1月2日、皇居で3年ぶりに新年の一般参賀が行われた。愛子さまは初めての参加となった。メディア史研究者の森暢平さんに話を聞いた。AERA2023年1月16日号から。

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 宮内庁は昨年12月、23年4月に新たに「広報室」を設けることを予算案に盛り込みました。室長ポストを含み、職員が4人増員される予定です。秋篠宮さまが昨年11月の誕生日会見で、皇室の情報発信について言及したこともあり、皇族ご本人がSNSアカウントを持って発信する日が来るのではないかという期待が一部で高まっているようです。

 ですが、実現は遠いでしょう。当面は今の宮内庁のホームページが、海外の王室を参考にしつつリニューアルされるくらいではないでしょうか。会見を見る限り、秋篠宮さまも宮内庁も本気でやろうとはしていないと感じました。

 とはいえ、海外の王室でSNSを積極的に活用していないのは日本の他にタイなどアジアの数カ国だけ。現状のままでいいのかという問題意識はあって然るべきだと思います。

 秋篠宮さまは皇室への誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)に対しては「一定の基準」づくりの検討を続けるとしました。気になったのは「何らかの基準を満たした場合に反論する必要があるだろうと言う人もいた」という発言です。

「反論」という言葉には、皇室が発信すれば、その意見を聞いてもらえて、さらに訂正されると考えている前提がありますが、もはやそんな時代ではありません。Twitterなどでは、匿名での総攻撃が日常茶飯事なのですから。

 例えば、小室圭さんは2回にわたって説明文書を出していますが、本当に言いたかったことはほとんど伝わっていなかったと思います。

 眞子さんが4年の沈黙を破って臨んだ会見も、大きなバッシングを生みました。宮内庁と皇族が考えているインターネット社会における情報発信のあり方と、現実とのズレを感じています。冷静な議論がもっと必要でしょう。

■映像に音声がない

 メディアとの付き合い方を考えるのであれば、まずは皇族の誕生日などに合わせて公開される映像に音声がないことを改善してはどうでしょうか。

 いつも皇居内を散策したり、美術品などの資料を見たりしながら、時々微笑(ほほえ)む映像と文書の説明が別々に出されていますが、これは戦後、ラジオからテレビに移った当初から約60年続くスタイルです。

 例外は、昨夏の悠仁さま(16)の誕生日映像です。初めてセミの鳴き声が入り、「ついにこの日が来た」と思ったものの、その1回きり。悠仁さまが話をするシーンもなく、その後の紀子さま、愛子さま、雅子さまの誕生日映像は無音でした。

 つまり我々は皇族方の肉声をほとんど聞いたことがないのです。皇位継承者である悠仁さまの肉声が国民に届いたのは、昨春の筑波大付属高校の入学式で記者団に答えた「入学式を迎えることができて、とてもうれしく思っています」くらいです。ちょっと変だと思いませんか?

 令和になって4度目の新年を迎えました。これまでは代替わりに伴う諸行事、コロナ禍、眞子さんの結婚と渡米など、注目すべきトピックが続いてきましたが、一転、今年の皇室は今のところ目立つ話題がありません。そんな時だからこそ、テレビからインターネットへとメディアの主戦場が変わる中で、皇室がどう国民と向き合っていくのかを考えるには、いいタイミングのように思います。

(構成/編集部・古田真梨子)

AERA 2023年1月16日より抜粋