る。

 なんつーか最近のドラマのヒロインは、恋愛に対して淡泊だ。先日再放送していた「やまとなでしこ」(フジテレビ系)のヒロイン・桜子(松嶋菜々子)のアグレッシブ恋愛狩猟民族っぷりに比べたら、ウブなことこの上ない。

 いい男を捕まえるために努力を惜しまなかった女たち。そんな争いに疲れ果て、もうジャージーで縁側に寝っ転がってビールぐびぐび飲んだらいいじゃーんと開き直ったアジの開き、干物女・蛍(綾瀬はるか)が登場したのが「ホタルノヒカリ」(日本テレビ系)だ。

 本作のヒロイン・メイは干物女と言うほど開き直っちゃいない。部屋はそこそこ散らかっているけど、それは家にも仕事を持ち帰っているせい。真面目か。干物は干物でも真空パックの干物的な無菌状態。

 母・美登里(草刈民代)は娘に仕事とプライベートの両立を説き、「あなたなら出来る」と呪いをかける。スーパーの総菜コーナーでポテサラを手にした女性に、「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」とか言ったどこぞの高齢男性のような「あなたなら」「母親なら」「女なら」という呪い。

 そんな呪いを解くのが家政夫のおじさんだ。欲しいのは彼氏じゃない、夫でもない。疲れ果て家に帰って来たら、部屋はきれいに整頓され、洗濯物はたたまれ、おいしいご飯が出来上がっている。夢だ、夢です。

 さらにおじさんは彼女に告げる。「メイさん、あなたは本当に頑張っています。一人で全部を頑張らなくてもいいと思います」

 これぞ今どきの女子が一番欲しい言葉じゃないか。家事をすべてやってくれて、執事のようにジェントルで、お母さんのように優しいおじさん。ま、この世にいるわけないですね。

 でもなぜおじさんなのか。家政婦のおばさんではダメだったのか。そうね、疲れ果て家に帰って来たら、「見た!」(市原悦子)、「ミタ」(松嶋菜々子)、「ミタゾノ(おばさん?)」(松岡昌宏)がドアの陰からのぞいている。そんなシチュエーションを想像したらとても心が休まらなかったので、どうかおじさんでお願いします。

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など

※週刊朝日  2020年8月7日号