
メジャーリーグのレギュラーシーズンも最終盤に差し掛かっているが、今季日本人選手のパフォーマンスとともに注目されたのが、ラーズ・ヌートバー外野手(カージナルス)の活躍だ。
3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、初めて日系人の選手として侍ジャパンのメンバーとしてプレー。攻守に躍動し、侍ジャパン3度目の優勝に貢献した姿を覚えている人は多いだろう。
メジャー3年目の今季は、左手親指、腰の負傷、そして下腹部の打撲で3度故障者リスト(IL)入りとなったものの、ここまで自己最多となる112試合に出場し、いずれもキャリアベストとなる107安打、43打点、11盗塁を記録するなど、順調にステップアップしている。26歳とこれから全盛期を迎える年齢だけに、次回2026年のWBCまでにどれだけ成長してくるか楽しみだ。
また、ヌートバーの他にもアジアの国にルーツを持つ選手の活躍が目立つ。
今年のWBCでは出場資格を得られず参戦できなかったものの、ヌートバーとともに侍ジャパンの候補となっていたスティーブン・クワン外野手(ガーディアンズ)も素晴らしい成績を残している。
ヌートバーと同じ26歳のクワンは、今季ここまで154試合に出場して打率.270(622打数168安打)、5本塁打、54打点、20盗塁をマーク。打率や出塁率は昨年から落ちているものの、ヒット数はア・リーグで5番目、さらにUZRという総合的な守備力を示す指標ではリーグ全体(左翼手部門)で3位と高い水準だ。WBCでは出場について様々な規定があり、次回大会も資格を得られるかは不透明ではあるが、仮にルールなどが変わり出場可となれば、ヌートバーとともに侍ジャパンの大きな戦力になる可能性もあるだろう。
日本以外の代表チームでは、台湾代表の候補となっていたコービン・キャロル外野手(ダイヤモンドバックス)がメジャーでもスーパースターとなれるような能力を遺憾なく発揮している。
WBCはシーズンへの準備のために辞退となったが、実質メジャー1年目の今季は151試合に出場して、打率.285(550打数157安打)、25本塁打、74打点、51盗塁という見事な成績をマーク。今季からメジャーに移籍し、12勝(防御率2.96)を挙げている千賀滉大(メッツ)らを抑え、ナ・リーグの新人王争いで圧倒的な有力候補となっている。
スピードはメジャー屈指で、スタットキャスト(プレー中の様々な動きをデータ化)のスプリントスピードのランキングでは全体の8位。盗塁数もメジャー全体で3位の数字となっている。また、身長178cm、体重75kgと小柄な部類に入るのにも関わらずパワーも兼ね備え、メジャーリーグ公式サイト『MLB.com』は全盛期のビリー・ハミルトン(レッズなど)のようなスピード、そしてジョーイ・ボット(レッズ)のような打撃力を持った選手になれると絶賛している。
シーズン途中までは、ロナルド・アクーニャJr.外野手(ブレーブス)、フレディ・フリーマン一塁手(ドジャース)などともにMVPの候補にも挙げられたキャロル。まだ23歳と若く、仮に次のWBCに台湾代表として出場となれば、アジアのライバルにとって大きな戦力となるのは間違ないだろう。さらにこのまま順調に成長すれば、スターぞろいの米国代表にも入ることも十分考えられるほどの能力の持ち主だ。
キャロルとともに台湾代表の候補となっていた選手では、スチュアート・フェアチャイルド外野手(レッズ)も今季、自己最多の94試合で47安打、5本塁打、27打点、10盗塁とキャリアベストの成績をマークしている。
今年のWBCでは韓国代表も侍ジャパンと同じく、初めて韓国系のトミー・エドマン内野手(カージナルス)を招集。大会ではチームが1次ラウンドで敗れ、ヌートバーのような旋風は巻き起こせなかったが、今季は132試合の出場で、打率.243(460打数112安打)、13本塁打、47打点、25盗塁と堅調な成績を残している。
韓国代表に入ってくる可能性のある選手としては、投手のデーン・ダニング(レンジャーズ)も今季飛躍を遂げたアジア系のプレイヤーだ。
メジャー4年目となる今季は自身初となる2ケタ勝利(11勝6敗)、防御率3.88とキャリアハイの数字をマーク。メジャーデビューを果たした2020年には韓国メディアに対して、韓国代表チームとしてプレーしたいと述べ、今年の大会では実際に候補にも挙がっていたという。年齢は現在28歳。今季のような成績を残し続ければ、代表チームの一員として次回のWBCに出てくるかもしれない。
彼ら以外にも侍ジャパンの候補として挙がったアイザイア・カイナーファレファ内野手(ヤンキース)、ケストン・ヒウラ内野手(ブルワーズ)ら日本にルーツを持つ選手や、コナー・ジョー内野手(パイレーツ)、ロブ・レフスナイダー外野手(レッドソックス)などアジア系の選手がメジャーで結果を残している。WBCへの参加については資格などを含め難しい部分はあるが、野球のグローバル化のためにも、今後も様々なバックグラウンドを持つ選手が生まれた国以外の代表でプレーする姿を見てみたい。(文中の成績は現地9月26日終了時点。UZRは『FanGraphs』を参照)