新型コロナウイルスで、無症状でも安心はできない。米国の約200万人の調査で、無症状者の2割近くが後遺症を体験していた。ノルウェーの調査では軽症の多い若者でも5割に後遺症があった。AERA 2021年7月12日号から。



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 新型コロナウイルス感染症の、長引く後遺症「Long COVID」が問題になっている。国内外の調査で、無症状や軽症、若くても後遺症が起きることや、重症だった場合には肺の機能の低下が長く続くことなどがわかってきた。

 米国のNPO法人「フェア・ヘルス」は6月、米国内の民間医療保険会社への医療費支払い請求のデータベースをもとに、米国内の新型コロナウイルス感染者195万9982人の後遺症について解析した結果を発表した。解析対象は昨年2〜12月に新型コロナウイルス感染症と診断された人だ。このうち入院が必要だったのは5%、入院は必要なかったものの急性副鼻腔炎や咳など新型コロナウイルス感染症の一環として起こったと考えられる症状のあった人が39%、味覚や嗅覚の異常だけ起きた人が1%、症状のなかった人が55%。

 全体の23%にあたる約45万人が、医療機関を受診するなど医療費の発生する対応が必要な、診断名のついた後遺症を体験していた。後遺症の発生頻度は症状が重かった人ほど高く、入院した感染者では約50%、入院の必要がない有症状の感染者では27%だった。一方、無症状の感染者でも19%に後遺症が発生していた。ただし、症状が味覚や嗅覚の異常のみだった人では、後遺症は報告されていなかった。

 最も体験者の多い後遺症は痛みだ。5.1%、つまり10万人近い人が神経痛や神経炎、筋肉痛などと診断されていた。その後、多い順に、呼吸困難(3.5%)や高脂血症(3%)、疲労感(2.9%)、高血圧(2.4%)と続く。

■感染者の61%に後遺症

 フェア・ヘルスは、解析にあたり、新型コロナウイルスへの感染前に糖尿病や高血圧といった持病や、慢性の腎臓や肝臓、肺の疾患、がん、心不全、先天的な神経疾患などのあった人を除外した上で、診断日から30日後以降の医療費の発生の有無を調べた。30日後以降に診断を受け、後遺症の可能性があると判断された人についてはさらに、感染前に同じ診断で医療費の請求がないかを調べた。請求があった場合には再発の可能性があるため解析から除外した。

 フェア・ヘルスが解析した対象は、医療機関を受診するなど医療費の発生する対応をした人だ。これだけ大勢が、コロナ後の健康問題で、医療的なケアが必要だったことになる。また、高脂血症など一見、新型コロナウイルスとはあまり関係が無さそうな後遺症が起こる可能性もあることがわかる。

 医療機関を受診するにいたらない人もいると考えられるため、実際には後遺症を体験した人はもっと多いかもしれない。

 後遺症の多さを裏付けるデータはまだある。ノルウェーのベルゲン大学などの研究チームが6月に医学誌「ネイチャー・メディシン」に発表した論文によると、感染者の61%は診断から半年後にも何らかの症状があり、後遺症だと考えられた。これは、ベルゲン市で昨年2月末〜4月初旬の間に新型コロナウイルス感染症と診断された人の8割以上にあたる312人について、診断2カ月後と半年後に医療従事者が面談し、症状の有無などについて調べた結果だ。

■無症状でも若者でも

 感染者のうち入院の必要がなく、自宅で療養した軽症や中等症、無症状の247人でも、55%は診断から半年後に後遺症があった。このうち15歳以下の子どもはほとんど後遺症がなかったものの、16〜30歳の若者では52%に後遺症があった。自宅療養した若者に多かった後遺症は味覚や嗅覚の異常(28%)、疲労感(21%)、呼吸困難(13%)、集中力の低下(13%)、記憶力の低下(11%)だった。

 研究チームは「入院治療の必要がなかった若者でも、感染の半年後に、集中力や記憶力の問題や、疲労感や呼吸困難が残っているのは心配だ。特に学生にこのような問題が生じれば、学業に支障が出る。若くても感染予防対策をしっかり行い、ワクチンを接種する必要がある」と警告している。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2021年7月12日号より抜粋