土石流で20人程度の安否が分からなくなるなど、大きな被害が確認された静岡県熱海市。熱海市などによると、7月3日現在、女性2人の死亡が確認され、伊豆山地区に住む80人が避難し、100から300世帯が土石流に家屋が流されるなどの被害にあったという。



 こうした災害に遭遇した場合、どうすれば、いいのか?生命保険には手厚く加入している日本人だが、水災への備えは意外に薄い。保険の種類や対象、補償されるか否かなど気になる点をプロに聞いた。AERA 2019年11月18日号に掲載されたQ&Aを紹介する。

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Q1:保険の種類
雨や風の被害から家を守るのは何保険?

 補償内容の中に「風災」と「水災」が含まれた火災保険、が正解だ。水災だけ、風災だけ、という形での加入はできない。住宅を購入する際に加入する火災保険の基礎補償は「火災・落雷・爆発」だが、ここに風災、水災、漏水による水濡れ、盗難などを追加した複数のプランから選ぶのが一般的だ。

 補償内容が充実したぶん、保険料もアップする。どこまで補償の範囲を広げるか、あなたが支払える保険料との兼ね合いで決めることになる。なお、火災保険の保険証券に記載されている「保険種類」が、以前は各保険会社の共通商品となっていた「住宅総合保険」であれば、補償金額は限定的だが水災補償が含まれている。「住宅火災保険」であれば、水災補償は含まれていない。保険証券を捜して、自宅の補償内容を確認することから始めよう。

Q2:保険の対象
トイレや台所は「建物」?「家財」?

 火災保険の加入時は「建物」だけにかけるか、「家財」まで対象にするかを最初に決める。建物は、戸建てなら家本体、マンションなら部屋そのもの、扉や窓などの建具、床。門、塀、物置、車庫も建物扱いだ。

 家財は、ベッドなどの家具、テレビなどの家電、衣類、建物内に収容されている自転車、125CC以下の原動機付き自転車など。30万円を超える貴金属や書画、骨董なども契約時に明記すれば補償される。

 疑問に思ったのはエアコン。建物扱いなのだ。トイレや台所も建物扱い。その基準は「建物の中にあって、しかも動かせないもの」(損害保険ジャパン日本興亜/保険金サービス企画部の寺澤匡人さん)だという。ボルトやナット、ネジで固定されている電気、ガス、冷暖房設備も、損保の世界では建物だ。

「一戸建ての屋根をつまみ、くるっとひっくり返したときに落ちないものが建物、落ちるものが家財と判断してみましょう」(同)

Q3:補償される水災
どんな水災、風災なら保険金が下りる?

 水災の代表的な原因は洪水、高潮、土砂崩れ。建物なら「集中豪雨による土砂崩れで建物が泥まみれになった」「河川の氾濫で浸水」「大雨で高潮が発生、海水が防波堤を越えて建物が水浸し」などだ。家財なら「床上浸水により戸建て1階の家電や家具が使えなくなった」。

 風災で多いのは、「突風により屋根の瓦が飛ばされた」。建物に保険をかけていれば、瓦の修理費用などが下りる。「屋根瓦が飛ばされたことにより穴が開き、屋外の危険物や雨が室内に侵入。部屋がぐちゃぐちゃになった」場合、家財に保険をかけていれば補償される。

Q4:補償されない水災
豪雨で車が水没しても補償される?

 車に関しては火災保険の対象外。自動車保険の「車両保険」で補償される。

 いかにも補償されそうなのにNGなのは、大雨による雨漏りで家具が台無しになっても、家財保険で補償されないという事例。これはなぜ?

「雨漏りは、屋根まわりの経年劣化により起こることが多いものです。水災の保険、風災の保険は、あくまで『自然災害による突発的な被害に備えるもの』なので、大雨が降って、もともと屋根のコンディションが悪かったところがゆるみ、雨漏りとなっても補償の対象外になります」(寺澤さん)

 築20年以上経過した戸建ての屋根の点検・補修を怠らないのは、災害国日本において基本の自衛策といえそうだ。

Q5:よく似た補償
通常の水災補償と水濡れ補償の違いは?

 上の部屋の排水管が壊れて部屋が水浸しになった場合、水災の保険では補償されず、「水濡れ補償」の契約が必要な場合がある。通常の水災と水濡れはどう違うのか。

 「水の被害が上から来るか、下から来るかで考えてみてください。排水管の故障は水が上から降ってきます。床上浸水は大雨により水が下から上に増えていきますよね」(寺澤さん)

 屋根瓦が飛んだときは“上からの水の被害”では?

「それは風災の区分になるんです。大雨が部屋に入ってきたのは突風で瓦が飛んだことによるものなので、水災ではなく風災扱い。損害保険は被災の『原因』で種類が決まります」(同)

(経済ジャーナリスト・伊藤忍、編集部・中島晶子)

※AERA 2019年11月18日号より抜粋