東京五輪・パラリンピックの公式グッズを販売する東京2020オフィシャルショップの一部店舗で9日から「感謝セール」が始まった。大会前、グッズの売上げ不振が報じられてもセールはしない姿勢だった組織委が、ここにきて急な方針転換に踏み切った。商品廃棄の現実と向き合うメーカーは対応を歓迎しつつ、「決断が遅過ぎる」との本音も漏れる。



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 大会組織委の6日の発表によると、セールは首都圏のオフィシャルショップ11店舗で行われる。店舗により実施日が異なるが、期間は27日まで。商品が最大30%オフ(一部対象除外商品あり)となる。

 オフィシャルショップは2018年7月にオープンした「新宿西口店」を皮切りに全国に66店舗を展開したが、パラリンピックが閉幕した5日以降、このうち50店超が閉店した。オフィシャルショップとしてセールを行なうのはごく一部に過ぎない。

 閉じた店舗のうち家電量販店の中にあった店では、残った商品について6日から売り場を縮小し、家電量販店の商品として値引き販売しているところもあるが、「売れないものは、どんどんメーカーに返品するため、数日で売り場はなくなる予定」(店舗関係者)という。ホームページではすでに閉店したことになっているため、引き続きグッズを売っていること自体がほとんど知られていないようだ。

 別の店舗関係者は「売れ残って廃棄になるくらいなら安売りした方が絶対にいいよねって声は現場でもあったので、組織委の決断は歓迎します。ただ、どうせやるならオフィシャルショップとして閉店する前に、大々的にセールをやった方がもっと売れたと思います。もったいないですよね」と話す。

■メダルラッシュで「品切れ」も

 新型コロナウイルスの感染拡大で五輪開幕ムードは盛り上がらず、大会前はどの店舗も閑古鳥が鳴いた。客足はまばらでグッズは山積み。「数万点の廃棄を覚悟している」「数字が言えないほど売れていない」とこぼすメーカーもあった。

 しかし、五輪が開幕すると様子は一変。日本勢のメダルラッシュに刺激され、店には多くの客が詰め掛け、品切れする商品も出るほどの活況ぶりだった。

 とはいえ、多くのメーカーにとっては手放しで喜べるような状況ではなく、あくまで開幕前と比べれば売れ行きが伸びたに過ぎない、というのが現実のようだ。メーカーは組織委とライセンス契約を結んでいるが、契約上、小売価格の5〜7パーセントをロイヤリティー(権利使用料)として組織委員会に支払う必要がある。実際に売れた数ではなく、当初見込んだ製造数に応じた金額となり、すでに組織委に支払っている。見込みより売れなければ、支払い済みのロイヤリティーが“負債”として重くのしかかる上に、大量廃棄という現実にさらされる。

 10万点を超すグッズを用意していたあるメーカーの担当者は、現状をこう説明する。

「一時は売り上げがコロナ禍前の10パーセントにまで落ち込みましたが、五輪開幕後は出荷が間に合わないほど、多くのお客様に買っていただきました。ただ、五輪が終わったあたりで売れ行きが下がりました。パラ開幕後に少し盛り返しましたものの、全体の売り上げとしては大会前より少しましになったという状況に過ぎず、このままではたくさんの廃棄が出てしまいます。今回、ネットのショッピングモールや自社のネット通販でのセールも許可されたので、売り上げ増を期待しているところですが、大会中に活用してほしい商品も扱っていたので、もっと早くやりたかったのが本音です」

■売れ行きと廃棄に頭抱える

 別のメーカーの役員は、組織委の許可がないため売り上げについての話はできないとしつつも、「五輪が閉幕したあと、店舗での売り上げが落ちたと聞きました。セールをやるならそのタイミングか、せめて9月1日からにするとか。時期が遅すぎると感じます」と不満を隠さなかった。

 同じように、「組織委からセールの連絡が来たのは一週間ほど前の話。遅いと思います」と本音を口にするメーカーの営業担当者もいた。

 担当者によると、グッズの売り上げはコロナ前に掲げた目標の4割ほど。売れ行きに応じて追加生産をしていく予定だったが、開幕後も追加生産するまでには伸びなかった。

「大会が始まってから一気に売れたので、実際に作った数で見れば8割くらいは売れたと思いますが、全体としてはとても残念な結果でした。残りを廃棄にしないため、どうにか売らないといけません。多くのメーカーが売れ行きと廃棄に頭を抱えていて、大会前や大会中、組織委に値引きや販促活動をしていいのか問い合わせたメーカーもたくさんあったと思います。組織委もコロナ禍で大変だったと思いますが、もっと早い決断はできなかったのか。非常時だからこそ柔軟な対応をしてほしかった」(同)

■弁当やマスクの「廃棄」も

 国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現を掲げた大会。だが、ふたを開けてみれば看板倒れは否めなかった。直前に無観客開催が決まった影響もあったとはいえ、13万食にものぼるスタッフ用の弁当を廃棄したり、コロナ対策用のサージカルマスクなど500万円分を廃棄したことも明らかになるなど、多くの問題を露呈した。

 2030年の冬季五輪には札幌市が招致に乗り出している。今大会の橋本聖子・組織委会長は実現に意欲を見せ、さらに実現した際、再び組織委の会長就任の依頼があれば、「ぜひ受けさせていただきたい」とも語っている。

「メーカーに対し、販促活動を制限するなどあまりに縛りが多い。売れていないのに何もしなければ廃棄につながるだけです。こうした問題は改善する必要があると思います」(前出のメーカー担当者)

 再び日本で五輪が開かれるのは定かでないが、残された教訓は少なくない。

(AERA dot.編集部・國府田英之)