安倍晋三首相にとってもう一つ、頭痛の種になりそうな動きがあった。大阪地検特捜部は補助金の不正受給などで刑事告訴された森友学園の籠池泰典前理事長夫妻を7月31日、ついに逮捕したのだ。

 当初は、安倍政権に不都合な証言をし続ける籠池氏が「国策捜査」で逮捕され、発言を封じられるとの見方もあったこの問題。だがここにきて、政府側も特捜部のターゲットになり得る可能性も見えてきた。

 特捜部は28日までに、森友学園への国有地売却をめぐり財務省職員ら7人に対する弁護士らの背任容疑の告発なども受理。告発状には、「近畿財務局の職員らは森友側と安倍昭恵夫人の関係を認識した上で、森友側の利益のため、ごみ撤去費用を過大に積算した」などと指摘されているという。

 またNHKの報道によれば、籠池氏は国有地が約8億円値引きされて森友学園に売却された問題について、近畿財務局から「いくらなら払えるか」と事前に聞かれるなどの価格交渉があり、最終的には森友側の提示を下回る激安価格で売却。さらに財務局から国有地取引としては異例の「10年分割払い」を持ち掛けたとされる。

 特捜部は国有地を売却した経緯についても近畿財務局から事情聴取する予定だ。

 籠池氏から国有地取得などに関わる資料などを託されている著述家の菅野完氏がこう語る。

「最近は政権の顔色を見て動くようなイメージが当たり前になってしまっているが、特捜部は政・官の癒着や汚職に斬り込むのが役割。籠池氏が問われている補助金の詐取疑惑などは大阪府警がやるような話で、特捜案件ではない。近畿財務局や財務省を本気で捜査するとしたら近年では稀有な事態でしょうが、それが本来あるべき検察の姿。今は期待を込めて見ています」

 近畿財務局は「戦々恐々だ」と関係者が語る。

「森友疑惑は近畿財務局が出発点。役所というのは、本当はたいてい記録が残っている。役人の交渉は、一人が話し、もう一人がメモというのが定番でしょう。それがまったくないというのは、不自然で究極の"忖度"ですよね。今、思うと『昭恵夫人が視察にまで来ている』などと話題になったことがありました。そもそも、国有財産の担当者だけではあんなことはできず、本省が直接関与しないと無理。誰がみてもあり得ない条件を籠池氏に提示していますからね。森友側に事前に値段を聞くなんて信じられない」

 特捜部が本気で近畿財務局を追及したら、籠池氏から土地取得について相談されていた昭恵首相夫人も捜査の対象になりかねないのだ。八方塞がりの安倍政権の出口はあるのだろうか。(本誌・小泉耕平/今西憲之)

※週刊朝日  2017年8月11日号より加筆