皇室のファッションは国民の関心が高いテーマ。先日も、愛子さまと佳子さまの「紅白コーデ」が話題を呼んだ。服装には着る人の内面が表れ、その場に居合わせた人との関係性を露わにすることもある。コラムニストの矢部万紀子さんが、紅白コーデを読み解いた。

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 天皇、皇后両陛下の長女愛子さまと、秋篠宮家の次女佳子さまがそろって雅楽演奏を鑑賞した。11月5日のことだ。皇居内の宮内庁楽部で開かれた秋季雅楽演奏会に出席したのだが、その映像をテレビで見た瞬間、うれしくなった。2人で相談したのかな、そうだといいな。そんな思いで心が弾んだ。

 ファッションのことだ。愛子さまは白のスーツ、佳子さまは深紅のスーツ。紅白で一対をなしているように見えた。襟のデザインや全体の感じなど微妙にというかだいぶ違うけれど、なぜか調和がとれていた。7歳違いのいとこ同士、仲良しだからだろうか。そんなふうにも思った。

 愛子さまが雅楽演奏会に出席するのは初めてで、学習院大学で日本の伝統芸能に関する授業を選択したことから興味をもったと報じられていた。佳子さまは2度目の出席だというから、愛子さまは会場の雰囲気などを尋ねたのではないだろうか。

 今どきの女子なのだから、職員を通しての相談でなく、LINEなどで直接やりとりしているのでは? そうだ、それでスーツの紅白コーデが決まり、「いいね」と可愛いスタンプを送りあったりしたのでは? などなどと妄想しつつ、こちらまで華やかな気分になった。

 女性皇族が2人以上そろう姿を目にする機会は案外多くない。雅子さまは天皇陛下と行動することが多いし、紀子さまは秋篠宮さまと行動することが多い。母娘や姉妹が一緒に行動することはあっても、プライベート中心。成人した独身皇族の公務は単独が基本だから、「誰かと誰かが一緒」の光景は珍しい。

 ただし例外が一つある。皇后さまが名誉総裁、他の妃殿下方が同副総裁を務める日本赤十字社の全国大会だ。活動に貢献した人々を表彰する会で、名誉総裁、同副総裁がそろって出席する。コロナ禍で2020年、21年は開かれなかったが、22年5月には3年ぶりに開かれ、雅子さま、紀子さま、寛仁親王妃信子さま、高円宮妃久子さまが出席した。

 この大会の写真や映像は古くからのものが残っている。今に残る一枚のお写真――と、これは2022年9月に亡くなった皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんが好んで使ったフレーズだ。莫大な写真や映像を記憶していた渡邉さんに教わったのが、1968年11月2日の赤十字社有功章、特別社員章親授式の写真だ。

 名誉総裁は香淳皇后で、壇の中央で手に紙を持ち何か文章を読んでいる。少し離れて同副総裁である女性皇族がずらりと並ぶ。香淳皇后に近いほうから、美智子さま(当時は皇太子妃)、常陸宮妃華子さま、秩父宮妃勢津子さま、高松宮妃喜久子さま、三笠宮妃百合子さま。

 モノクロ写真の時代だから、正確な色はよくわからない。が、見えたままを説明すると、香淳皇后は黒い服を着ている。美智子さまは白い服を着ている。華子さま、勢津子さま、喜久子さま、百合子さまは黒い服を着ている。つまり、美智子さまだけ白い服を着ている、という写真なのだ。

 これはどう見ても、美智子さまにだけドレスコードが伝わっていない。そういうことだと渡邉さんは解説してくれた。その事情については、渡邉さん言うところの「超一級の史料」である『入江相政日記』を引いて、解説してくれた。

 入江氏は昭和天皇の侍従長を務めた人で、58年10月11日の記述にこうある。<東宮様の御縁談について平民からとは怪しからんといふやうなことで皇后さまが勢津君様と喜久君様を招んでお訴へになつた由>。東宮様は現在の上皇さま、皇后さまは香淳皇后、勢津君様は勢津子妃、喜久君様は喜久子妃。黒い服というドレスコードが伝わっていたであろう人々。「平民から」とは美智子さまのことで、「怪しからん」を今どきにすれば「ありえない」だろうか。

