今年も多くの地域で大雨による土砂災害が発生した。防災に詳しい関西大学社会安全研究センターの河田惠昭(かわた・よしあき)センター長は「大雨が降れば、傾斜地のある場所はどこでも土砂災害が起こりうる。安全な土質はない」と指摘する。土砂災害から身を守るためにはどんなことに気を付けたらいいのか。土砂災害の前兆現象などに注目した、AERA 2020年8月10日−17日合併号の記事を紹介する。



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 いつ、どこで土砂災害は起きるのか。土砂災害からどう命を守ればいいのか。雨の降り始めから100ミリを超えると土砂災害が起きる危険性は高まるといわれるが、現時点では正確に予測することは困難だ。

 だが河田センター長は「前兆現象」はあると言う。

「まず、斜面の下の道路に10センチ程度の石が落ちていたり、沢の水が濁ったりした時などは要注意。また、生臭いにおいなどいつもと違うにおいがしたら、土砂災害によって木の根が切れたからで、土石流が襲ってくるかもしれない。雨が降り続いているのに川の水位が下がっていれば、どこかで土砂がせき止められているので土石流が押し寄せる心配がある」

 土砂災害に遭った人の多くは建物の1階で被災している。こうした兆候を感知したらすぐ上の階の、山とは反対側への「垂直避難」が大切と言う。また、「長雨にも注意が必要」と河田センター長。

 短時間の豪雨は、雨は地面ではなく川に流れ込む。だが、長雨の場合は、雨が地中に浸透し地盤が緩み、土砂災害を引き起こす可能性が高いからだ。2、3日前からしとしと降っている時は、土砂災害の危険性が高いと警鐘を鳴らす。

「さらに心配なのが、雨が降った後に起きる地震。18年9月に起きた北海道胆振東部地震では厚真町(あつまちょう)では36人が亡くなりましたが、全員、土砂災害によるものです。地震の前日に北海道を通過した台風21号が大雨を降らし、地盤が緩んでいたからで、雨が降りその後で地震が起きると、土砂災害は起こりやすいと、絶対に頭に入れておかないといけません」(河田センター長)

 一方、広島工業大学の森脇武夫教授(地盤工学)は、一歩踏み出して考える必要があると話す。

「土砂災害が発生しやすい危険な場所に住んでいる人が多すぎる。だから、防災対策をしても間に合わない。危険な場所に都市を拡大しない方法を考える必要があります」

 近年、国は都市機能を集約するコンパクトシティー政策を進めているが、多くの自治体は都市部の中で住宅の立地を促す「居住誘導区域」を設けている。しかし国交省が昨年12月、計画を進める275都市を対象に行った調査では、34%に当たる93都市で「居住誘導区域」と「土砂災害警戒区域」(イエローゾーン)とが重なることがわかった。森脇教授は言う。

「長いスパンで考えると、災害の起こらない場所に住む土地利用を考えていかないといけない。防災も含め、土地利用の仕方を考え直すことが大切です」

 梅雨が明けても、ゲリラ豪雨や台風が多発しやすい時期になる。これまでの大雨で地盤が緩んでいるところも多い。土砂災害への備えの意識を、新たにしたい。(編集部・野村昌二)

※AERA 2020年8月10日−17日合併号より抜粋