漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「死との約束」(フジテレビ系 3月6日21:00〜)をウォッチした。



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「刑事コロンボ」な古畑任三郎が田村正和なら、「名探偵ポアロ」な勝呂武尊は野村萬斎だ。

 アガサ・クリスティー原作のポアロシリーズを三谷幸喜脚本でドラマ化した第3弾。クセの強い萬斎のセリフ回しは「おやおや○○さん、今日はどこへ行くんですかぁ?」てなナレーション・故滝口順平に空耳。ついつい「ぶらり途中ポアロの旅」気分になりがちだ。

 そんなポアロがぶらりと訪れた熊野古道で事件が発生。古道散策バスツアーに同行した富豪一家・本堂家の夫人(松坂慶子)が殺されたのだ。

 家族を強権的に支配していた本堂夫人、前妻の息子や娘たち、複雑な人間関係。神秘的な気がただよう熊野の景色。勝呂の古い知り合いで女性代議士の上杉(鈴木京香)をはじめ、数人が目撃した天狗(てんぐ)の姿。

 時代を昭和30年に設定。原作のペトラ遺跡を熊野古道、アラブの召使を天狗に変換したらアラ不思議。アガサが一気に横溝正史色に染まる。

「犯人は天狗だったのかー!」。前のめりに叫ぶ警察署長・川張(阿南健治)はまさに、映画の金田一耕助シリーズに出てくる等々力警部(加藤武)のオマージュだ。

 でもね、そうそうこれこれ金田一映画ってなった瞬間、犯人もそうそうこの人ってわかっちゃう。なぜなら「犬神家の一族」の高峰三枝子、「悪魔の手毬唄」の岸恵子、「獄門島」の司葉子。

 金田一映画といえば、犯人は大女優。出てきた瞬間、おっと思わせる大女優。本作の場合、松坂慶子が殺された時点で犯人は鈴木京香に決定だ。

 そして三谷幸喜、大女優にとんでもないことをやらせる。古道散策中、京香がふざけて萬斎を崖下へドーン→その後京香、天狗に早着替え→天狗走る→夫人を殺害→天狗走る→早着替え→京香、崖下の萬斎を救助。

 もうね、京香天狗が熊野の山を走る走る。後から見返すと、ホテルのロビーにちゃんと「貸衣装あります」と、天狗の装束が飾られている。万が一目撃された時のために天狗姿? むしろよけいに目立ちそうだよ、天狗。これ、三谷さんが大女優に天狗のお面をかぶせたかっただけでは。

 ぜひいつかこのシリーズでやってほしいのは「ナイル殺人事件」。そう、ナイル川ならぬ木曽川下り。ちょっと豪華客船が下るの無理ですか?

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など

※週刊朝日  2021年3月26日号