民進党・蓮舫代表の突然の辞任劇。「泥船」の党を投げ出した感も否めない。トップの退場は野党第1党の「液状化」の始まりなのか。

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「遠心力」

 7月27日に民進党の蓮舫代表が開いた辞任記者会見でのキーワードだ。国会内の控室に白いジャケット姿で現れた蓮舫氏。会見では時折笑みを浮かべ、どこか吹っ切れたようにも見えた。

「どうすれば遠心力を求心力に変えることができるのか──」

 そう考えて、辞任を決めたという。

 通常、辞任会見で言及されるのは求心力の低下だが、2016年9月に野党第1党では30年ぶりに女性の代表となった蓮舫氏の場合、「師匠」と慕う野田佳彦氏を幹事長に抜擢した新執行部人事の段階で求心力に陰りが生じていた。野党転落時の首相だった野田氏に強いアレルギーを示す党内グループの相次ぐ離反を招いたためだ。

●何を旗印に闘うのか

 一橋大学の中北浩爾教授(政治学)は言う。

「新体制発足時に挙党態勢を構築できなかったことで遠心力が働いてしまったのです」

 7月2日投開票の東京都議選では、旧民主党として戦った4年前の15議席を大きく下回り5議席と惨敗。党内から上がった「二重国籍問題」を問う声は、遠心力がさらに強まっていることを内外に示した。その後、野田氏が幹事長辞任を表明。後任をなかなか決められず、辞任の引き金を引いた。

 遠心力を拡大させた要因は、ほかにもある。

 政策面で響いたのは、支持母体「連合」との「原発ゼロ」をめぐる交渉の不調だ。蓮舫氏は「2030年原発ゼロ」方針を目指して今年3月の党大会で表明しようとしたが、断念を余儀なくされた。党内部からは、

「何を旗印に闘っているのか、わからなくなっているのでは。このままだと、都議や国会議員も都民ファーストに流れ、党の液状化が始まってしまう」(都内の市議)

 という声も漏れた。

 民進党は政策と人事の両面を刷新し、遠心力を食い止められるのか。中北氏は懐疑的だ。

「民進党は過去の失敗に向き合い、政権交代の党として結束を図らなければなりません。内部を固めずに無党派の風を吹かせようとしたり、野党協力したりして党勢回復につなげようとしても、結局うまくいきません」
党に誇りや愛着がない

 政権奪取を控えた00年代後半の民主党は、地方組織を含む「連合」との関係強化を図る一方、社民や国民新党との連立成立に向けた政策調整を練った。だが今、民進党内には政権交代に向け地道にレールを敷こうとする機運も、政治の基本ともいえる「根回し」に長けた人材も見当たらない。

 後継選びは、前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官を軸に展開する見通しだ。

 前出の中北氏は言う。

「党内の陣容を踏まえれば、枝野氏らリベラル派が代表に就いて現実路線を取るほうがまとまりはいいかもしれません。新顔で斬新さをアピールするのではなく、政権を担った経験者が自由党の小沢一郎代表と手打ちするぐらいの意気込みで取り組まないと道は開けないでしょう」

 一方で、こんな声もある。

「大臣経験者は避けたほうがいい。顔だけは刷新しないと。小沢さんは泥船には乗らないですよ。小池百合子都知事に近づこうとしているように見えますけどね」(前出の市議)

 ブレーンとして民主党の政権交代を支えた法政大学の山口二郎教授はこう唱える。

「落ち目のときこそ自分たちが創った政党への誇りや愛着が必要なのに、民進党にはそれがない。自民党との一番の違いです。悪口を言い合うばかりでは有権者の信用や期待は得られない」

 野党協力も小沢氏や共産党といった「外側の人」のほうが熱心なのが実情だ。日本の政治を転換するビジョンを議論する方向に発展していない。山口氏はこう嘆き、言葉を続けた。

「民進党の存在意義を再確認することが次期代表選の課題になる」

(編集部・渡辺豪、山口亮子)

※AERA 2017年8月7日号