天皇、皇后両陛下の長女・愛子さまが初めての記者会見に臨まれたのは2022年3月17日。今からちょうど1年前のことだった。成年皇族の仲間入りをしたせいなのか、この1年、ますます高まる愛子さまの存在感を、愛子さまご誕生時から皇室番組に携わる放送作家のつげのり子さんはこう分析する。

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 愛子さまが20歳のお誕生日を迎えたのは、21年12月1日。大学生として学業を優先されたため、お誕生日から3カ月後の春休み期間中に記者会見は行われた。放送作家のつげのり子さんは「具体的なエピソード」がちりばめられた会見内容に驚いたと振り返る。

「そもそも皇室の方々の記者会見は抽象的な表現をされることが多いのですが、愛子さまは丁寧に具体的なエピソードを語っていらっしゃって、それがとても新鮮でした。那須御用邸のソファで朝まで寝てしまったとか、須崎御用邸ではご家族3人で海に落下されたとか、微笑ましいその場面が頭の中に浮かんできました。天皇、皇后両陛下と愛子さまの普段のご様子や、私たちと変わらない等身大のご家族のお姿が感じられ、思わず笑みがこぼれたことを今でも鮮明に覚えています」(つげさん)

 つげさんの記憶に焼き付いている愛子さまの具体的なエピソードは、こんなお言葉だった。

「以前、栃木県にある那須の御用邸に行き、その着いた晩に、縁側にあるソファで寝てしまい、そのまま翌朝を迎えた、なんてこともございました」

「静岡県の下田市にある須崎御用邸に行き、海で泳いでいるときに、きれいなお魚の群れを発見して皆で観賞しましたり、また、須崎はほとんど波のない穏やかな海でございますけれども、サーフボードを浮かべて、そこに3人で座る挑戦をして、見事全員で落下した思い出など、お話しし始めると日が暮れてしまうかもしれません」

 愛子さまのお言葉で語られるエピソードからは、やんごとなき天皇ご一家といっても、普段はごく普通の家族であり、何気ない日常を過ごされていらっしゃることがよくわかる。

 つげさんは、ちょうど愛子さまが誕生されたころから皇室番組に携わるようになったことから、愛子さまの成年の記者会見にはなんとも言えない感慨もあったという。

「記者会見を行う以前の愛子さまの映像を振り返ると、お小さいころは、雅子さまの後ろに隠れているような印象でした。入学式や卒業式でも校門の前で、記者から質問をされてもなかなか話せず、雅子さまに促されてようやくひと言お答えになっていました。どちらかというと引っ込み思案な女の子なのかなと思っていましたが、成年の記者会見のときは、愛子さまをご誕生のときから見てきたので、不遜かもしれませんが『うまくできるのかしら、大丈夫なのかしら』という思いを抱いていました。ところが愛子さまの会見は、完璧すぎるほど完璧で、その心配は杞憂でした。それと同時に、愛子さまは本当にご立派に成長されたなと涙が出るほど感激したことを覚えています」(つげさん)

 愛子さまは記者会見でもご自身の性格を問われ「小さいころから人見知りのところがある」と答えられていたが、そんなことは微塵も感じさせないほど立派な記者会見だった印象がある。そんなご様子を「聞いてくれる人たちに伝えようとするお気持ちが、私たちにとても伝わってきました」とつげさんも振り返る。

「これまで、愛子さまは映像で拝見していると、伏し目がちなことが多い印象がありました。山の日の記念式典に出席するため、ご一家と愛子さまが上高地(長野県)を訪問された際、愛子さまはガイドさんのお話を聞くときも、やや伏し目がちで聞かれていました。それが一転、記者会見では堂々と前を向き、特に印象的だったのが、記者からの質問をきちんと目を見て、向き合って聞いて答えていらっしゃったことです。おそらく、愛子さまはご自身の人見知りなご性格を克服しようと、一生懸命努力されたのではないでしょうか。そうしたところにも、愛子さまのご成長が感じられました」(つげさん)

 そんな記者会見からまもなく1年――。新年には初めての一般参賀にも参列された。記者会見からの1年を振り返り、つげさんが一番印象的だったのは「新年一般参賀」だという。

「この1年の愛子さまのお出ましで印象的だったのは、今年の新年一般参賀です。雅子さまと並んでお立ちになり、その所作が実にそっくりでした。雅子さまは愛子さまにとって、皇族としての先輩でいらっしゃるので、『扇はこうして持つのよ』とか『お手振りはこうするのよ』などとお教えになったことが伝わってきました。お手振りも、扇の持ち方も、所作のひとつひとつが完全に一致していたので、事前にお2人で練習をされたのでしょう。なんといっても愛子さまは天皇、皇后両陛下とともに、国民の目に触れるお立場です。佇まい自体を美しくきちんと表現していこうと考えておられるのだと思います。初めての一般参賀で所作のひとつひとつに、愛子さまの真面目さがにじみ出ていらっしゃいました」(つげさん)

 この1年で高まる愛子さまの存在感は、まさにそこにあるのではないかとつげさんは分析する。

「両陛下のお役に立ちたいという気持ちが強く育ってこられたのではないかと拝察します。体調を崩された雅子さまを常に思いやる天皇陛下と、皇后として国民のためにできるだけ寄り添おうと努力を重ねてこられた雅子さまのご苦労を、愛子さまはずっと目にされてきました。『無私の献身』というひと言では表せない両陛下の誠実な姿勢は、愛子さまに大きな影響を与えられたのだと思います。成年皇族の仲間入りを果たされた愛子さまは、両陛下のお役に立ちたいという気持ちが、自然に芽生えていかれたのではないでしょうか」(つげさん)

 4月から愛子さまは学習院大学の4年生として、これまでのオンライン授業をへてキャンパスライフが本格的に始まる。その存在感にますます磨きがかかることだろう。

(AERA dot.編集部・太田裕子)

つげのり子/放送作家、ノンフィクション作家。2001年の愛子さまご誕生以来皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。