「大谷、スポーツに賭けたことはないと語る。『ショックを受けた』。通訳が金を盗んだ」と伝える米ESPNのウェブサイト

 大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手は25日(日本時間26日)、元通訳の水原一平氏の違法賭博疑惑について会見し、米主要メディアも一斉に速報。米国民の関心の高さをうかがわせた。大谷選手は自身の違法賭博への関与を否定したが、質疑応答がなかったこともあり、一部メディアは「口座の操作になぜ気づかなかったのか」などと厳しい視線で報じている。

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 水原氏と違法賭博との関係をいち早く取材してきたスポーツ専門局ESPNによると、本拠地のドジャースタジアムで行われた会見には70人以上のメディア関係者のほか、スタン・カステンCEOらドジャースの首脳陣が出席した。

 大谷選手は黒いファイルの中に日本語で書かれたメモを用意していたが、それに視線を落とすことはほとんどなく、「通訳が(大谷選手の)口座から金を盗み、うそをついた」「スポーツに賭けたことはない」と、スポーツ賭博への関与を断固として否定した。

 そして会見の最後には、

「正直、ショックという言葉が正しいとは思わないですし。それ以上の、言葉では表せないような感覚で、この1週間ぐらいはずっと過ごしてきたので、今はそれを言葉にするのは難しい」

 と話した。
 

■水原氏の主張にファンは困惑

 ABCやNBCなどの米主要テレビ局は、会見の内容について論評を挟まずに淡々と報じた一方、記者からの質問に応じなかった大谷選手について「疑問点に触れていない」と厳しく指摘した。

「大谷翔平は元通訳が賭博の借金を返済するために金を盗んだと非難したが、ファンは多くの疑問を抱いた」と報じる米USAトゥデー

 米紙USAトゥデーは「大谷は元通訳がギャンブルの借金を返済するために金を盗んだと非難したが、ファンは多くの疑問を抱いている」と伝えた。
 

「大谷翔平、スポーツに賭けたことはないと語る。元通訳との疑惑で新たな詳細を明らかに」と伝える米ABCのウェブサイト

 最大の疑問は、水原氏が大谷選手の口座を操作できた経緯について、会見で何も語られなかったことだ。

 水原氏は違法賭博の胴元に、大谷選手の口座から少なくとも450万ドル(約6億8千万円)を送金したと、複数の米メディアが報じている。ESPNは、大谷選手の名義で昨年秋、50万ドルの送金が2回あった記録などを確認したという。

 当初、水原氏は3月19日に行われたESPNのインタビューで「賭博で負った借金の肩代わりを大谷選手に頼んだ」と語ったが、翌日には「大谷選手は自分の借金について知らず、大谷選手本人は送金していない」と説明を一転させた。

 USAトゥデーによると、「ファンは、水原氏が大谷選手の知らないところで彼の口座にアクセスできる権限を得ていたという主張に困惑した」という。

 というのも、米国政府は不正送金やマネーロンダリング防止のため、2005年にインターネットバンキングや電子送金の手続きを強化。ユーザーIDとパスワードだけでは口座にログインできないようになっているからだ。

 例えば、大手米銀のシティバンクの場合、ユーザーIDとパスワードをネットバンキングの画面に打ち込むと、スマホにワンタイムパスワードが届き、それを入力することで口座にアクセスできる。口座にアクセスすると、利用者にその旨がメールで通知される。送金時も同様だ。
 

「大谷翔平、賭博スキャンダルに『悲しくてショック』」と報じる米ワシントン・ポストのウェブサイト

■大谷のどんな話も信じられない

 一般の米国民からすれば、水原氏は大谷選手のスマホを自由に使える立場にあるのか、銀行口座へのログインや送金を気づかれないことがあり得るのか、という疑問が湧く。

 さらに同紙は、連邦政府の調査を受けるような人物への巨額の送金を、大谷選手が承認したという証明なし行える銀行が存在するのだろうか、と指摘する。
 

「大谷翔平、通訳に対する賭博疑惑について初記者会見」と報じる米CBSのウェブサイト

 水原氏の発言によって、大谷選手は難しい立場に置かれた。

 違法賭博に加担した、あるいは手助けをしたという意味で、責任を問われる可能性が生じるからだ。

 会見で大谷選手は疑惑を振り払うように「僕がブックメーカー(違法賭博の胴元に)送金をしていたという事実は全くありません」と訴えた。そして「シーズンも本格的にスタートするので、ここからは弁護士の方々にお任せしますし、僕自身も警察当局に全面的に協力したい」と語った。

 これに対して同紙は「大谷はこの会見で違法賭博疑惑に対する自分の立場を明確にしたいと考えていたが、ファンの疑念を払しょくするものでなかったことは明らかだ」と報じた。

 そして、記事はスポーツビジネスを手がける男性のXの投稿で締めくくられた。

「会見では2つの重要な質問ができなかった。『(水原)一平はどうやって大谷の銀行口座にアクセスしたのでしょうか』『なぜ大谷は数カ月にわたって複数の50万ドルの支払いが自分の口座からされていることに気づかなかったのでしょうか』。これらの質問の答えを聞かずに、大谷のどんな話も信じることは困難です」
 

■会見で深まった疑問

 さらに地元のロサンゼルス・タイムズ紙は「賭博と窃盗の疑惑は大きな疑問を引き起こした 大谷翔平とは何者か?」というタイトルのコラムを掲載。

「賭博と窃盗の疑惑は大きな疑問を引き起こした 大谷翔平とは何者なのか?」とのコラムを掲載した米ロサンゼルス・タイムズ紙

 コラムニストのディラン・ヘルナンデス氏は、会見は疑惑を解消するのに必要な具体的な証言が欠けている、としたうえで、「大谷が何者なのか全くわからないのに、彼の言うことをある程度の確実性を持って信じられる人がいるだろうか」と疑問を投げかけた。
 

「大谷翔平、スポーツに賭けたことは『一度もない』。元通訳の話は『完全なうそ』と発言」と伝える米FOXニュースのウェブサイト

 同氏によると、大谷選手は自分のことを取材するジャーナリストだけでなく、フィールドをともにしてきた選手たちとも距離を置いてきた。彼の私生活についてはほとんど何も知られていないという。

「大谷が今も純粋な『野球少年』で、お金に対しては無関心であれば、水原が彼から数百万ドルを盗んだことになぜ気づかなかったのか、理解できる可能性があります。しかし、その証拠は何も出てきていません」

 今後の実態解明は、当局や税を所管する内国歳入庁の捜査に委ねられる。

「大谷選手は今のところ賭博容疑では告発されておらず、賭博も野球で行われたものではないと考えられている。しかし、もしそうでなければ、野球から永久追放される可能性がある」(ESPN)

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)