地震大国、日本。コロナ禍のいま大地震が襲えば、混乱は必至だ。東北大学災害科学国際研究所の遠田晋次教授が話す。



「ここ2年ほどの日本列島は比較的静かで、広範囲にわたり人や建物に被害が出る大地震はなかった。地震の科学的メカニズムには不明な点が多いですが、巨大地震の前は静かだという見方は根強くある。東日本大震災の前も2年ほどはあまり大きな地震がなかった。ですから、21年は要注意とみることもできます」

 20年秋以降、東北、北陸、伊豆諸島などで震度5以上の地震が続いているのも気になる。何かの予兆なのか。遠田教授はこう続ける。

「茨城や岩手、青森の地震は、広い意味で東日本大震災の余震と考えられます。巨大なプレートの境界がずれて起きた地震ですが、当時と同じ場所で再び大地震が起きるわけではなく、ひずみを解放した部分の周辺の地域にしわ寄せがいっていると考えられます」

 こうした「しわ寄せ」は、日本列島を支えるプレート間に新たなひずみをもたらし、日本列島は地震の「活発期」に入っているという指摘もある。

 気になるのは、太平洋沿岸に大きな被害をもたらすと予測される南海トラフ巨大地震だ。内閣府は地震対策の費用として21年度政府予算案に1億1700万円を計上しており、警戒ぶりがうかがえる。名古屋大学地震火山研究センターの山岡耕春教授はこう語る。

「南海トラフ地震は地震本部が今後30年以内にマグニチュード8〜9クラスが発生する確率が70〜80%と発表している。前回の発生からすでに70年以上経っているので、次に備えておく必要があると思います」

 前出の遠田教授もこう指摘する。

「南海トラフ地震は平均百数十年ごとに繰り返し起きていますが、間隔にはゆらぎがある。1944年の昭和東南海地震と46年の昭和南海地震が最後の南海トラフ地震ですが、過去の南海トラフ地震に比べると小規模だったため放出したエネルギーも少ない。そのため、次は100年を待たずして来るだろうという説が支持されている。早ければ、2020年代かもしれない」

 ひとたび発生すれば揺れや津波による被害に加え、富士山にも噴火の恐れがあるという。富士山が最後に噴火したのは江戸時代の南海トラフ地震である宝永地震(1707年)の49日後だった。

「火山と地震活動はリンクしていて、周辺で巨大な地殻変動があると噴火しやすくなる。南海トラフ地震が富士山の噴火を誘発したと考えられます」(遠田教授)

 立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学特任教授は、富士山噴火についてこう話す。

「南海トラフ地震はフィリピン海プレートが下に潜り込んだ影響でユーラシアプレートが跳ね上がって起きますが、富士山は両プレートの境界線近くにある。ユーラシアプレートのひずみはかなり溜まっており、現在、南海トラフ地震やそれに連動した富士山の噴火はいつあってもおかしくありません」

 高橋特任教授は茨城から東京、沖縄を経て台湾、フィリピンまで連動した大地震「スーパー南海地震」が起きる可能性もあると指摘する。その時、首都圏はどうなるのか。

「南海トラフが他のプレートにも影響を及ぼし、東京湾口の相模トラフでも巨大地震が発生します。津波が首都圏にやってきて、関東平野は水浸しになる。東京は埋め立て地で標高1メートル程度の町も珍しくありませんから、銀座やお台場、東京駅や品川駅などは水没するでしょう」(高橋特任教授)

 人が密集する避難所で新型コロナの感染が拡大するなど、新たなパニックも予想される。どう行動したらいいのか。

「どこかへ逃げるというより、それぞれの場所で過ごす方策を普段から考えておいたほうがいいでしょうね。ライフラインの電気、ガス、水道は止まる前提で、それでも1〜2日は家で過ごせるよう、水や食べ物は備蓄しておいたほうがいいでしょう」(前出の山岡教授)

 それでも、被害が大きいときには迷わず避難するのが正解のようだ。

「建物に少しでもダメージが出たり、家の家具などがグシャグシャになったりする状況なら、外に出たほうがいい。避難所は密にはなりますが、まずは倒壊などから命を守るほうを優先し、避難所へ向かうのが基本だと思います」(遠田教授)

(本誌・上田耕司)

※週刊朝日  2021年1月15日号