「真正面にレインボーブリッジが見えて素晴らしい。夜みたら選手は東京と恋に落ちる」

 11月17日に東京五輪・パラリンピックの選手村を視察した国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、こう感想を漏らしたという。来日中は菅義偉首相や五輪組織委員会の森喜朗会長、東京都の小池百合子知事らと会談。開催に向けて連携を確認した。

 バッハ会長も高く評価した選手村。都の払い下げ価格をめぐり新たな疑問が浮かび上がった。支払い方法が想定と違い、価格が約100億円も安くなった可能性がある。

 選手村用地は、東京・晴海にある約13万4千平方メートルの都有地。都は2016年12月、公募に応じた大手11社による企業グループに売却する契約を結んだ。五輪後はマンションに改修するなどし、分譲や賃貸にしていく計画だ。

 払い下げ価格は129億6千万円。都が開発業者の募集前、日本不動産研究所がまとめた調査報告書をもとに決めたとされるが、これが約230億円になるというのだ。

 報告書では、契約時に全額を支払うことを前提に価格を算定。しかし実際は、都と開発業者が契約を結んだ時点で総額の1割分(12億9600万円)を、マンションの改修などの完成後に残りの9割分(116億6400万円)を、それぞれ払うことになっていた。

 前提が変わったのであれば、価格の算定も変わりかねない。もとになった算定式に従うと、後払いの場合は評価額が上昇。もともと24年3月末を期限としているため、残り9割分は220億円前後となるという。五輪の延期でさらに後ろ倒しになりそうだ。

 都の都市整備局にこうした疑問をたずねると、「日本不動産研究所の調査報告書による評価額や実際の契約金額はあくまでその時点で見積もったもの。『当初の想定と実際は異なる』と言われるが、『条件が変わった』ということとも違うのではないか。ほかの要素もあるし、それだけで契約しているわけではない」(担当者)と説明した。

 企業グループの広報窓口となっている三井不動産は「都の契約にかかわることですので、詳細はお答えできません」とする。

 選手村用地をめぐっては、周辺の土地価格より不当に安く売却する契約を結んだとして都民らが17年、都を相手取り、前知事らに適正価格との差額の賠償を求める訴訟を起こした。裁判は続いており、12月8日には弁論が開かれる。

 さらには、本誌が8月7日号で報じた中央区の開発協力金に関する疑惑、今回の支払い方法をめぐる算定見直し──。訴訟に関わる不動産鑑定士のグループは、選手村用地の適正価格が「1611億1800万円」だと主張し、12分の1に“ディスカウント”されたとする。業界団体の日本不動産鑑定士協会連合会に対し、日本不動産研究所の鑑定士の懲戒請求をした。

 バッハ会長はこうした状況をどう思うのか。それでも、恋に落ちる?(本誌・池田正史)

※週刊朝日  2020年12月4日号