小室圭さんの2度目の米・ニューヨーク州の弁護士試験は不合格、眞子さんは美術館で働き始めた。好きな相手との結婚や共働きは女性なら普通のことと捉えられる社会の中でバッシングがあふれるのはなぜか。AERA2022年4月25日号の記事を紹介する。

*  *  *

 ネットの世界では眞子さんを「普通の女性」と見てくれない。元皇族の眞子さんの夫だから、圭さんをバッシングする。それらの投稿を読んでいくと、キーワードが見えてくる。税金だ。マンションの家賃、警備にかかる費用などなどに、使われているという主張が並ぶ。「だから批判されても当然」という認識がセットになっている。

 と、ここで少し違う話を。宮内庁の西村泰彦長官が14日の定例記者会見で、「文藝春秋5月特別号」(8日発売)の記事について遺憾を表明したという(4月15日、読売新聞オンライン)。上皇陛下と皇后雅子さまの関係に関する記事で、長官は「上皇陛下への礼を失する」と述べ、編集部は「記事には自信を持っている」としたと、書かれていた。

 思うに、上皇さまと美智子さま関連の記事について、宮内庁は俊敏だ。同庁ホームページに「皇室関連報道について」というコーナーがあって、07年以来、「この記事は、事実と違う」と説明するのが主な役割だが、上皇ご夫妻に関するものが多い。

 眞子さんの結婚問題についてを見ても、「美智子さまがこう述べたなどの記事があったが、そのような事実はない」旨を3回指摘している。が、小室さんとその母についての記述が「事実と違う」としたことは、一度もない。

「叩いてよし」の空気

 秋篠宮さまは昨年11月の記者会見で、「深く人を傷つけるような言葉というのは、雑誌であれネットであれ私としては許容できるものではありません」と述べた。反論の基準づくりにも言及した。が、具体的な動きは見えず、今では「秋篠宮家は叩いてよし」が世の空気になっている。「小室夫妻への税金」も、もはや「使われている」がデフォルトだ。

 本当にそうか。正解はわからない。なぜって、誰も説明していないのだ。当事者、それは財務省なのか外務省なのか宮内庁なのか、どこも説明していない。「皇室を離れた人だから、説明の必要はない」ということだろうが、それでいいのだろうか。

 眞子さんは、皇族だったから、「小室眞子さん」になっても放っておいてもらえないのだ。ならば、やはり、宮内庁の出番ではないだろうか。元プリンセスを守ることは、皇室を守ること。警備の必要性を語れば、納得する人も出るだろう。甘い見立てかもしれないが、納得は説明からしか生まれない。

 それにしても、なぜ小室夫妻への「税金」がこれほど問題とされるのだろう、と考える。

 例えばアベノマスクだが、余った約8千万枚の保管に年間6億円かかっていた。すべて廃棄するのはもったいないと、4月1日から希望者への配布が始まった。費用は約3億5千万円。すべて税金なのに、批判は高まらない。安倍晋三さんは1月、自分の派閥の会合で「(希望者への配布を)もっと早くやってもらったらよかった」などと、のん気に語っている。

「権威」なのだと思う。岸信介の孫で、元首相。そういう大きなストーリーがなくても、国会議員=権威。世の中がそう受け止めている。だから昨秋に盛り上がった1日在職しただけで100万円もらえる文書通信交通滞在費への批判も、長続きしなかった。与野党が「日割り」に合意したのは4月12日。「権威」だから、半年もかけられる。

権威、肩書が基準に

「コロナの女王」の異名をとった岡田晴恵さんへのバッシングも同じだと思う。国立感染症研究所から白鴎大学教授に転じた専門家だが、ネット上の書き込みは露骨にこう言っていた。「医者でもないくせに」。確かに尾身茂さんら、表舞台に立つ専門家は医者だ。国会議員、医者。わかりやすい肩書があれば別格、なければ叩いてよし。そういう世の中の真ん中に、小室夫妻は立っている。

 圭さんは、これまでの女性皇族の結婚相手と大きく違う。学習院に接点がなく、弁護士事務所のパラリーガルとして登場した。そこに加わった母の金銭問題が「叩いてよし」の号砲になり、眞子さんへの1億円を超える「一時金」がガソリンとなった。彼には「権威」がなく、秋篠宮家は「次男家」。ブレーキが利きにくい組み合わせだった。

 眞子さんと小室さんは、しみじみと時代の合わせ鏡だと思う。小室さんを、上昇しようとしてし損ねた人、または上昇しようとする資格のない人と見たいのだろう。だが、そう思う人々も格差社会の確かな一員で、その生きづらさは例外ではない。

 なんだか暗くなったから、最後に4月第2週に終わったNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の話を。最終週、白髪のるいと錠一郎が登場した。晩年の2人は実に穏やかで、とても美しかった。人生は最後までわからない。眞子さんと圭さんの人生は、まだまだこれからだ。(コラムニスト・矢部万紀子)

※AERA 2022年5月2−9日合併号より抜粋