第6波で主流だったオミクロン株の「BA.2」より、1.3倍感染力の高い新系統「BA.5」による第7波が到来している。医療逼迫しているが、政府は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は出さないとしている。AERA 2022年8月1日号から。

*  *  *

 各地の救急搬送体制も逼迫(ひっぱく)してきている。熱中症などに加えて、新型コロナウイルスへの感染が疑われる人からの救急搬送の依頼も急増しているからだ。東京消防庁は7月19日、公式ツイッターに、

「10時00分現在、救急車の出動率が98%を超えています。通報を受けてから救急車の到着までに時間を要する場合があります」

 と投稿。救急車の要請を緊急時に限るよう呼びかけた。

行動制限しない理由

 このような状況でも、政府は一貫して、

「今のところ新たな行動制限は考えていない」

 と、当面、緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置は出さないとしている。

 背景のひとつには、欧米やシンガポールなどが次々と水際対策を含めた感染対策を緩和し、世界的に経済活動が大きく再開しつつある中、日本だけがいつまでも厳しい対策を続ければ、経済的に取り残されるとの配慮がある。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は7月15日、こう説明した。

「新たな行動制限は、社会経済的な損失と得られる効果のバランスを失する」

 その上で、当面、▽ワクチン接種のさらなる促進▽検査の活用▽効果的な換気の徹底などを行って第7波に対応しながら、「新型コロナウイルスと併存しつつ平時への移行を慎重に進めていく」とした。

英国はコロナ区別せず

 英国のように、新型コロナウイルスとインフルエンザなどの他の呼吸器感染症の対策について、ほぼ区別をなくした国もある。英国政府は国民に、発熱など呼吸器感染症が疑われる場合には、原因に関係なく、感染を広めないために他の人との接触を控え、自宅で療養するよう呼びかけている。

 英国は、国民皆保険制度を敷き、検査を含めた医療費が原則無料だ。従来は、世界の中でも有数の数のPCR検査を実施してきた。しかし今春以降、方針を切り替え、検査を公費で受けられる人を高齢者や持病のある人など、高リスクの人に限定した。検査は、本人が自宅で抗原検査キットで行うのが原則だ。

 今ある新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ薬は高リスクの人が対象で、リスクの低い人は対象外だ。低リスクの人は感染がわかっても特別な治療はなく、多くの人は静養していれば治る。

 英国のような国は世界でもまだ例外的だが、新型コロナウイルス対策の緩和が世界の大きな潮流であることは間違いない。日本でも、どのような形で平時に移行させていくのか検討が必要だ。

 その際には、別の変異株や系統が登場するという想定も欠かせない。インドで今年6月以降、増えているオミクロン株の新たな系統BA.2.75は、英国や米国などに次ぎ、日本でも7月以降、神戸市や都内で見つかっている。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERA 2022年8月1日号より抜粋