 結局のところ皇太子さま(当時)と美智子さまは、59年に結婚した。それから9年経った赤十字の式典でも、美智子さまにはアウェーの風が吹いていた。

 この大会から50年、2018年5月16日に全国赤十字大会が開かれた。写真も映像もたくさん残っているのは、平成最後の大会で、雅子さまが15年ぶりに出席したことも大きい。「来年から、雅子さまは大丈夫だろうか?」という空気は、国民の間にまだ残っていたと思う。

 その大会の最後、美智子さまは雅子さまのほうを振り返り壇の中央に招いた。美智子さまは雅子さまの腕を軽く取り、言葉をかけた。雅子さまはぱっと笑みを浮かべ、客席に向かって頭を下げた。続いて、美智子さまも頭を下げた。「次はあなたよ、がんばって」。美智子さまのそんな声が聞こえてくるような、サプライズ演出だった。

 美智子さまは白いスーツ、雅子さまは紺色のスーツだった。他の皇族方も白系統と紺系統で順番に並んでいた。50年前の「1人だけ白」を乗り越え、最後は温かな演出で幕を閉じた。美智子さまの人生が凝縮された大会だった。全員の服装について「遠目にはまるでオセロのようで、女性皇族の一体感を演出しているように見えた」と書いたメディアもあった。

 ことほどさように、女性皇族が集合するのは大変なのだ。だから、というわけではないだろうが、愛子さまと佳子さまの「紅白コーデ」はとても話題になった。そして愛子さまは服装だけでなく、髪形も注目の的だった。「“ヘアゴム隠し”のポニーテール」と名づけて「艶やかな髪を緩く巻き、ひとつに束ね、ヘアゴムの結び目の上から髪を巻きつけ」と解説したのは「女性セブン」(22年11月24日号)で、流行中の新しいヘアスタイルだとしていた。

 愛子さまのお出かけが少ないという事情がある。21年12月に成年皇族になり、22年3月の初めての記者会見で国民を魅了した愛子さまだが、コロナ禍で大学もリモート学習を通していて、ファッション情報もほとんどない。

 一方、積極的に外出しているのが佳子さまだ。10月1日から11月10日までの佳子さまの日程を朝日新聞デジタルの「皇室7days」でチェックすると、1泊2日(栃木県と奈良県)を含め皇居の外へのお出かけが9回。ちなみに愛子さまとの雅楽鑑賞は入っていないから、あれはプライベートということなのだろう。

 そして佳子さま、失礼を承知で書かせていただくなら、「おしゃれ番長」だ。9月24日、鳥取市での車いすツインバスケットボールの練習会場ではブルー系の縦ストライプのワンピース(上に白のジャケット)を着て、きっぱりした感じを見せていた。そうかと思うと10月1日、日本デフ陸上競技選手権大会会場では濃いワインレッドでレース地のワンピースを着て、フェミニンな感じに。どちらもよく似合い、佳子さまはファッションが好きなのだと思わせる。笑顔はいつも弾けるようだし、デフ陸上の会場で手話を使いこなす様子はとても気さくだ。

 そんな佳子さまの日々を見て、「婚活ファッション」などと書くメディアもあった。が、働く女子の大先輩として言わせていただくなら、それは違う。婚活のためより、まず自分のため。それが職場ファッション。職場(佳子さまにとっては、公務で出かける先は職場だ)で自分好みのファッションを着られるのは、仕事が充実している証拠だと思う。

 ということで、愛子さまと佳子さまの紅白コーデに戻る。冒頭で2人のファッションを見てうれしくなった、と書いた。自分の気持ちを分析するなら、2人が皇室という自分の生きる場所を楽しめているような気がしたのだと思う。背景にあるのは小室眞子さんの結婚までの道で、眞子さんは皇族であることがしんどかったのだろうと思うのだ。

 愛子さまと佳子さまの心の奥底はわからない。でも雅楽を聞きにいくにあたり、ファッションをあれこれ考え、紅白コーデになった。そのことを思うと、安堵の気持ちがわいてくる。これからも愛子さまと佳子さまが、ファッションを楽しめますように。願ってやまない。