経営トップの不祥事が相次ぐ日産自動車。企業統治(ガバナンス)が機能していないことをさらけ出し、社内外から厳しい目が向けられている。

 西川廣人社長は報酬をかさ上げしていた問題で、9月16日付で辞任。自社株の報酬で事前に決めた金額を株価が上回った場合に差額を金銭で受け取れる権利(SAR)の行使日を後にずらし、報酬を4700万円もかさ上げしたという。西川氏の疑惑について東京地検は立件を見送り、刑事責任を追及しない方針とされる。

「検察は西川氏を全面的に協力させないとゴーン事件がもたない」

 こう話すのは元検事の郷原信郎弁護士。カルロス・ゴーン前会長の裁判に勝つため、検察と西川氏や日産は運命共同体というわけだ。

 そもそも、今回の西川氏の疑惑は、ゴーン前会長とともに逮捕されたグレッグ・ケリー前代表取締役が「文藝春秋」で指摘。西川氏は2013年春ごろまでにケリー氏に、報酬を上げてほしいと要望したほか、日産に自身の新居の購入を打診したという。その際、「自分はSARを何株もっているか」と尋ねたそうだ。株価が上昇するなか、すでに決めた行使日を後にずらして上積みを得た後は、西川氏から不動産購入の提案が取り下げられたとケリー氏は話している。

 それなのに、今回の日産の社内調査では、西川氏がSAR行使日の後ずれによる利益の上積みを知らなかったと結論づけた。これでは、追及が甘いとしか言いようがない。

「4700万円もの明細を知らなかったのは不自然です。日産は社内調査でケリー氏に話を聞こうとせず、聞く気もなかったのではないか」(郷原弁護士)

 社内外の信頼が損なわれるなか、足元の経営が厳しくなっている日産は大規模なリストラに踏み切る。大株主のルノーやバックにいる仏政府は、経営統合で日産を傘下におさめようと狙っており、日産の社内混乱で経営関与を強めてくる可能性がある。トップに誰が就任しても、いばらの道が待ち受けている。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日  2019年9月27日号