多様なバックグラウンドを持つ人が増えるなか、自らが「日本人」だと証明するために戸籍を示した蓮舫氏。なぜこんなことになったのか。

 日本国籍と台湾籍の「二重国籍問題」で、民進党代表の蓮舫氏が戸籍謄本の一部を公開した。台湾籍離脱の手続きを尽くした証拠を示し、説明責任を果たすためだという。「出自による差別を助長しかねない」という批判の中での開示。「二重国籍問題」とは、何だったのか。

 蓮舫氏は1967年、東京で、台湾人の父と日本人の母の間に生まれた。当時の国籍法は父系主義。蓮舫氏は台湾籍だったが、85年の国籍法改正で国籍選択が可能になり、日本国籍を取得した。その際、台湾籍放棄の手続きが行われず、二重国籍状態となっていたとされる。

●二重国籍排除規定なし

「問題」化は、蓮舫氏の民進党代表選立候補を受けて「将来の首相候補として二重国籍者はふさわしいのか」という指摘があったことが発端。国籍法が22歳までに国籍の選択を求めていることを受け、金田勝年法相は蓮舫氏の民進党代表就任後の2016年10月、「国籍法上の義務に違反していた」と発言したが、実際は努力義務で、これまで二重国籍の解消を迫るような厳格な運用はされていない。法相は二重国籍の解消を求める催告ができるが、催告が行われたこともない。

 しかも、公職選挙法は国会議員に日本国籍であることは求めているが、外国籍の人を排除はせず、外国籍を持つ人の就任が禁じられている職業は外交官のみ。内閣トップとして外交交渉にあたる首相については議論があるが、外国籍や二重国籍の人を排除する明確な規定はない。

 代表選中に「(日本)国籍選択の宣言をした。私は日本人」と明言していた蓮舫氏が説明を二転三転させ、実際は台湾籍が残っていたことも事態を悪化させたが、戸籍は究極の個人情報だ。85〜14年度に生まれた日本国籍のある人のうち約83万人に二重国籍の可能性があったとされる。二重国籍状態が違法かどうかは議論があるのに、戸籍を開示してまで説明責任を果たす必要はあったのか。

 政治学者の山口二郎・法政大学教授(59)はこう批判する。

「野党党首という特殊な立場であっても、戸籍公開の前例をつくることは好ましくない。差別をなくすための数十年の努力を否定する行為だと思います」

 東京都議選での敗北の一因を「二重国籍」に求めた民進党内の動きについても手厳しい。

「都議選の敗北と国籍問題は何の関係もない。民進党が支持されないのは、蓮舫氏のリーダーシップと関係してはいてもその出自とは全く関係ない。反省すべきテーマが分かっていない」

●実態に適応した法律に

 NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」副代表理事の丹羽雅雄弁護士(68)も言う。

「二重国籍で国会議員や党代表になることが法的に問題ないにもかかわらず戸籍の開示を求めること自体、出自による差別を禁じる憲法第14条と人種差別撤廃条約に違反している」

 そして、こう続けた。

「金田法相があえて『違反』という言葉を使ったことは、非常に政治的だと感じます」

 ペルーと日本の二重国籍だったフジモリ元ペルー大統領が07年参院選に立候補した際は批判はなかった。前出の山口教授は、

「排外主義者がネットを通じて大きな声を出すし、自民党内にもそうした主張が浸透している。民進党には、そういうものと体を張って闘う決意がない」

 とヘイトスピーチに代表される排外主義の広がりも指摘した。

 二重国籍を認める国は少なくない。蓮舫氏も会見で、

「国籍法はどうあるべきか。これはぜひ考えて議論させていただいて、形にしたい」

 と発言。丹羽弁護士も言う。

「国籍は一つの機能的なものであるべきで、血と国籍と国民を一体化して考えるのはおかしい。多様性社会、共生社会になっていく中で実態に適応した法制度をつくっていく。今回のことはそのきっかけにすべきです」

(編集部・山口亮子)

※AERA 2017年7月31日号