新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。その要因であるデルタ株はなぜ感染が広がりやすいのか。次第にその特性がわかってきた。AERA 2021年8月30日号から。



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 8月17日、新型コロナウイルスに感染した千葉県柏市の妊娠8カ月の女性は入院できる病院が見つからないまま、自宅で出産。予定より早く生まれてきた赤ちゃんは亡くなった。12日には都内で自宅療養中の親子3人のうち糖尿病の持病がある40代の女性が亡くなった。

 新型コロナウイルスの感染爆発が止まらない。19日には、全国の新規感染者が初めて2万5千人を超えた。その前の1週間で、新規感染数が最も深刻な「ステージ4(感染爆発)」に相当する都道府県は40に上った。20日からは緊急事態宣言の対象が13都府県、まん延防止等重点措置が16道県に拡大した。

 首都圏などでは医療崩壊が起きている。都内だけで自宅療養している人は20日現在2万6千人を超え、入院や宿泊療養の調整中の人は約1万2500人にのぼる。

■初期に高い感染力

 感染爆発の原因は、インドで最初に見つかった変異株、デルタ株のまん延と、人々の自粛疲れやオリンピックの開催も含めたさまざまな要因から、人流がそれほど減っていないからだ。

 国立感染症研究所によると、8月中旬には国内の新規感染者の9割以上がデルタ株に置き換わった。デルタ株は感染の広がりやすさが、以前、流行していたアルファ株(英国で最初に見つかった変異株)の1.5倍、昨年まで流行していた従来株の2倍高い。

 感染が広がりやすい一因を、東京大学医科学研究所の河岡義裕特任教授(ウイルス学)はこう説明する。

「ウイルスの表面にある突起状のスパイクたんぱく質の一部が、ヒトのたんぱく質分解酵素によって切断されて開裂しないと、ウイルスはヒトの細胞に侵入できません。デルタ株はこの開裂部位に変異が入り、より侵入しやすくなってヒトの細胞により結合しやすくなった可能性があります」

 中国広東省の疾病対策センター(CDC)が中国内のデルタ株への感染者167人について調べたところ、最初に感染が確認された際のPCR検査で、従来のウイルス株より約1千倍多いウイルス量が感染者の体内にあったとみられるという。

 感染からPCR検査で陽性と診断できるようになるまでの日数は、従来株では約6日間だったが、デルタ株は約4日間だった。広東省CDCは、「デルタ株は従来株よりも増殖スピードが速く、感染の初期により高い感染性をもつ可能性がある」と注意喚起している。

 また、デルタ株は、病原性が高くなり、感染すると重症化しやすくなっている可能性もある。カナダのトロント大学などの研究チームが今年2〜6月のオンタリオ州の感染者約21万1千人を分析したところ、デルタ株の感染者は従来株の感染者に比べ、入院するリスクが120%、集中治療室での治療が必要になるリスクが287%、死亡リスクが137%高かったという。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2021年8月30日号より抜粋