銀座の高級クラブのナンバーワンとなった後、日本水商売協会を立ち上げ、コロナ禍の今も奮闘中の甲賀香織さん。銀座のママたちとも交流を持つ、作家・林真理子さんがその活動を伺いました。

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林:水商売協会の具体的な仕事としては、どんなことをされてるんですか。

甲賀:私、コンサルティング会社で専門だったのが人材教育だったんです。「見て盗め」の水商売も、ノウハウを伝えるような場をつくることが必要じゃないかと思って、「お水大学」という水商売の教育機関をつくりました。ホスト、ホステスさんの一人ひとりの能力の開発と向上を目的としています。これが協会の前身となる事業です。

林:へぇ〜、おもしろい。お客さんへのメールの一斉送信とか、いろんなことをレクチャーしてるんでしょう?

甲賀:はい。メールの一斉送信も、当時そういう発想がこの業界にはなくて、段ボールいっぱいにためた名刺を、「このお客さんはもう来ないから」って捨ててしまってたんですね。でも、お名刺をくださったお客さまは、自らお名刺をくださっているわけなので、営業されることを半分期待しているわけですよ。なのに捨ててしまうのはある意味失礼だし、かといって何千件も一件一件連絡するのは現実的ではない。そこで、コアなお客さまは個別に対応するにしても、その他大勢の主にノーリアクションのお客さまに対する営業を、システムの力を借りてやっていただくという事業をしています。

林:なるほど。業界にとっては画期的なことですよね。

甲賀:コロナ禍で停滞気味でしたが、業界活性化への動きもそろそろ始めたいと思っていて、「NIGHT QUEENグランプリ」という、夜の皆さんのミスコンのようなものを11月に開催する予定なんです。ちなみに私、いま第4子を妊娠中で……。

林:あっ、そうなんですか。おめでとうございます。4人目とは、たのもしいですね。予定日はいつなんですか。

甲賀:9月なんです。なので、私の勝手な都合もあり、11月に決めたんですけど、イベントを通して、業界の皆さんの仕事に対する熱い思いや、ユニークな方々のご紹介など明るい部分を発信していけたらいいなと思っています。

林:今もホステスさんは、日経新聞とか「会社四季報」とかを読んでるんですか。

甲賀:残念ながら、そういう余裕がある方は少なくなったかもしれないですね。でも、社会情勢をちゃんと把握している人のほうが、ホステスとして売れることは間違いないので、そういう啓蒙活動も、協会として重要視しています。

林:銀座のクラブのホステスさんって、あれだけの着物やドレスが必要なんだから、誰か男の人の援助も必要なんじゃないかと思いますけど、そういうところにも切り込んで、男女間の曖昧なところをシステム化していくというのは難しいですか。

甲賀:愛人的な倫理観というか、性に対する概念というか、そこは人それぞれで、何が正解かを断言できないし、断言するものでもないと思うんですね。私自身は性に対して潔癖なので、「お金のために」というのは一ミリもなかったですけど、愛着や愛情が絡んで、かつ「お金をもらえるなら」みたいな考えの方もいらっしゃると思うんです。たとえば銀座でお店を開くとなると、保証金だけでも家賃の6カ月から1年分を現金で納めなきゃいけない。内装も豪華にしなくてはいけない。それは億のお金になったりするんですね。

林:えっ! そんなに!

甲賀:どんな売れっ子さんでも、億のお金を貯蓄してる方はそんなにいないと思うし、それにプラス、人集めとかにお金が必要なわけです。企業であれば融資を受けられますけど、クラブでそれを受けることは、ほぼ無理。そうなると“パパ”の存在が必要になったりして、いろんな問題が複雑にからみ合ってるんですね。

林:銀座のクラブって、きれいな人が横にすわってくれるけど、それ以上のことは何もしてくれなくて、それでいてすごく高いお金を取るから、外国人はみんな不思議がりますよね。女の人はお金をもらうためにきれいにしなきゃいけないし、話術も身につけなきゃいけないという非常に特殊な形態ですよね。

甲賀:そうですね。銀座のお店にいらっしゃるお客さま方は、たいてい妻子持ちだったり、会社でもそれなりの立場がおありだと思うので、素人さんに手を出したらいろいろと面倒くさいことが生じがちなんですけど、「銀座のクラブのホステス」というプロの皆さんだと安心して遊べるので、その意味での高単価なのかなと思います。

林:そうですよね。

甲賀:あと、表面には見えない心の上でのいろんなやりとりとか、営業時間外のやりとりとかもあって初めて単価が成立するんです。たとえば土日も積極的にゴルフに行ったりとか、ランチをご一緒したりとか。

林:私も、「グレ」(銀座の高級クラブ)でママをやったことがあるんですよ。東日本大震災のボランティアで。何人かの女性と日替わりで。

甲賀:はい、存じ上げています。

林:あのとき、着物を着て支度をして、夕方に銀座を歩いてると黒服の男性に「ママ、おはようございます」とか言われて、うれしさがジワッとこみ上げてきたなあ。「こんな天職はない。一生やりたい」と思っちゃった(笑)。

甲賀:うふふふ。

林:20時からは本来のお客さんが来るから、私たちのボランティア営業は20時まで、お客さんからは1人2万円と決めて。それで1カ月で1600万円集まって、それを四つの被災地に分けたんです。

甲賀:すごいです。いま林さんが「ママをやりたい」と言ったら、たぶんどこのお店も手を挙げると思いますよ。どうですか、「みんなコロナ対策を頑張ってるんだよ」というアピールも兼ねて。ぜひやっていただきたいです。

林:やりたい! あの銀座の夢をもう一度(笑)。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

甲賀香織(こうが・かおり)/1980年、埼玉県生まれ。2002年、青山学院大学文学部卒業。ベースボール・マガジン社に入社後、翌年に出産。米の通販事業を立ち上げる。06年、ベンチャー・リンクに入社。カーブスジャパンに出向し、創業期のスーパーバイザーとして600店舗を支援。08年、水商売の現場経験のため銀座「ル・ジャルダン」に入店。10年、True Heartを設立。11年、「お水大学」を創設。18年、一般社団法人日本水商売協会を設立。3児の母で、現在第4子を妊娠中。趣味は運動と料理。

※週刊朝日  2021年4月23日号より抜粋

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