親子の受験といわれる「中学受験」。関東圏で入試が始まり、本格シーズンを迎えました。経験したママライターが、この時期特有の悩みや疑問についてつづります。今回は、直前期の子どものストレスについて。


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 中学受験で親は、食事や風邪予防などの健康管理はもちろん、塾や模試会場への送迎、願書作りなど、サポートをすることがたくさんあります。勉強面でも志望校の出題傾向を探り、わが子のウィークポイントを把握、あちこちから似たような問題を探してプリントにまとめる作業までこなしている親も少なくないでしょう。

 これらもたいへんですが、一番の悩みどころは、大事な時期なのに、子どもの気持ちが見えなくなって距離を感じてしまうことかもしれません。それでなくても早い子であれば反抗期がちょうど始まっているころ。親の言うことにも素直に従わず、ふてくされたり、突っかかってきたり……。親子喧嘩をするのも疲れますが、それ以上に、会話が少なくなったり、情緒不安定になったりする様子を見るのは、親にとってはしんどいものです。
 
 受験直前になれば、どんなタイプの子どもでも、ストレスを感じているはずです。成績がいい子でも、トップ校にいけなかったら今までの努力が無駄になるのではないかという不安はあるでしょうし、成績が悪い子なら、自分なりに頑張っているのに、やることは山積みで押しつぶされそうな気持ちになっているかもしれません。
 
 わが子は、それまで学校からまっすぐ帰宅していたのが、徐々に帰りが遅くなり、塾に遅刻して行くようになりました。「学芸会の準備で遅くなった」「学校を休んだ友達にプリントを届けていた」などさまざまな理由をつけていましたが、あまりにも続くので不審に思い、学校に問い合わせたところ、そのような事実はなく、友達の家に立ち寄って、ゲームをしてから家に帰って来ていたようです。きっと、勉強しても模試の結果に反映されず、モチベーションが下がり、ストレスの発散場所を自然と探していたのかもしれません。

 実際、私は周囲の親たちから、子どものストレスを心配する話を聞きました。

・明け方、子どもの部屋を覗いたら、布団の中でゲームをしていた。その場でやめさせたが、学校の保健室で寝ていたと先生から報告された。
・子どもの筆箱の中身を見たら鉛筆がバキバキに折られているのを見て怖くなった。
・故意なのかわからないが、友だちのテキストを持ち帰ってきていた。
・問題を解いている際に、髪の毛をいじる癖がひどくなり、ハゲができてしまった。
・子どもが学校に行っている間に部屋を掃除したら、大量のおにぎりを食べたあとのゴミが出てきて、ストレス発散で食べていたのかと思ったら涙が出た。

 また、学校の先生から「テストの答案用紙の裏側に、志望校名がびっしり書かれていて、その合間に『死ね』という言葉がいくつもあり、カウンセラーに相談するように勧めた」とか「志望校や塾の話題を、友だち同士ではしないように指導している。それによって、ライバル心が生まれ、足の引っ張り合いなどが起こった事例があったから」といった話をきいたこともあります。

 このように子どもの変化を目にして、戸惑い、どう向き合っていいのか頭を抱えている親も多いと思います。

 スクールカウンセラーをしている臨床心理士によると、子どものストレスは、眠りや食欲に変化があるようなら注意が必要だそうです。そうした場合は受験直前でも家は完全な休息の場にして、勉強をしない日を作ってもいいとのこと。また、ペットを飼ったことによって心が落ち着いたという例もあるそうです。
  
 わが家では、「親から言われたことはあえてやらない!」という反抗期真っただ中だったため、親子喧嘩が絶えませんでした。そこで、受験経験者の姉に、親ではない立場から言葉がけをお願いしました。2人の会話はこんな感じです。

姉「勉強どう?」 
本人「別に〜〜」 
姉「中学入ったら楽しいよ。ディズニーランドだって大人なしで行けちゃうからね。今はとにかく頑張るしかない。あともうちょっとしたら天国だよ」

 また別の日には、 

姉「この動画一緒に見る?」 
本人「見たい、見たい」 
姉「でも、これ見終わったら、勉強やらないとまずいよ。この時間、みんなは勉強してるからね」 
本人「わかった」

 といったように、にんじんをぶら下げて心をリラックスさせて、やる気を引き出してくれたように思います。

 遊びたい盛りに勉強していること自体がストレスだとも考えられますが、中学受験が悪いとまではいいきれません。そもそも、わが子の将来を思って始めた中学受験のはずです。自分を律して試練を乗り越え、目標を達成しようとするわけだから、中学受験はいい鍛錬の場ともいえます。ある程度の負荷がかかることは人間を成長させます。

 いま重要なのは、頑張っている子どもに対して、「親はわかっているよ」と伝えてあげることでしょう。より勉強のできる子どもたちを目指し、わが子を叱咤激励するのは、この時期は必要ないかもしれません。なぜなら、もう、その子なりに頑張ってはいるからです。

「受験をしない子たちは、今も学校の帰りに遊んでいるよね。ゲームもしているよね。テレビも見放題だよね。でもそれをしないで勉強しているのは、よく考えるとすごいことだよ」

 努力を認めてくれている、と分かることで心の重荷が少し軽くなるのではないでしょうか。

 中学受験は親子二人三脚の受験とも言われてます。中学受験という険しい山に挑む子どもと伴走するように、ときに背中を押したり、一緒に休憩したりして、子どもが転ばないように親は見守るしかないのだと思います。
(取材・文/スローマリッジ取材班 鶴島よしみ)